●交通事故は民事事件なのか?刑事事件なのか?
●保険会社に任せれば刑罰を受けないのか?
●免許停止や取消になれば刑罰は受けなくていいのか?
●交通事故の加害者になったら逮捕されるのか?
●被害者側への対応はどうしたらいいか?
●検察から呼び出しを受けたらどうなるか?
●交通事故の刑事手続で弁護士は必要か?
といった悩みはありませんか?
このページでは,交通事故の加害者となった場合の対処でお困りの方に向けて,交通事故に関して生じる法律問題や,交通事故の刑罰を回避するための対応・弁護活動などについて解説します。
目次
交通事故によって生じる責任
自動車の運転によって他者との事故が発生し,被害者がケガをした場合には,加害者に複数の責任が発生し得ます。
通常,交通事故の加害者に生じる責任は,以下の3つです。
①刑事責任
交通事故(人身事故)は,「過失運転致傷」又は「過失運転致死」という犯罪に該当するのが通常です。
そのため,犯罪に対する処分を受ける責任,つまり刑事責任が発生し得ることになります。
刑事責任が生じる場合,刑罰という形で国から被疑者(加害者)に対して科せられます。
②民事上の責任
交通事故が発生すると,加害者から被害者に対して金銭賠償を支払う義務が発生します。
車両の修理費,入通院治療費,休業損害,慰謝料等が代表的です。
このような被害者と加害者との間の金銭面の問題を,一般に民事事件といい,民事事件における加害者の賠償責任が民事責任です。
③行政上の責任
交通事故加害者となる場合には,何らかの交通違反が伴っていることが通常です。
そのため,交通違反に対して自動車免許の違反点数が発生します。
自動車免許の違反点数に関する事件は行政事件に位置付けられますが,免許の違反点数は行政上の責任ということができます。
各責任の内容をまとめると,以下の通りです。
①刑事事件 | 国が加害者に対して刑罰を科す |
②民事事件 | 被害者が加害者に金銭賠償を請求する |
③行政事件 | 加害者の自動車免許に違反点数がつく |
交通事故加害者が負う各責任の関係
交通事故加害者には,刑事事件,民事事件,行政事件という3つの事件の責任が生じますが,この3つはそれぞれ独立した別個の責任です。
そのため,一つの責任が生じたから他の責任を免れることができる,という関係にはありません。
例えば,交通事故の民事責任については,自動車保険に加入している場合は保険会社が全て対応してくれることが一般的です。
窓口対応から金額計算,交渉,支払まで,全てを保険会社が行い,加害者自身はその通知を受けるのみ,という場合も決して珍しくはありません。
そうすると,民事事件に関する示談(解決)は保険会社が行ってくれることになりますが,保険会社が示談してくれたからといって刑事責任がなくなる,というものではないのです。
示談という言葉を聞くと,保険会社の行う示談で全てが解決されたかのように思ってしまいがちですが,保険会社が対応するのはあくまで民事事件(民事上の責任)についてのみです。
当事者間のお金の問題は解決してくれますが,国から科せられる刑罰に関する問題はノータッチのまま,ということになります。
刑事責任の軽減も図りたいという場合は,別途被害者からの宥恕(刑罰を望まないというお許し)を獲得する必要があるところ,宥恕を獲得するためには,直接被害者側と連絡を取り,宥恕をいただけるようお願い(交渉)するべきことになります。
交通事故と逮捕
交通事故が発生した場合,逮捕されるかどうかは個別の内容によって異なります。
裏を返せば,交通事故加害者であっても決して逮捕される可能性が高いわけではありません。
逮捕は,逃亡や証拠隠滅の可能性が高い場合に行われるものですが,交通事故そのものは,過失犯であって故意に引き起こした事件ではないため,交通事故加害者になったからといって直ちに逃亡や証拠隠滅の可能性が高いと判断されるわけではありません。
もっとも,逃亡や証拠隠滅の可能性が類型的に高いと思われる事情があれば,交通事故でも逮捕される可能性は高くなります。具体的には以下のようなケースが挙げられます。
①死亡事故の場合
死亡事故のように結果の大きい事故の場合,最終的な刑事処分も比例して大きくなることが見込まれます。
この点,見込まれる刑事処罰が重い事件の方が,逃亡や証拠隠滅の可能性が高いと判断される傾向にあります。逃亡は将来の処罰から逃れる目的で行われるため,見込まれる刑事処分が重ければ重いほど逃亡や証拠隠滅の動機が強くなるということですね。
そのため,交通事故の中でも特に結果の大きい死亡事故の場合,逃亡や証拠隠滅を防ぐために逮捕される可能性が高くなりやすいです。
②事故の原因に重大な違法行為がある場合
事故そのものよりも,その原因となった違法行為の方が重大であるために逮捕の可能性が高くなる場合もあります。
その代表例としては,飲酒運転が挙げられます。
酒気帯び運転又は酒酔い運転に該当する状態で交通事故が起きた場合,飲酒の事実の方が重大視されて逮捕につながる可能性が高くなります。
加えて,泥酔状態で交通事故が発生すると,運転者に事故当時の記憶がなく,事故状況の説明ができないために,捜査機関から見て犯罪事実を認めていないと評価されやすいことも大きな要因です。
飲酒の影響で覚えていない,という供述は,犯罪事実を認めていないとみなされやすく,「酩酊否認」とも言われるように否認と受け止められることが多いでしょう。
事件を否認するケースの方が,逃亡や証拠隠滅の恐れが大きく,逮捕に至りやすい傾向にあります。
