【男女トラブルの逮捕】逮捕の種類や可能性,逮捕後の釈放を勝ち取る方法などを徹底解説

このページでは,男女トラブルの逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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男女トラブルで逮捕される可能性

男女トラブルは,決して類型的に逮捕の可能性が高いわけではありませんが,ケースによっては逮捕が懸念されることもあります。そのため,男女トラブルにおける逮捕の可能性を把握するためには,その区別の基準を踏まえておくことが適切でしょう。

逮捕の可能性を左右する基準

1.性的行為に合意がある可能性の有無

2.当事者間の言い分の相違

3.客観的証拠の有無

4.行為の態様・程度

【1.性的行為に合意がある可能性の有無】

男女トラブルで逮捕の可能性が低いケースの代表例は,男女間に性的行為の合意がなされていた可能性がある,という場合です。
男女トラブルが犯罪に該当し得るためには,さらには逮捕され得るためには,少なくともその男女間の性的行為が一方の合意なく行われていなければなりません。そのため,一方は合意がなかったと主張しているものの,客観的な状況を見れば合意があった可能性がある,という場合,逮捕の判断は慎重にならざるを得ません。

性的行為の合意があった可能性がうかがわれる事情としては,以下のような点が挙げられます。

性的行為の合意をうかがわせる事情

1.自分の意思でホテル内や自宅内に入っている
2.行為の直前直後における関係が良好である
3.行為後にも友人関係が継続している
4.性的行為を複数回に渡って繰り返している

逮捕は,人の身体の自由を全面的に奪う意味で,非常に強力な手続です。その一方,逮捕された人の不利益も非常に大きくなることから,合意をうかがわせる事情があるケースでの逮捕は,非常に慎重な判断が求められる傾向にあります。

【2.当事者間の言い分の相違】

当事者間の言い分が概ね合致している場合,一方を逮捕してまで捜査する必要はあまり大きくないと考えられます。男女トラブルで逮捕をする最大の目的は,加害者が被害者へ圧力を加える行為を防ぐ点にあるためです。

当事者間の言い分が大きく食い違い,被害者が加害者にとって不利益な話をしている場合,加害者が被害者に圧力を加え,その供述を捻じ曲げようとする恐れがあると考えられます。このような証拠隠滅が起きてしまうと,捜査の妨げになるのみでなく,被害者への二次的被害にもつながりかねないため,逮捕を行うことで防ぐ,というのが刑事手続の運用です。

そのため,男女トラブルで逮捕の可能性が高いケースは,加害者が被害者に圧力を加えるなど,何らかの働きかけをする可能性が高い場合と言えます。逆に,言い分に食い違いがないなど,働きかけの可能性がない場合には,逮捕の可能性が低下しやすいでしょう。

【3.客観的証拠の有無】

男女トラブルは,被害者と主張する側の供述を裏付ける客観的証拠に乏しいことも少なくありません。そのため,第三者である捜査機関の目線からは,被害者と主張する人物の供述が真実であるかどうか,はっきりしないという場合が多くなりやすいものです。

この点,客観的証拠に乏しく被害者とされる人物の言い分が客観的に正しいか分からない段階で,その相手方を一方的に逮捕するというのは,誤認逮捕などの危険が高く,行われづらい傾向にあります。このような場合には,いきなり逮捕に踏み切るのではなく,相手方から任意で話を聞くことを目指すのが一般的でしょう。

【4.性的行為を複数回に渡って繰り返している】

トラブルとされる出来事が起きた日以外にも,その前後に当事者間で性的行為があった場合,男女トラブルで一方を逮捕する可能性は非常に低くなります。その具体的な理由としては,以下のような点が挙げられます。

逮捕の可能性が低下する理由

・性的行為を合意していた可能性が高い
・逮捕してまで被害者を保護する必要に乏しい
・男女関係のもつれ(民事事件)でしかない可能性が高い

男女間のトラブルで逮捕を決断するには,被害者側の言い分を信用できることが不可欠です。性的行為が複数回繰り返されている場合,被害者側の言い分を信用しきることは難しく,逮捕の可能性は低くなりやすいでしょう。

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

男女トラブルで逮捕を避ける方法

①示談による当事者間の解決

男女トラブルは,警察が関与する前に当事者間で解決ができれば,警察の捜査が行われることはなく,捜査の手段である逮捕が行われる可能性もなくなります。捜査が行われる前に当事者間で解決する余地がある,というのは,男女トラブルの大きな特徴の一つです。

そのため,男女トラブルが発生し,自分が加害者であるとの認識がある場合は,できるだけ速やかに当事者間での解決を目指すのが有力です。具体的には,被害者との間で示談を行い,被害者から「被害届を出さない」といった約束をしてもらうことができれば,逮捕はほぼ確実に防ぐことができるでしょう。

