交通違反は何が刑罰になるのか?交通反則金と罰金の違いは?青切符・赤切符は不起訴なのか?交通違反の手続を弁護士が詳説

●交通違反はどんなものが刑事事件になるか?

●交通反則金とは何か?

●交通違反の手続の流れは?

●交通違反は逮捕されるか?

●交通違反で不起訴になるためにはどうすればいいか?

といった悩みはありませんか?

このページでは,交通違反でお困りの方に向けて,交通違反に関する刑事処罰の内容や,交通違反の刑事手続への対応・弁護士依頼について解説します。

刑事事件になる主な交通違反

自動車運転時における交通違反のうち,刑事事件として処罰の対象となるものとしては,以下のケースが挙げられます。

①無免許運転

自動車を運転するための資格(免許)を持たない状態で,公道で運転した場合に成立します。
罰則は,「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。

また,無免許運転であることを知りながら同乗した場合,同乗者も刑事処罰の対象になります
この場合の罰則は,「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」とされています。
加えて,無免許運転であることを知りながら自動車を提供した場合も刑事処罰の対象となり,
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

無免許運転には,免許を取得したことのない場合のほか,免許の取消中,免許の停止中,免許の対象外の車両を運転した場合が含まれます。
なお,眼鏡の着用やAT限定など,運転条件に反した場合には,無免許運転でなく「免許条件違反」となります。

②酒気帯び運転

酒気帯び運転とは,呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上のアルコールを含有した状態で自動車を運転することを言います。
警察が取り締まりにおいて行う呼気検査は,この基準を満たしているかどうかを確認するために行われています。
酒気帯び運転の罰則は,「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。

なお,血液1ミリリットル中に0.3ミリグラム以上のアルコールを含んだ状態での運転行為も,同様に酒気帯び運転に該当します。

③酒酔い運転

酒酔い運転とは,アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態で運転をすることを言います。
酒気帯び運転よりも悪質な飲酒運転という位置づけですが,呼気や血液中のアルコール濃度は関係しません。
酒酔い運転の刑罰は,「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています。

酒気帯び運転に該当する場合の典型例としては,直進歩行できない,ろれつが回っていない,周囲の状況を認知できていない,などが挙げられます。
飲酒運転の取り締まりで警察官が運転者を歩行させるのは,この酒酔い運転に該当しないかを確認しているわけですね。

④スピード違反(一般道におけるもの)

スピード違反は,法定速度を超過した速度で走行する交通違反ですが,刑事罰の対象となる速度は一般道と高速道路で異なります。
一般道の場合,制限速度を時速30キロメートル以上超過した場合に,刑事事件として刑事罰の対象となります。
この場合の罰則は,「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

なお,時速30キロメートル未満の速度超過である場合,交通反則金の対象となるため,交通反則金を支払えば,刑事事件として刑事罰の対象になることはありません。

⑤スピード違反(高速道路におけるもの)

高速道路のスピード違反は,時速40キロメートル以上の速度超過がある場合に,刑事事件として刑事罰の対象となります。
時速40キロメートル未満であれば,交通反則金制度の対象となるため,反則金を支払うことで刑事事件にならず終了することが可能です。

刑事事件となる場合の罰則は,一般道と同じく「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

交通反則金とは

交通反則金は,「交通反則通告制度」に設けられた事件処理のための制度です。

交通反則通告制度は,軽微な交通違反を対象に,一定期間内に交通反則金を納めることを条件として,刑事事件の対象とすることなく手続を完了させることを認めています。
つまり,「交通反則金を支払えば刑罰を受けなくて済む」という温情的な措置と理解してよいでしょう。

交通違反は非常に件数が多く,全てを刑事手続の対象とすることが現実的でないことから,軽微な交通違反に限り交通反則金の支払だけで手続を終えることが認められています。

なお,警察が交通違反を確認した際,この交通反則金の納付を求めるために交付する書面が,「青切符」と呼ばれるものです。

交通違反に関する刑事手続の流れ

①赤切符が交付された場合

赤切符は,青切符と異なり,交通違反を刑事事件として処理する場合に交付される書面です。
正式名称は「交通切符告知票」といい,複写式になった5つの書面の1枚目が赤色であることから「赤切符」と呼ばれます。

刑事手続は,基本的に以下の流れで進行します。

警察の捜査

検察での捜査

起訴

刑事裁判

赤切符が交付された場合も刑事事件であるため,この刑事手続の流れに沿って進行しますが,赤切符が交付された事件ではその流れを1日のうちに処理するという特徴があります。
これを「三者即日処理」といい,警察,検察,裁判所の手続を一気に行った上で,略式裁判の対象とされ,罰金刑を受けるのが通常です。

