
このページでは,不同意性交等罪の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

目次
不同意性交等罪で逮捕される可能性
不同意性交等罪の事件は,捜査に際して逮捕される可能性が非常に高いでしょう。警察などが捜査を行い,被疑者を特定した場合,特段の事情がない限りは逮捕すると考えても差し支えないでしょう。
不同意性交等罪の場合に逮捕される可能性が高い理由としては,以下のような点が挙げられます。
逮捕の可能性が高い理由
1.事件が非常に重大である
2.被害者の心理的負担への配慮を要する
【1.事件が非常に重大である】
刑事事件における逮捕は,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止する目的で行われる手続です。そのため,被疑者が逃亡する可能性や被疑者による証拠隠滅の可能性が高いと思われるケースでは,逮捕する必要が特に大きいということになります。
この点,事件の重大性が際立っており,刑罰が科される場合には重い処分になると見込まれる場合,逃亡や証拠隠滅の危険性が高くなるとの理解が一般的です。事件の内容や見込まれる処分が重ければ重いほど,逃亡や証拠隠滅によって刑事処分を防ぐ利益が大きくなるためです。
不同意性交等罪は,被害者の性的自由を極めて強く侵害する犯罪であり,非常に重大な事件類型です。その刑罰も,実刑判決を念頭に置くほど重いものになることが見込まれます。
そのため,不同意性交等罪の事件では逃亡や証拠隠滅が懸念されやすく,逮捕の可能性が高くなるのです。
【2.被害者の心理的負担への配慮を要する】
不同意性交等罪の事件を取り扱う捜査機関は,深刻なダメージを受けた被害者側の心理的負担に配慮することが必要となります。被疑者が特定されたにもかかわらず,逮捕もなく放置されているとなれば,被害者にとっては強い恐怖や精神的苦痛の原因となることが避けられません。
そのため,不同意性交等罪の事件では,被疑者が特定できた段階で逮捕し,被疑者が認めているなどの情報を被害者に伝えることで,被害者側の心理的負担を和らげる手法が広く取られています。このように,被害者保護の一環として,逮捕を伴う捜査方法が選択されやすいという傾向が見られるところです。
不同意性交等罪の場合,特に逮捕が不要・不適切であるという事情がなければ,逮捕されるのが通常であるとの理解が適切でしょう。
ポイント
不同意性交等罪は逮捕の可能性が非常に高い
事件の重大性や被害者保護が大きな理由
逮捕の種類・方法
法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。
①現行犯逮捕
現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。
典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。
ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所のそれぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。
なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。
準現行犯逮捕が可能な場合
1.犯人として追いかけられている
2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている
3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある
4.身元を確認されて逃走しようとした
ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能
②通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。
裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。
通常逮捕の要件
1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。
2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。
通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。
ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要
③緊急逮捕
緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。
緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。
緊急逮捕の要件
1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う
緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。
緊急逮捕と現行犯逮捕の違い
現行犯逮捕 | 緊急逮捕 | |
逮捕状 | 不要 | 逮捕後に請求が必要 |
一般人の逮捕 | 可能 | 不可能 |
逮捕後の流れ
逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。
逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。
ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される
逮捕による不利益
逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。
①社会生活を継続できない
逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります。
また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。
②仕事への影響
逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。
また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。
③家族への影響
逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。
このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。
④報道の恐れ
刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。
