死亡事故で賠償金を獲得するまでの流れは?ポイントや注意点は?弁護士依頼のメリットも詳細解説

●死亡事故で賠償金を受け取るまでの流れが知りたい

●死亡事故で遺族が対応するべきことは何があるか?

●死亡事故の場合の特徴にはどんな点があるか?

●死亡事故で遺族が損をしないためのポイントを知りたい

●死亡事故の対応は弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,ご家族が死亡事故の被害に遭った場合の対応でお困りの方に向けて,死亡事故の場合の流れや特徴弁護士に依頼するメリットや注意すべきポイントなどを解説します。

死亡事故の流れと特徴①保険会社の対応時期

死亡事故被害を受けた場合,遺族側は,基本的に加害者の保険会社による案内を受けることで金銭的な話をスタートすることになります。もっとも,加害者の保険会社は,あまり速やかに遺族への連絡を開始しないことが一般的です。
その主な理由は,遺族側への配慮にあるとされています。大きな不幸があった直後に,保険会社が金銭の話をし始める,という流れは適切でないと考え,一定期間を設けた後に案内を開始することが多いのです。

具体的には,四十九日の後を目安に対応を開始する例が多く見られます。一般的に,四十九日をもって「忌明け(きあけ)」とされ,故人の冥福を祈って喪に服す期間が明けると考えられているため,事故日又は死亡の日を基準に四十九日の期間を計算し,その期間後に対応を開始することとなりやすいでしょう。

これは,裏を返せばあまり早期に金銭賠償のやり取りがスタートしない,ということにもなります。しかし,場合によっては迅速な連絡の開始を希望するケースもあり得るでしょう。
迅速なやり取りを希望したい場合には,弁護士に依頼し,弁護士に相手保険との連絡窓口を担ってもらうことが有効です。連絡等に応じる負担なく,早期に金銭賠償に必要な手続を進めてもらうことが可能になります。

ポイント
保険会社の対応開始時期は,四十九日後が多い
早期のやり取りを希望する場合は,弁護士委任が有効

死亡事故の流れと特徴②戸籍の取り付け

死亡事故の場合,他の事故とは異なる対応が必要となりますが,その代表的なものが戸籍の取り付けです。

死亡事故の場合,被害者自身は請求ができないため,被害者から損害賠償請求権を相続した相続人が,加害者側に請求する立場となります。もっとも,相続人が誰か,何人いるか,という点が分からないと,請求額を明確にすることができません。それぞれの相続人が相続する割合が分からないためです。
また,加害者側としても,相続人の範囲や人数を正しく把握できないのは大きなデメリットにつながります。相続人が一人だけだと思って金銭的解決をしたのに,その後にほかの相続人が現れたとなると,トラブル化してしまうことは想像に難くありません。

そのため,死亡事故の場合,被害者の出生から死亡までの戸籍を全て取り付けることが必要とされています。これは,自賠責保険から保険金を受領するためにも必要とされるため,当事者の判断で省略することも困難です。
被害者の出生から死亡までの戸籍を一通り取り付けることで,被害者の家族関係を概ね特定することが可能になります。また,被害者の親が既に他界している場合には,親の死亡記載がある戸籍を別途取り付ける必要が生じやすいところです。

ポイント
被害者の出生から死亡までの戸籍が必要
被害者の親の死亡記載がある戸籍も必要となりやすい

死亡事故の流れと特徴③収入の根拠資料を揃える

死亡事故の場合は,被害者が健在であれば得られたであろう収入(死亡逸失利益)が賠償の対象となります。そのため,被害者が得られたであろう収入を計算する前提として,被害者の直近における収入額を確認することが必要です

具体的な根拠資料としては,以下のようなものが挙げられます。

主な収入の根拠資料

1.事故前年分の源泉徴収票
→給与所得者(会社員)の場合

2.事故前年分の確定申告書
→事業所得者(自営業者)の場合

3.事故前年分の所得証明書
→複数の収入がある場合

4.事故直近の給与明細
→勤務開始後の期間が短い場合

また,死亡事故における収入の根拠資料としては,年金収入に関する資料も必要です。
年金収入がある被害者の場合,死亡事故によって年金収入が得られなくなってしまうこととなるため,健在であれば得られたであろう年金も逸失利益の対象となります。
この点,年金額の根拠資料としては,「年金額改定通知書」の提出が最も端的でしょう。年金額改定通知書は,1年間の年金額が記載されたもので,年金額が改定された年度の6月頃に受領するのが一般的です。年金額改定通知書が見つからない場合には,管轄の年金事務所で再発行してもらい,取得することも有力です。

ポイント
死亡逸失利益を計算するため,収入額を特定する
死亡事故では,年金の逸失利益も生じる

死亡事故の流れと特徴④金額交渉の方法

死亡事故では,加害者の加入保険と被害者遺族(相続人)との間で必要なやり取りを行うことになります。もっとも,相続人が全員関与するとなると,手続が煩雑になるばかりでなくやり取りも進まなくなりかねないため,一般的には遺族代表者が相続人全員を代表する形で対応することになりやすいでしょう。

