親族間で事故が起きた場合の補償を完全網羅。弁護士依頼のメリットや注意点も徹底解説

●家族間の事故では保険が利用できないのか?

●家族間の事故で保険が利用できる条件は?

●自賠責保険は利用可能か?人身傷害保険は利用可能か?

●家族間の事故については弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,家族間の交通事故についてお困りの方に向けて,家族間の事故で利用できる保険やその条件などを解説します。

家族間の事故で自動車保険に生じる問題

家族間の事故が起きた場合,自動車保険の利用には「免責」という問題が生じます。免責とは,保険金の支払がなされないことを指します。

事故の加害者が被害者に損害賠償を行うことをサポートする保険として,代表的なものがいわゆる対人賠償保険ですが,対人賠償は,被害者が加害者の家族である場合を免責の対象としています。そのため,被害者である家族の損害を,通常通り対人賠償保険で賄ってもらうことはできず,他の手段で損害を補填する必要があります。

ただし,被害者が家族だからといって必ず免責になるわけではありません。例えば,自分の車との事故で家族が被害に遭ったとしても,運転者が自分でなく友人であったならば,対人賠償の免責事由には該当しないため,自分の車の保険で対人賠償を利用し,家族への損害賠償をしてもらうことができます。

もっとも,家族間の事故では免責の問題が生じやすいことに変わりはないため,家族が被害者となる交通事故では,利用できる保険について十分な確認をしたいところです。

ポイント
家族間の事故では免責の問題が生じる
免責の場合,保険金は支払われない

保険が利用できる条件①対人賠償保険

対人賠償保険は,加害者が被害者に損害賠償をする際に利用する保険です。保険が加害者の代わりになって,加害者の支払うべき金銭を被害者に支払うことを内容としています。言うならば,加害者となった場合に生じてしまう金銭的な負担を代わりに背負うことで,加害者の経済的なマイナスを防ぐための保険ということできるでしょう。

そのため,対人賠償保険は他人への賠償責任を対象とすることが大原則です。家族が被害者の場合,加害者と被害者の財布が共通するので,被害者が加害者に賠償を求めることが考えづらく,賠償責任を補償する前提を欠いていると理解されています。
したがって,家族間の事故では,対人賠償保険の免責事由に該当する可能性が非常に高いでしょう。

もっとも,免責事由は具体的に定める必要があるため,免責となる範囲も保険の約款で厳密に定められています。そのため,家族関係があったとしても,対人賠償保険の免責に当たらないケースがあり得ます。

対人賠償保険が免責となる主な家族の範囲

加害者自身
加害者の父母・配偶者・子(※)

※保険によっては,同居されている場合に限定されている場合もあります。

例えば,兄弟姉妹が被害者の場合,免責の対象とされておらず,対人賠償保険が利用できる可能性が考えられます。また,別居の家族が被害者の場合,同じく免責の対象とされていない可能性があり得ます。

対人賠償保険は,補償される範囲が最も広い保険であることが多いため,利用できるかどうかは正確に確認することをお勧めします。

ポイント
対人賠償保険は家族間の事故で利用できないことが多い
免責となる家族の範囲を正しく把握するのが適切

保険が利用できる条件②自賠責保険

自賠責保険は,全ての自動車運転者に加入が強制されている自動車保険で,被害者に対する最低限の補償を内容としたものです。自賠責保険の場合,支払われる金額や計算方法は全て決まっており,交渉の余地がありませんが,早期に確実な保険金の支払いをすることで,被害者に対する一定の補償を実現するための保険と位置付けられています。

この自賠責保険は,家族間の事故でも原則として利用が可能であるとされています。自賠責保険を支払う相手は,加害者にとって「他人」であることが必要ですが,自賠責保険の取り扱い上は,家族でも「他人」と扱われるのが原則です。ここでの他人とは,加害者と同程度に運行を支配していたとは言えない人物,という意味合いと理解されています。

ポイント
自賠責保険は家族間の事故でも原則として利用可能

保険が利用できる条件③人身傷害保険

人身傷害保険は,事故によって身体に損害を受けた場合,その損害に対して保険金が支払われる,という内容の保険です。対人賠償保険が事故相手の人身損害への支払の保険とすれば,人身傷害保険は自分の人身損害への支払を行う保険,という区別ができるでしょう。

この人身傷害保険は,家族間の事故でも利用が可能であることが通常です。家族間の事故では,対人賠償保険が免責になる代わりに,人身傷害保険で損害をカバーしてもらうことによって,損害の補填を図ることが一般的な進め方となりやすいでしょう。