万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。
⑤前科が付く可能性
逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。
不同意性交等罪で逮捕を避ける方法
①自ら警察に出頭する
逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐための捜査手続であるため,逮捕を防ぐ試みとしては,積極的な行動によって逃亡や証拠隠滅の可能性がないと理解してもらう方針が有力です。具体的には,自ら警察に出頭し,自分から捜査協力を申し出ることが一案でしょう。
自分から事件の情報を可能な限り提供し,想定される証拠物を提出するなどすれば,そのような行動を取る人物が逃亡や証拠隠滅をする可能性があるか,という点には大きな疑問が残ることになります。自ら出頭する行為は,自分から捜査を受けに行くという負担を受け入れる代わりに,逃亡や証拠隠滅が見込まれないから逮捕は不要である,との判断を期待できる試みと言えるでしょう。
なお,犯罪事実や犯人が発覚していない段階で自ら警察に出頭した場合,法律上「自首」が成立する可能性もあります。自首が成立する場合には,その後の取り扱いや最終的な刑事処分はより軽くなる可能性が上がるでしょう。
②被害者との示談を試みる
被害者との示談が成立し,被害者との間で事件が解決している場合,その後に警察の捜査が行われる可能性は現実的になくなります。捜査が行われなければ,捜査の手段である逮捕も行われないため,逮捕を確実に防ぐことが可能です。
もっとも,捜査前や逮捕前に被害者との示談を試みることができるのは,かなり限定的なケースに限られるでしょう。被害者と面識があり,被害者との間に交友関係があるような間柄でないと,示談を試みる手段はありませんし,連絡手段があったとしても,被害者が示談交渉に応じる意向でなければ示談は進まないためです。
逆に,警察などの捜査前に示談を試みることのできる状況であれば,可能な限り示談交渉を尽くし,当事者間での解決を目指すことが賢明です。
③取り調べへの適切な対応に努める
逮捕されていない状態で取調べを受けることになった場合,取調べに対して適切な対応を尽くすことで,逮捕を防ぐ効果が期待できる可能性もあります。具体的には,以下のような対応が有効でしょう。
取り調べへの適切な対応
1.出頭を拒まない,すっぽかさない
2.問いには可能な限りの回答をする
3.提出を求められた証拠はできる限り提出する
このように,円滑な捜査への協力姿勢を示すことが,逮捕回避の可能性を高める取調べ対応と言えます。
不同意性交等罪の逮捕は弁護士に依頼すべきか
不同意性交等罪の逮捕に関する対応は,弁護士への依頼が有力な手段です。
まず,逮捕回避の重要な手段としては被害者との示談が挙げられますが,具体的な示談交渉は,弁護士を窓口に行うことが望ましいでしょう。現実的には,当事者が直接交渉するべきでないことがほとんどであり,弁護士を通じて行うことが必須と言っても差し支えないところです。
特に,直接の連絡手段がない場合には,弁護士から捜査機関に連絡を取ってもらい,弁護士限りで被害者との連絡を試みる必要があります。この場合には,弁護士がいなければ示談希望の意思を伝えることもできない,ということになるでしょう。
また,逮捕をすべきかという点について,弁護士を通じて捜査機関と協議をしてもらう手段も有力です。弁護士が法律のルールを踏まえた主張をし,捜査機関に逮捕が適切でないと判断してもらうことができれば,逮捕の回避につながる可能性も考えられます。
加えて,取調べなどで自分が捜査機関と直接やり取りする必要が生じる際,どのように対応すべきか,という点について弁護士から案内を受けることも可能です。適切な取り調べ対応によって,逮捕の可能性が低下することも大いに考えられます。
以上のように,不同意性交等罪の逮捕に関しては,弁護士への依頼によってより有効な対応がしやすくなるため,弁護士への依頼を積極的に検討するのが適切でしょう。
ポイント
示談交渉には弁護士が不可欠
弁護士と捜査機関の間で,逮捕すべきかを協議してもらうことも
自分が捜査機関とやり取りするときの対応方法を案内してもらえる
不同意性交等罪の逮捕に関する注意点
①逮捕前の示談が困難な場合
逮捕前に示談ができれば,その後の逮捕の可能性が非常に低くなることは間違いありません。ただ,実際に逮捕前の示談が可能なケースは多くないため,逮捕前に示談をするチャンスが存在しない場合には注意が必要です。
不同意性交等罪の事件では,自分に対して捜査が行われていることを,自分への逮捕によって知る,という場合が珍しくありません。捜査機関としては,被疑者に予告せず突然逮捕することによって,被疑者の妨害を防ぎながら捜査を進める手段を取ることの多い事件類型でもあります。
逮捕によって初めて事態を把握した場合には,逮捕前の示談で事件を解決する余地がないため,逮捕後できるだけ速やかに示談などの対応に着手する必要があります。
②逮捕後の身柄拘束期間
不同意性交等罪の事件では,逮捕の後速やかに釈放されるというケースはあまりなく,一定期間の身柄拘束を強いられることが想定されます。
逮捕されると,最長72時間以内に「勾留」されるかどうかが判断され,勾留が決定すると10日間,さらに「勾留延長」という手続で延長されると最長10日間の勾留が追加されることになります。

この点,不同意性交等罪の場合,勾留や勾留延長をしない,という判断を期待することは難しく,基本的には勾留延長まで行われることを十分に想定する必要があるでしょう。なお,示談が成立したなど,不起訴処分を見込む状況となった場合には,例外的にその時点での釈放も考えられるところです。
③逮捕後の報道の可能性
刑事事件の報道は,逮捕された事件の一部を対象に行われることが一般的です。著名人などの例外的な場合を除き,逮捕当日又は翌日に,逮捕された事実とその事件の内容が報道される,というケースがほとんどです。
この点,不同意性交等罪の事件は,重大犯罪との理解をされやすいため,逮捕された場合に報道される可能性が比較的高い類型と言えます。重大な事件であるほど,社会的関心が高く,国民に広く周知させるために報道されやすいのです。
確実に報道される,という性質のものではありませんが,報道の対象となる可能性は踏まえておくことが適切でしょう。
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藤垣法律事務所代表弁護士。岐阜県高山市出身。東京大学卒業,東京大学法科大学院修了。2014年12月弁護士登録(67期)。全国展開する弁護士法人の支部長として刑事事件と交通事故分野を中心に多数の事件を取り扱った後,2024年7月に藤垣法律事務所を開業。弁護活動のスピードをこだわり多様なリーガルサービスを提供。