●実刑判決とは何か?
●懲役刑と実刑の違いは?
●執行猶予とは何か?
●どんな場合に実刑判決になるのか?
●実刑判決を防ぐためにはどうすればよいか?
●実刑判決を回避するための弁護士選びが知りたい
といった悩みはありませんか?
このページでは,実刑判決について知りたい,実刑判決を回避するためにはどうすべきか知りたい,という方向けに,実刑判決の意味や,実刑判決を防ぐための弁護活動について解説します。
目次
実刑判決とは
実刑判決は,実際に刑務所へ入ることを命じる判決をいいます。
言い渡された刑が実行されることを指して,実刑と言うのが一般的です。
実刑判決が言い渡された場合,実刑の期間中は自宅等で社会生活を継続することは許されず,定められた期間刑務所で過ごさなければなりません。
実刑判決は,刑事事件について検察官から起訴(公判請求)され,公開の裁判(公判)をされた上で,裁判所から言い渡されるものです。
なお,懲役刑と実刑判決は混同されがちですが,懲役刑は刑罰の一種であるのに対し,実刑判決はその刑罰を実行するという内容の判決をいうので、両者は比較したりどちらかを選択したりする関係にはありません。懲役刑は実刑判決で言い渡される場合もそうでない場合もありますが,懲役刑が実刑判決で言い渡された場合には,実際に刑務所に入って懲役刑を受けてください,という意味になるわけですね。
実刑判決までの流れ(身柄事件の場合を例に)
①警察での捜査 | 逮捕後48時間以内 |
②検察庁での勾留請求 | 逮捕後72時間以内 |
③勾留 | 最大20日間 |
④検察による起訴 | 勾留の終了時 |
⑤第一回公判期日 | 起訴の概ね1~2か月後 |
⑥第二回以降の公判期日 | 概ね1か月程度の間隔 |
⑦結審 | 検察官弁護人双方の主張が出揃う |
⑧裁判所による判決 | 結審の概ね1~2か月後 |
逮捕及び勾留の上で捜査がなされた後,検察官が起訴することで裁判所での公判に移行します。
公判期日が何回になるかは個別の事件によりますが,公判期日で検察官弁護人の主張が出揃うと結審し,その後,裁判所が判決を言い渡します。
実刑と執行猶予
実刑と対になるものが執行猶予です。
文字通り,刑の執行に猶予期間を与えるもので,猶予期間中に別途刑罰を受けることがなければ,刑は執行されず消滅します。
つまり,「今回は刑務所に入れないけど,次は刑務所ですよ」という裁判所からのメッセージが執行猶予付き判決です。
例えば,「懲役1年,執行猶予3年」という場合,1年の懲役刑が言い渡されるものの,3年間執行が猶予されます(=実刑にはなりません)。
そして,執行猶予の3年間を無事に過ごすことができれば,1年の懲役刑は執行されないまま消えます。
執行猶予期間中は,それまでと同様の生活を変わらず送ることが可能です。特に生活の制限は生じません。
ただし,保護観察付の執行猶予の場合には,定期的に保護観察所の指導監督を受ける必要があります。
実刑と求刑
求刑とは,検察官が裁判所に対して求める刑の内容をいいます。
通常,公判の最終段階,結審の際に,検察官からの意見として求刑がなされます。
この求刑を受けて,裁判所が判決の内容を検討します。
求刑が実刑を求めるものであっても,裁判所が実刑判決をするとは限りません。
どんな場合に実刑判決されるか
公判の上で裁判所が判決を言い渡すとしても,全てが実刑判決になるわけではなく,むしろ執行猶予付きの判決の方が若干多い傾向にあります。
執行猶予がつかず実刑判決となるケースには,以下のような場合が挙げられます。
①重大犯罪
執行猶予は,3年以下の懲役や禁錮の場合にしかつけることができないため,3年以下の懲役や禁錮にならない場合には,執行猶予を付けることができません。
例えば,殺人罪や現住建造物等放火罪は,法定刑の下限が懲役5年のため,基本的に執行猶予を付けることができず,実刑判決になります。
なお,これらの場合でも特に情状酌量された場合には,例外的に3年以下の懲役になることもありますが,だからといって直ちに実刑判決が回避できるわけではありません。
そもそも,重大犯罪の場合には実刑判決とする必要が高く,執行猶予になりづらいことが多いと思われます。弁護士と相談の上,刑期の短縮(減刑)を目指すべき場合もあり得ます。
②過去に実刑判決を受けている
過去に実刑判決を受け,その刑の執行が終わってから5年以内の場合,執行猶予を付けることができません。
例えば,3年前に懲役1年の実刑判決を受け,刑務所で服役して2年前に懲役が終了した,という場合はこれに当てはまります。
この場合も,基本的に実刑判決となることが見込まれます。
また,刑の執行が終わってから5年が経過したとしても,直ちに無関係となるわけではありません。以前に実刑判決を受けていることは,再度実刑判決を受ける可能性を大きく高める事情となります。
一般的に,前回の実刑判決からの期間が短いほど実刑判決につながりやすく,期間が長いほど実刑判決につながりにくい傾向があります。
