【痴漢事件での呼び出し】どう対応すべき?出頭したら逮捕される?注意点は?

このページでは,痴漢事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
痴漢事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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痴漢事件で呼び出された場合の対応法

痴漢事件に関して取り調べのために呼び出しを受けた場合,適切な対応が早期解決のきっかけになることもあります。呼び出しを受けたときの状況に応じて,どのような対応をするのが適切か整理しておくと有益でしょう。

①すでに取調べを受けたことのある事件

事件当日に現行犯で問題になって取調べを受けた後,後日呼び出される場合が代表例です。

同一の事件について取り調べを受けたことがある場合,呼び出された後の取調べは前回の内容を踏まえたものになります。そのため,前回と今回とで話の内容が一貫しているかどうか,という点が円滑な手続にとって重要なポイントです。
捜査機関は,当然前回の取調べ内容と整合する話が出てくるものと想定して呼び出し,準備をしています。そこに前回と全く異なる話が出てくると,手続は振り出しに戻り,改めて取調べをやり直す必要が生じかねません。

そのため,対応するときのスタンスとしては,事実ありのままを一貫して述べる,という方針を貫くのが合理的でしょう。

万一,前回の取調べで事実でないことを話してしまった場合には,極力速やかに訂正を申し出るのが適切です。一度供述調書の内容として記録されたものであっても,訂正の申し出は可能であるため,訂正の内容と理由を明確に伝えるようにしましょう。

ポイント
一貫した供述を心掛ける
訂正を要する場合は早めに申し入れ,理由を添えて説明する

②初めて呼び出される場合

事件当日に問題にならなかった痴漢事件でも,後日電話がかかってくるなどして警察に呼び出されることがあり得ます。

この点,初めての呼び出しを受ける場合は,まず予定した日時に確実に出頭するようにしましょう。呼び出しを行う警察の判断は,「逮捕しなくても呼び出せば来てくれるであろう」というものであることが通常です。そのため,呼び出しに応じて自分から出頭するかどうかは,逮捕を要するかどうか,という警察側の判断に大きな影響を与える可能性があります。呼び出して任意の出頭を求めても応じてくれないとなると,「出頭してくれないなら逮捕すべき」という判断に切り替わってしまう可能性も否定できません。

そして,出頭後の取調べでは,警察の疑いに間違いがない場合,真摯に認めて争わない姿勢を早期に示すことが適切です。初めて呼び出した警察は,「認める」か「認めないか」という基準で事件を区別するところから入るため,「認める」事件であるとの分類を早期にしてもらうことにより,手続が円滑になりやすいでしょう。
また,認める場合には,細かい内容や言い回しを気に留めるよりも,反省・後悔・謝罪といった点が十分に伝わるような対応を心掛けることが有益です。細かい内容は後の処分結果にほとんど影響しませんが,反省・後悔・謝罪という情状面は刑事処分の重さを大きく左右しうるためです。

ポイント
予定通りに出頭することが最重要
認め事件では認めるスタンスを早期に示す

③全く心当たりのない事件

疑われている事実に全く心当たりがない場合,まずは毅然とした態度で「認めない」スタンスを示すようにしましょう。

警察などの捜査機関は,認め事件よりも否認事件の方が被疑者に強く当たるものです。その理由としては以下のような点が挙げられます。

否認事件で捜査機関が強く当たってくる理由

1.捜査が面倒になるため認めて欲しい
→否認事件の場合,犯罪を立証するための証拠収集を慎重に行う必要が生じます。

2.言い逃れとの区別がつかない
→言い逃れ目的の可能性があるため,強く当たることで言い逃れを防ごうとします。

3.捜査担当官の感情面
→被害者の心情に配慮するあまり,否認する被疑者に感情を強くぶつける捜査担当者もいます。

合理的な理由かは別として,現実に否認の場合には,取り調べを行う警察官から心無い発言を受けたりウソだと決めつけられたりすることは珍しくありません。この点は事前に踏まえておくのが適切です。
それでも,心当たりがない事件で「認める」供述をするのは不適切と言わざるを得ません。捜査機関が強く当たってくることを想定した上で,一貫して否認のスタンスを示し続けていきましょう。

ポイント
否認事件では毅然とした態度を示し続ける
捜査機関の担当者から心無い発言を受ける可能性は事前に想定しておく

痴漢事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

刑事事件の手続では,呼び出しに応じて警察に出頭した際に,そのまま逮捕となる場合があります。これは,呼び出しの段階で逮捕を予定しており,言うならば逮捕のために呼び出した,ということになります。