③ひき逃げ事件の場合
自動車の運転中,交通事故で被害者が受傷した場合,自動車運転者には被害者を救護する義務が発生します。
そして,この救護義務を果たさずに事故現場から離れてしまうことを,俗に「ひき逃げ」といいます。
このひき逃げ(=救護義務違反)に該当する場合は,逮捕の可能性が高くなりやすいです。
その最大の理由は,まさに事故現場から逃亡してしまっている点にあります。
事故直後に逃亡しているという事実がある以上,逮捕をしなければまた逃亡してしまう可能性が高い,との評価につながりやすいわけですね。
もっとも,ひき逃げに該当し得る場合でも,運転者が事故の発生を認識していたか不明確な場合には,逮捕につながらない場合も考えられます。
典型例は,事故の規模が非常に小さく,運転者が事故に気付けなかった可能性のある場合です。
事故に気付けていなかったのであれば,救護義務違反にも該当せず,事故現場から逃亡したというわけでもないことから,逮捕の必要性には影響しないことになります。
交通事故における検察の呼び出し
刑事事件は,警察で捜査された後,検察庁に送致(送検)され,検察庁で起訴不起訴の判断がなされます。
そのため,警察に呼び出されて取り調べなどを受けた交通事故の事件は,その後に記録が検察庁へと送られ,検察庁で取り扱われることになります。
この際,検察庁からも呼び出され,検察庁での取り調べを受けることが一般的です。
検察庁からの呼び出しは,多くの場合書面で通知される方法でなされます。
送致を受けた担当検察官は,事件の記録を確認した後,被疑者から話を聞くために呼び出しを求める書面を発送します。
検察庁からの呼び出しは,一般的な手続として広く行われているものと理解するのが適切でしょう。
一方,検察庁からの呼び出しがなされない場合もありますが,呼び出しをしないのは,呼び出すことなく不起訴処分にできると判断された場合です。
起訴をする事件では,呼び出して供述調書を作成することが必要とされやすく,特に略式手続という方法で罰金にするためには,呼び出すことが必須です。
そのため,呼び出しをされないうちに起訴されるとは考え難く,呼び出されないことが不利益になると心配する必要はないでしょう。
ただし,呼び出されないまま不起訴処分となった場合,特に通知が届くことはないので,不起訴になったかどうかを把握するためには積極的に確認を取る必要があります。
交通事故で不起訴になる場合
交通事故では,事件の程度や規模が限定的であれば,不起訴処分となることも決して珍しくありません。
元々,故意に行われた犯罪(故意犯)に比べて過失で起きてしまった犯罪(過失犯)の方が責任は小さいと判断されるものであるため,類型的にも不起訴処分となる例が多い傾向にあるでしょう。
もっとも,過失が大きかったり,生じた被害の結果が大きかったりすれば,起訴を想定しなければならないケースも少なくはありません。
そのため,不起訴を獲得するためには,被害者の宥恕(許し)を得ることが非常に重要となるでしょう。
交通事故は被害者の存在する事件であるため,刑事処分には被害者の処罰感情(加害者の刑事処罰をもとめるかどうか)が直接影響しやすい傾向にあります。
被害者側への謝罪を尽くし,被害者から宥恕の意向を表明してもらうことができれば,不起訴処分となる可能性は非常に高くなるということができます。
刑事弁護を依頼するべき場合
交通事故の事件で弁護活動を依頼すべき場合としては,以下のようなケースが考えられます。
①逮捕を防ぎたい
交通事故は,事後に適切な対応を尽くせば,逮捕されずに手続が進むことも多い類型です。
弁護士からは,ケースに応じてどのような対応をするのが適切か,逮捕を防ぐために他に取れる手立ては何か,といった点をご案内の上,事件に応じた逮捕回避の方策を弁護活動に反映させることが可能です。
②謝罪や示談をしたい
交通事故では,加害者と被害者が直接の連絡を取れる場合が多いですが,当事者間で宥恕(許し)に関するお話合いをすることはあまり現実的ではありません。
弁護士に弁護活動を依頼した場合,弁護士が窓口になって謝罪の申し入れをしたり,弁護士から宥恕に関するご相談を行ったりすることで,被害者との示談を円滑に試みることが可能です。
③起訴を防ぎたい
交通事故の事件には,弁護活動次第で起訴にも不起訴にもなる,という場合が多数見られます。
他の事件類型の中には,起訴を避ける手段がほとんどないものもあるため,活動次第で不起訴になり得るというのは交通事故の大きな特徴といえます。
弁護士に依頼された場合,刑事処分の正確な見込みを踏まえて,起訴を防ぐための弁護活動についてご案内を申し上げることが可能です。
交通事故の刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
交通事故は故意のない過失犯であるため,事件そのものの責任は決して大きくないことも少なくありません。
しかし,事後の対応を誤ってしまう場合も多く,それが本来科せられる必要のない責任や負担につながりやすい分野でもあります。
適切な対応の検討は,交通事故の刑事弁護に精通した弁護士へのご相談が有益です。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
早期対応が重要となりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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