赤切符の交付は,罰金刑を前提とした取り扱いなので,刑事事件の中でも比較的軽微な部類ということができます。

②通常の刑事手続の場合

赤切符が交付されず,通常の刑事手続の対象となる場合,その流れは他の犯罪類型と同様です。
具体的には,以下の流れで進行します。

警察の取調べ等

検察庁への送致

検察での取調べ等

検察官による起訴または不起訴

(起訴された場合)刑事裁判

赤切符が交付されないケースとしては,現行犯でなかった場合現行犯で取り締まられたが事件の程度が重大だった場合の2つが挙げられます。
後者の例としては,時速80キロメートル以上の速度超過があります。交通反則金の対象ではなく,かつ赤切符を交付できるほど軽微でもないため,赤切符を交付せず通常の刑事手続の対象とすることになりやすいです。

交通違反と逮捕

交通違反の事件は,事件類型として決して重大なものとは言い難いため,逮捕されないことも多く見られます。
心当たりのある場合は,事実を認め,真摯に協力する姿勢を示せば,逮捕されることは少ない傾向にあるでしょう。

しかし,以下のような場合には逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

①交通事故が伴っている場合

交通違反の結果交通事故が発生している場合,交通違反の程度も著しいことが多く,事件そのものも重大視されることが多いです。
そのため,事件の重大性を踏まえて逮捕に踏み切る場合が見られます。

②酩酊状態で会話にならない場合

飲酒運転のケースで,あまりの酩酊状態で会話にならない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいです。
捜査協力が得られるかどうか分からないことはもちろんですが,酩酊状態で運転する行為の違法性が重大であると判断され,逮捕につながることが多く見受けられます。

③出頭の求めに全く応じない場合

逮捕をしないのは,出頭を求めたときに出頭をしてくれることが大前提となります。
そのため,警察や検察が取調べなどのために出頭を求めても応じてくれないとなると,逮捕をする必要が生じます。
出頭の求めに応じないメリットは通常ないので,捜査機関から出頭を求められた際には可能な範囲で対応に努めるようにしましょう。

交通違反で不起訴を獲得するためには

①認め事件の場合

犯罪事実を争わない場合,起訴か不起訴かという点は情状面のみの問題となります。
つまり,検察官が大目に見る場合には不起訴となる可能性があり,大目に見てもらえないと起訴される,ということですね。

そして,検察官に大目に見てもらえるかどうかの判断材料としては,以下のような事情が考えられます。

反省状況
深い反省が認められているかどうかという点です。もっとも,反省していれば不起訴になるのではなく,反省が見られない場合は起訴に傾きやすい,との理解が適切でしょう。

再発防止
事件の原因を特定し,その原因が二度生じないような対策を取ることで,再発防止に努めている場合には,不起訴を検討する判断材料になり得ます。交通違反の場合,今後自動車を運転しない,というのが最も大きな再発防止策ですが,現実的に難しい場合には,原因を踏まえた具体的な再発防止策を検討することが望ましいでしょう。

贖罪の行動
罪を償うことを目的とした行動をしている場合には,それを踏まえて不起訴の検討がなされる場合もあります。
代表的なものとしては,贖罪寄附が挙げられます。罪を償う目的で金銭を寄付する行為です。
交通違反の場合,交通事故被害者の支援を行う基金などに寄付を行うことで,贖罪の気持ちを行動に表す動きが一例と考えられます。
なお,贖罪の行動は,それをしたことで劇的に結果が変わるという性質のものではなく,起訴不起訴の判断が微妙な場合に最後の一押しとなり得る,という位置づけと理解するべきでしょう。

②否認事件の場合

否認事件の場合,不起訴になるかどうかは,検察官が犯罪事実を立証できると判断するかどうかによって決まることになります。
検察官としては,起訴した場合に,裁判所に犯罪事実を認めてもらえなければ無罪となってしまうため,無罪の恐れがある場合には起訴できないと判断するのが一般的です。
そのため,検察官に対して犯罪事実が立証し得ないことを説得的に主張することが適切でしょう。

交通違反の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

交通違反の事件は,交通反則金制度や三者即日処理など,独自の手続もある点が他の事件類型にない特色です。そのため,交通違反の事件処理に精通していないと,正しい見通しを持って対処することは困難です。
交通違反でお困りの場合は,手続に精通した弁護士へのご相談・ご依頼をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。

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