なお,実際に示談を試みる場合,当事者が直接やり取りすることは不適切になりやすいため,弁護士に依頼し,弁護士を通じて示談交渉を試みることをお勧めします。

②自ら警察に出頭すること

逮捕は,逃亡や証拠隠滅を防ぐための手続です。そのため,自分から警察に出頭し,捜査を求める動きをする人に対しては,逮捕の必要性が低いと考えることが通常です。
そこで,逮捕を避ける方法としては,自ら警察に出頭する手段も有力と言えます。

1.認め事件の出頭

認め事件で自分から出頭する場合は,自分の行ってしまった犯罪事実を捜査機関へ積極的に告げることになります。捜査機関にまだ発覚していない場合であれば,法律上「自首」に該当し,より処分が軽減する可能性も高くなるでしょう。

2.否認事件の出頭

否認事件で出頭を試みる場合は,その方法を工夫する必要があります。なぜなら,「相手との間で男女トラブルになって困っている」と出頭しても,犯罪の問題でなく当事者間のトラブルに過ぎない限りは,警察が介入することがないためです。これは民事不介入とも言われます。

そこで,相手から示談金を支払えと恐喝されている,謝罪を強要されている,事実でないことをSNSで拡散されて名誉を害されているなど,犯罪被害について相談を行う形を取るのは一案です。自分の犯罪被害について捜査を求めつつ,自分は捜査機関に自ら出頭した,という動きが可能になり,逮捕回避につながりやすくなるでしょう。

③呼び出しを受けた場合

男女トラブルで警察などの呼び出しを受けた場合は,可能な限り呼び出しに応じて出頭することが,逮捕回避のためにも適切な対応となるでしょう。

捜査機関が呼び出しを行う前提には,「逮捕しなくても呼び出しをすれば出頭してくれるであろう」という判断があります。呼び出しに応じて出頭してくれる限りは,逮捕しなくていいと考えているわけです。
ところが,呼び出しに応じて出頭してくれないとなれば話は大きく変わります。呼び出しても出頭してくれない以上,逮捕をして強制的に来てもらうほかない,との判断が生じ得る恐れも否定できません。

呼出を受けたケースでは,拒否せず応じる態度であることを示し,逮捕のリスクを下げるのが賢明でしょう。

男女トラブルの逮捕は弁護士に依頼すべきか

男女トラブルに関しては,特に逮捕を予防するために弁護士へ依頼することが非常に有力です。

逮捕を回避する第一の手段として挙げられるのは事前の示談ですが,円滑に示談交渉を進め,当事者間で解決を図るためには,間に弁護士を挟んで協議することが重要です。弁護士を挟まずに交渉を行った場合,感情的な対立が激しくなりやすく,場合によっては示談しようと連絡を試みる行為が逮捕の原因になる可能性も否定できません。

また,否認事件では,逮捕を回避するためにどのような行動をするべきか,判断は容易ではありません。例えば,否認を前提に相手と示談をする,自ら先回りして警察に相談する,現状では特に動かず待機するなど,選択肢は複数あり,メリットデメリットを十分に理解した上で最も事件の内容や自身の希望に沿った行動を取ることが必要です。
このような判断や行動に際しては,弁護士の専門的なサポートを受けることを強くお勧めします。

ポイント
弁護士依頼は円滑な示談のため重要
否認事件での行動選択も弁護士の専門的判断が望ましい

男女トラブルの逮捕に関する注意点

①時期の予測が困難であること

男女トラブルで逮捕がなされる時期は,被害者が捜査機関に相談などをした時期に大きく左右されます。もっとも,被害者が行動を起こすタイミングに関するルールは基本的になく,被害者側の意向によると言わざるを得ません。

そのため,被害者が早く動けば捜査の開始も早く,被害者がなかなか動かなければ捜査も開始しない,といったように,被害者次第で手続の時期が変わってしまうため,逮捕が懸念される時期がいつか,ということを予測するのは非常に困難です。
男女トラブルでは,「いつまで逮捕の可能性があるか」という疑問に第三者が回答することのできない場合が多いでしょう。

②逮捕後の拘束が長期化する可能性

男女トラブルは,犯罪としては「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」に該当することが多い類型ですが,これらの犯罪は逮捕された場合の身体拘束の期間が長くなりやすい傾向にあります。
特に,当事者間で言い分が食い違う場合は,加害者とされる側の身柄を拘束した状態で裏付け証拠を収集することになるため,早期釈放は難しいケースが少なくないでしょう。

男女トラブルは,逮捕するかどうかの判断は慎重を期す必要がありますが,逮捕すべきと判断された場合の早期釈放は難しいことに注意が必要です。

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