もっとも,痴漢事件は,逮捕のために呼び出すということがあまり見られない事件類型です。痴漢事件で逮捕をするのであれば,現行犯逮捕をするか,呼び出しせずに直接自宅などへ行って逮捕をする方が合理的と判断することが一般的です。
そのため,痴漢事件で呼び出しを受けた場合には,そのまま逮捕される可能性をあまり強く警戒するのでなく,呼び出しに応じてできるだけ速やかに出頭することを心掛けるのが適切でしょう。呼び出しに対して円滑に対応する方が,結果的に逮捕の可能性を低下させることにつながります。

ポイント
痴漢事件では,呼び出しに応じて出頭した際の逮捕はあまり見られない

痴漢事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①呼び出しの時期

【供述調書の作成を要するとき】

痴漢事件で警察が呼び出しをするのは,取調べを行って供述調書を作成する,という目的であることが通常です。そのため,供述調書の作成を要すると判断されたときに呼び出しを受けることが考えられます。

現行犯で警察が対応した後の呼び出しである場合,事件当日の1週間~数週間後頃であることが多く見られます。身柄事件と異なり,呼び出しを行う在宅事件では捜査の時間制限が厳しくないため,いつ頃呼び出しを受けるかは警察のスケジュールにも大きく影響を受けやすいでしょう。

【聴き取りの不足があったとき】

一通り供述調書を作成し,警察から検察庁へ事件を送致する準備の段階に入ったとき,聴き取り不足が判明して呼び出されることもあります。その場合は,不足分の取調べと供述調書の作成を行うことになります。

警察では,必要な取り調べが終わればその旨を告げられることが一般的ですが,聴き取りに不足があった場合には最後の取調べから1週間~1か月後頃に呼び出しを受けることが多く見られるところです。聴き取りに不足があったことによる呼び出しの場合,呼び出しの理由が聴き取り不足であることを事前に教えてもらえるケースが多いです。

【押収物を還付するとき】

痴漢事件では,携帯電話などの所持品を押収される場合があります。所持品の中に犯罪の証拠や余罪を知るきっかけが含まれている可能性があるためです。
そして,押収物は捜査の必要がなくなった段階で還付(=返却)されますが,この還付は警察署に呼び出す形で行われることが一般的であるため,還付目的で呼び出しを受けることがあります。

押収物の還付は,警察での捜査が一段落する段階で行われることが通常であるため,最後の取調べから1週間~1か月ほどの時期に呼び出されることが多く見られます。
また,最後の取調べの際に押収物の還付を合わせて行うこともあります。この場合には,別途押収物の還付のために呼び出されることはありません。

②呼び出しの方法

呼び出しの方法は電話連絡となることが通常です。被疑者自身の所持する携帯電話があれば,その携帯電話番号への連絡となりやすいでしょう。
被疑者の携帯電話が押収中であるなど,被疑者自身への連絡が困難な場合は,身元引受人の連絡先など,代替となる電話番号への連絡となることが多く見られます。

痴漢事件の呼び出しに応じるときの注意点

①捜査情報を聞き出すことは困難

捜査機関は,捜査情報を一部でも被疑者に伝えることに極めて慎重な姿勢を示します。特に,初めて電話で呼び出した段階では,どんな事件に関して呼び出そうとしているのか,という点すらまともに話そうとしないことも珍しくありません。

呼び出しに応じて出頭したときも,事件に関する証拠などの捜査情報を被疑者の立場の人物に漏らすことはほとんどありません。取り調べのために必要な情報を共有してくれる場合を除き,捜査情報を把握しながら対応することは難しいと考えた方がよいでしょう。

②捜査機関の理解を期待しない

否認事件の場合,「自分の言い分を分かってもらおう」という思いで取調べに応じる人が少なくありません。しかし,このように捜査機関の理解を期待することはお勧めできません。
捜査機関の理解を期待する発想の土台には,「話せばわかってもらえるはず」という考えがあると思われますが,捜査機関はそもそも被疑者の話を受け入れたり理解してあげたりという立場にはありません。捜査機関は中立の第三者ではなく,被害者の求めに応じて犯罪捜査を行う者であって,被害者側の言い分に肩入れしやすい立場なのです。
捜査機関側に被疑者の言い分を理解する意思がない以上,捜査機関の理解に期待することは不合理と言わざるを得ないでしょう。

否認事件の場合,「疑う捜査機関」と「否認する被疑者」の平行線をたどるほかありません。この点を事前に踏まえておくかどうかで,否認事件の対応は大きく変わるはずです。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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