
このページでは,児童ポルノ事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

目次
児童ポルノ事件で不起訴を目指す方法
①特定の相手がいる事件
SNSなどで知り合った児童に児童ポルノ画像・映像を撮影してもらったなど,事件の相手方が特定できている場合には,その相手との間で解決を目指すことが不起訴処分のために最も有力です。具体的には,児童側との示談が目標になるでしょう。
児童ポルノの事件は,その被写体となった児童を被害者とする側面があるため,児童との示談によって被害の埋め合わせができれば,不起訴処分を促す非常に重要な判断材料となります。違法性の程度が著しいケースでなければ,示談ができるかどうかによって起訴不起訴が分かれることも珍しくありません。
また,児童ポルノに関する事件は,起訴した場合に児童のプライバシー情報が一部公開されてしまう可能性があることから,児童側のプライバシーに配慮した刑事処分が求められる場合もあり得ます。そのため,示談の結果,児童側がプライバシー保護の観点から起訴を希望しない,という意向に至れば,より有益な効果が見込まれます。
ポイント
児童との示談によって起訴不起訴が分かれる場合も珍しくない
②特定の相手がいない事件
児童ポルノに関する事件では,被写体となった児童が特定できない場合も少なくありません。具体的には以下のようなケースが挙げられます。
児童の特定ができない児童ポルノ事件
1.撮影に関与していない児童ポルノの所持
2.不特定多数者を盗撮する方法での児童ポルノ製造
3.営利目的で多数の児童ポルノを入手・譲渡していた場合
このようなケースでは,被写体となった児童との間で示談を目指すことが現実的に困難です。そのため,示談以外の方法で不起訴を目指すことが必要になります。
この点,認め事件であれば,何より反省していることやその内容を粘り強く示し続けることが適切でしょう。犯罪事実に争いのない場合,処分の重みは「情状」を基準に判断せざるを得ませんが,情状に関する代表的な判断材料が反省状況です。反省を深めていれば,軽微な処分が適切な情状と言えますし,逆に十分な反省が見られない被疑者には,情状面を理由に相応の重大な処分が必要と評価される傾向にあります。
ポイント
被写体が特定できない事件では,反省内容を粘り強く表明し続けるべき
③否認事件
否認事件の場合は,まず犯罪の成否を左右する争点は何か,という点を正しく把握することが肝要です。争点を踏まえず否認するのでは,自分が何を主張しているか分かっていないと言わざるを得ず,不起訴処分は遠のくばかりでしょう。
犯罪の成否を左右する争点として,児童ポルノ事件で最も特徴的なものが「年齢の認識」です。
刑事事件で犯罪が成立するには,犯罪の「故意」が必要です。この点,児童ポルノの被写体は児童(=18歳未満の男女)であることが必要であるため,犯罪の故意が認められるためには,被写体の年齢に関しても故意がなければなりません。
児童が年齢を偽っていたなど,18歳以上の年齢と誤信していた場合には,犯罪の故意がないとの主張が有力になってきます。もっとも,明らかに若年者であるのに年齢確認を怠ったなど,年齢を信頼したことに合理的な理由がないケースでは,故意ありと判断されやすいため注意が必要です。
ポイント
犯罪の成否を左右する争点を把握する
児童ポルノの事件では,年齢に関する故意が争点となりやすい
児童ポルノ事件で不起訴になる可能性
児童ポルノ事件は,犯罪事実が間違いなく存在しており,被疑者が漫然と対応していれば,基本的に起訴されると考えるのが適切です。事件類型や刑事責任の重さを踏まえると,初犯だから不起訴,という軽微な取り扱いは期待しづらいところです。
もっとも,適切な対応を尽くし,対応の結果が伴えば,不起訴になる可能性は十分考えられます。特に,組織性や営利目的のない,個人の私的利用目的での事件であれば,刑事責任の重さ自体も限定的であることが多く,不起訴処分が目指しやすいケースも増えるでしょう。
不起訴の意味・種類
不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。
不起訴処分には,以下のような類型があります。
不起訴処分の類型
1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。
2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。
3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。
4.その他の類型
・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など
・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など
なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。
ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある
逮捕と不起訴の関係
逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。
これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。
ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も
不起訴になった場合の効果
不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。
①前科がつかない
前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。
そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。
前科がつかないことのメリット
1.資格に対する影響を避けられる
国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません。
2.就職・転職への影響を避けられる
前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます。
3.海外渡航の制限を避けられる
前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。
②釈放される
不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。
③逮捕されない
不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。
④取り調べを受けない
不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。
児童ポルノ事件で不起訴を目指す場合の注意点
①示談が成立しても不起訴とは限らない
児童ポルノ事件の場合,示談が成立したから不起訴になる,という単純な関係にはないことに注意が必要です。これは,児童ポルノ事件の法的な性質が特徴的であるために生じる注意点です。
児童ポルノ事件は,判断能力の未熟な児童を事件に引き込んだ,という面があるため,児童を被害者とする事件と理解されています。この点は,窃盗罪や傷害罪などと同じく,「被害者の損害を与えたことが刑事責任の根拠である」という考え方です。
他方,児童ポルノ事件には,「社会の性的な秩序を乱したことが刑事責任の根拠である」という面もあると理解されています。児童ポルノ事件が横行すると,児童の性風俗が乱れてしまい,健全な成長が阻害される社会になってしまうため,そのような社会の利益を害したことに対して刑罰を科す,というものです。
この点,児童との示談は,児童という被害者への損害を補填する意味は持ちますが,社会の秩序を乱したことへの補填にはなりません。そのため,児童ポルノ事件の刑事責任全てを示談でカバーすることはできず,示談しても不起訴にならない場合が生じ得るのです。
ポイント
児童ポルノ事件は示談=不起訴ではない
②示談を試みる場合の相手
児童ポルノ事件の示談は,形式的には相手の児童本人が当事者です。もっとも,未成年である以上,自分で示談という契約をすることが困難であるため,一般的には親権者が児童の代理をすることになりやすいでしょう。
児童ポルノ事件で,示談による不起訴処分を目指す場合には,その相手が児童の親権者となることを想定しておくのが適切です。
この示談相手の問題は,事件内容に関するこちらと相手の理解が異なり得る,という意味で重要な問題となります。児童の親権者は,基本的に児童から聞いた内容のみを踏まえて示談交渉に臨むため,児童に不利益な事情は何も知らないケースは少なくありません。親権者の認識を修正することを目指すのか,認識にズレがあることを前提に示談を目指すのかは個別の判断によりますが,少なくとも理解している事件の内容にズレのある可能性はあらかじめ想定しておくことをお勧めします。
ポイント
親権者との間で,事件内容の理解にズレがあり得る
③対象児童が不明の場合
児童ポルノ事件では,児童側に捜査開始のきっかけがあった場合には児童の特定が容易ですが,捜査が始まった経緯によっては,児童が誰か特定できないというケースもあり得るところです。
このとき,特徴的な留意点としては以下の点が挙げられます。
対象児童が特定できない場合の留意点
1.示談による解決が困難
→相手が分からないため示談が現実的に不可能
2.相手の年齢が争点になり得る
→相手が18歳未満であるかどうかを争う場合の根拠の一つになり得る
個別の事件で対象児童が特定できない場合,この点をどのように対応方針に反映していくかは,弁護士に依頼の上で専門的な判断を仰ぐことをお勧めします。
④余罪の影響
児童ポルノ事件は,類型的に余罪のあることが多くなりやすいものです。そして,余罪がある場合には,余罪も含めて不起訴処分にならないと不起訴の目標が実現できない,という点に注意が必要です。
余罪については,具体的に捜査・処分の対象とする場合,しない場合いずれもあり得るところですが,児童ポルノ事件では児童の特定ができたものに関しては具体的な捜査を行う,という判断をされやすい傾向にあります。児童が別件で補導されていた,児童とのやり取りの中に人定に必要な情報があった,といった場合には,余罪の捜査が懸念されやすいと言えるでしょう。
ポイント
児童が特定された余罪も,不起訴を目指す必要が生じやすい
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。