ただし,人身傷害保険にも免責事由はあり,免責に該当すれば保険金が支払われません。代表的な免責事由としては,故意又は重大な過失で事故を起こしてしまった場合が挙げられます。故意に自損事故を起こして同乗した家族にケガを負わせた,という場合だと,自分はもちろん家族に対しても人身傷害保険の支払がなされない可能性が高くなります。

人身傷害保険の主な免責事由としては,以下のものが挙げられます。

人身傷害保険の主な免責事由

1.故意または重大な過失によって事故が生じた場合
2.無免許運転の場合
3.飲酒運転の場合
4.麻薬や覚せい剤など,薬物を使用した状態であった場合
5.自殺行為や犯罪行為によって事故が生じた場合

人身傷害保険は,自賠責保険で賄われない部分も補償するため,非常に重要な役割を発揮することが多いです。また,自賠責保険金の請求に必要な手続も行ってくれるので,自分で自賠責保険金を請求する負担も生じないことが通常です。
家族間の事故では,基本的に人身傷害保険を通じた金銭的補償を得ることが適切になりやすいでしょう。

ポイント
人身傷害保険は家族間の事故でも利用できることが通常
故意や重過失の事故では,免責とされることがあり得る

家族間の事故で弁護士に依頼すべきか

家族間の事故で弁護士に依頼すべきかどうかは,どのような保険が利用できるかによって変わりやすいでしょう。

①対人賠償保険の利用

対人賠償保険が利用できる場合,被害者が得られる賠償金額は弁護士の有無によって変わることが通常です。一般的に,弁護士が交渉等を行うことで対人賠償からの支払金額は増額するため,弁護士への依頼を積極的に検討するのが有益でしょう。

特に,自動車保険の弁護士費用特約が利用可能である場合は,弁護士費用の負担なく弁護士に依頼し,増額を目指すことが可能になりやすいです。そのため,弁護士費用特約の有無をあわせて確認し,利用ができる場合には積極的に利用するようにしましょう。

②自賠責保険の利用

自賠責保険への請求は,弁護士の有無によって金額が変わりません。そのため,自賠責保険金を増額するために弁護士へ依頼する,ということは現実的でないでしょう。

もっとも,自賠責保険金を請求するために必要な手続は,煩雑であることが少なくありません。必要な書類も多岐に渡りやすく,請求を行うことの負担は大きくなりやすい所です。
そのため,請求手続を弁護士に代行してもらう目的で弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

ただし,この場合には負担する弁護士費用と見合っているか,十分に検討することをお勧めします。弁護士が手続を代行しても金額が変わらない以上,請求の手間をお金で買う形にならざるを得ません。弁護士費用の金額が,請求の手間を回避するためのコストとして釣り合っていると思えるかどうかは,重要な判断材料とするべきです。

弁護士費用が見合っていると判断できる場合には,弁護士への依頼が有力な手段になるでしょう。

③人身傷害保険の利用

人身傷害保険金の金額は,その計算方法が保険約款に定められているため,異なる計算方法を求めるような交渉の余地はありません。そのため,慰謝料の金額を交渉する,といったことは不可能であり,弁護士の有無によって慰謝料額が変わることは通常ありません。

もっとも,重大な事故で,後遺障害等級の認定がなされた場合には,逸失利益について交渉の余地があり得ます。そのため,後遺障害等級の認定を目指す場合や,後遺障害等級認定後の逸失利益の増額を目指したい場合には,弁護士への依頼が有力な手段になるでしょう。

なお,人身傷害保険を利用する場合にも,弁護士費用が見合っているかの検討は行うことが適切です。結果的に弁護士の有無で金額が変わらない場合もあり得るため,そのようなときに弁護士費用の負担が大きくなり過ぎないか,といった点は十分に確認するのが望ましいでしょう。

④注意点

家族間の事故では,当然ながら一方の家族が加害者で,他方の家族が被害者となります。そして,被害者の受け取る金額が大きくなれば,被害者は得をする一方で加害者は損をし,逆に被害者の受け取る金額が小さくなれば,被害者が損をする一方で加害者が得をすることになります。
そのため,家族間で互いの利益が相反する「利益相反」という関係に立ちます。

この点,被害者のために弁護士を依頼するときには,利益相反の関係にある家族がどこまで関与するか,慎重な判断が必要です。少なくとも,弁護士への依頼を加害者側の家族が行うのは不適切であるため,弁護士への相談や依頼をどのような形で行うべきかは,事前に弁護士と十分に確認しましょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

家族間の事故の場合,利用できる自動車保険の範囲が事故の内容や当事者の関係によって異なってくることがあります。しかし,その内容をご加入保険から正しく案内されていないケースも散見されており,自分でもしっかりと確認することが大切です。
また,特に事故の規模が大きい場合は,弁護士に依頼することで補償額が増額することも考えられますので,弁護士へのご相談も有力でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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