③執行猶予中の再犯
執行猶予期間中に再度犯罪があった場合,基本的に実刑判決の対象となります。
法律には「再度の執行猶予」というものがあり,執行猶予期間中の再犯でも再び執行猶予になる場合があることは間違いありませんが,極めて例外的と理解するのが適切です。
執行猶予について,「今回は刑務所に入れないけど,次は刑務所ですよ」という意味であることを紹介しましたが,まさに「次は刑務所です」ということですね。
④反省が見られない
実刑判決の目的には,被告人に犯罪と刑罰の重みを分からせて再犯を防ぐ,という面があります。
そのため,被告人が開き直っていたり,人のせいにしていたり,不合理な内容の否認に終始していたりと,反省が見られない場合には,被告人に事態の重みを分からせる必要が高いと判断され,実刑判決の可能性が高くなります。
⑤再犯可能性が高い
反省が見られないという場合以外にも,私生活を監督できる人がいない,犯行の動機が短絡的で自己中心的であるなど,再犯の可能性が高いと思われる事情がある場合には,実刑判決の可能性が高くなります。
実刑判決を防ぐ方法(認め事件)
否認事件の場合を除き,実刑判決を防いで執行猶予を獲得するには,いわゆる情状酌量の対象となることが非常に重要です。情状酌量の上で実刑判決を防ぐ具体的な方法には,以下のようなものがあります。
①被害者との示談
被害者のいる事件では,被害者と示談ができているかどうかが極めて大きな事情となります。
被害者との間で示談が成立し,被害者が許している(宥恕している)場合には,実刑判決を防ぐことのできる可能性が大きく高まります
被害者との示談を目指す場合には,弁護士に依頼し,弁護士を間に挟む形で被害者への連絡を試みることが重要です。
②本人による反省,再発防止の決意
反省が見られない場合には実刑判決の可能性が高くなることをご紹介しましたが,逆に反省が顕著な場合は,情状酌量の上で実刑判決を防ぐことのできる場合があります。
もっとも,反省というのは自分の内面でのことであり,言葉のみで第三者である裁判官に理解してもらうのは容易ではありません。そのため,反省は具体的な行動にすること,再発防止策とあわせて行動に移すことが有力です。
例えば,窃盗癖や薬物依存など,何らかの病的な要因が影響している可能性がある事件であれば,自発的に入通院やカウンセリングを実施し,事件を起こした原因を根本的に取り除く,といったことが挙げられます。
また,重大な交通違反を起こした場合には,免許の返納や自家用車の処分,それが難しい場合には,自家用車を家族が管理する,交通遺児のための寄附を行う,といった行動が考えられます。
③再発防止に向けた周囲の協力・監督
再犯の可能性がどの程度あるか,という点は実刑判決となるかどうかの重要な判断基準になります。そのため,再発防止は欠かせませんが,中でも周囲の協力や監督が得られるのであれば,実刑判決を防げる可能性は高くなります。
協力者の代表例は,同居家族,親族,職場の上司等の管理監督者が挙げられます。できるだけ,本人と長時間同じ場所で過ごす立場の人が望ましいでしょう。
また,周囲の監督に関しては,その具体的な方法を明確にすることが大切です。実際の監督方法,内容は,個別事件の内容や起きてしまった原因により様々ですが,今回の事件の原因を防ぐことができるような監督方法,内容を検討することが肝要です。
拘禁刑について
実刑判決がなされる場合の刑罰の内容として,拘禁刑というものが創設されることになりました。
拘禁刑が導入された後は,懲役刑と禁錮刑は廃止され,拘禁刑に統一されます。
懲役刑,禁錮刑と拘禁刑の違いは,刑務作業をする義務の有無が主です。
①懲役刑:刑務作業が義務付けられている
②禁錮刑:刑務作業の義務がない(志願して行うことは可能)
③拘禁刑:刑務作業を行わせることができる
拘禁刑を導入する改正刑法は,2022(令和4)年6月13日成立,6月17日公布されており,3年後の2025(令和7)年6月16日までに施行されることが決まっています。
刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ
刑事事件で起訴された場合,実刑判決となれば刑務所に入らされ,実刑判決が回避できれば社会生活への復帰ができます。
判決後の生活は,実刑判決となるかどうかによって極めて大きく変わることになり,人生で最大の分岐点ともなりますので,適切な裁判対応は自身の人生を救うと言っても過言ではありません。
しかし一方で,裁判対応を誤り,避けられたはずの実刑判決を避けられなかった場合,その損害は計り知れず,取り返しがつきません。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
刑事事件は少しでも早い対応が大事になりますので,お困りごとがある方はお早めにお問い合わせください。
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