誰が遺族代表者として対応するかは個別の家族関係によりますが,相続人のうち,対外的な対応や金銭面のやり取りに最も長けた人とすることが多く見られます。ほかには,被害者と最も近い関係にあった成人を遺族代表者とする場合も多数あるところです。

ただ,遺族の中に十分な金額交渉や手続対応のできる人がいるとは限らず,対応の負担などが大きくなってしまうケースも少なくありません。そのような場合には,弁護士への依頼が非常に有力な選択肢となるでしょう。
弁護士に依頼することで,誰が遺族代表者として対応するかという悩みがなくなるのみならず,肝心の金額面についても適切な解決が可能になります。死亡事故は損害額が大きくなりやすいものでもあるため,判断が難しい場合は積極的に弁護士への相談を検討することが有益でしょう。

ポイント
金額交渉は加害者の保険担当者と遺族代表者との間で行う
遺族代表者に代えて弁護士に依頼することが有力

死亡事故の流れと特徴⑤過失割合の争い

死亡事故においても,過失割合の争いが生じる場合は少なくありません。特に,死亡事故のように損害が大きな事故では,過失が若干違うだけでも金額にすると非常に大きな差異につながるため,双方ともに過失割合の検討は慎重に行うことが多くなります。

この点,死亡事故の特徴として,過失割合の争いを解決することに時間がかかりやすい,という点が挙げられます。それは,加害者の刑事処分を待つことになりやすいためです。

過失割合を検討するための資料として,「実況見分調書」を用いることが広く行われています。実況見分調書とは,刑事手続における捜査資料の一つで,捜査機関による「実況見分」の結果を書面にまとめたものです。そして,死亡事故における実況見分とは,事故発生場所や事故態様などについて,立会人の指示説明をもとに特定し,記録化することを言います。
死亡事故では,被害者が立会人となることができないので,加害者立ち会いでの実況見分調書が作成されます。つまり,実況見分調書によって,加害者が事故状況をどのように説明しているかがわかる,ということです。

加害者の保険会社は,過失割合に争いがある場合,加害者の言い分を確認するために実況見分調書の取り付けを希望することが多く見られます。もっとも,この実況見分調書の取り付けは,基本的に加害者の刑事処分が決まった後にしか行うことができません。
したがって,過失割合に争いがあり,加害者の保険会社が実況見分調書を踏まえての検討を希望するとなると,どうしても刑事処分の後にしか過失割合の交渉が進まない,という事態が生じやすいのです。
死亡事故の刑事処分は,数か月~1年後にようやく行われるという場合も多いため,その間は待機を強いられることもあり得ます。

死亡事故は,損害額が大きいため交渉に時間を要する傾向にありますが,過失割合の争いがある場合には特に長期化の可能性がある,という特徴が指摘できるでしょう。
なお,被害者側であれば,捜査中の検察庁から実況見分調書を取得できる場合もないわけではありません。そのようなルートで取得ができれば,幾分早まることも考えられます。

ポイント
過失割合に争いがある場合,実況見分調書を取り付けることが多い
実況見分調書の取り付けは刑事処分の後になるため,時間がかかりやすい

確認ポイント①親族固有の慰謝料

交通事故に際しては,慰謝料(=精神的苦痛に対する賠償)が生じますが,死亡事故の場合,被害者本人のみでなく親族に対する慰謝料も発生し得ることに大きな特徴があります。親族の慰謝料は,被害者本人に対する慰謝料とは別途生じるもので,「親族固有の慰謝料」と呼ばれます。
被害者の死亡によって,親族にも多大な精神的苦痛が生じることは避けられません。そのため,被害者の死亡に伴う親族の苦痛を金銭換算したものが,親族固有の慰謝料と位置付けられる慰謝料です。

親族固有の慰謝料は,基本的に被害者と同居していた家族を対象としたものです。具体的な対象者や金額は個別のケースに寄りますが,被害者と関係が近く深いほど,金額が大きくなる傾向にあります。

裁判例における親族固有の慰謝料額の目安

配偶者概ね100~300万円
概ね100~200万円
概ね100~200万円
その他家族概ね50~100万円

また,親族固有の慰謝料は,自賠責保険においても,遺族の慰謝料という形で支払の対象とされています。

親族固有の慰謝料 自賠責基準

遺族1人の場合550万円
遺族2人の場合650万円
遺族3人以上の場合750万円
被害者に被扶養者がいる場合200万円加算

確認ポイント②逸失利益の計算

①生活費控除

死亡事故における逸失利益(死亡逸失利益)の計算に際しては,後遺障害逸失利益とは大きく異なる点があります。それは,生活費が必要なくなった分を考慮して計算する必要がある,ということです。

後遺障害の逸失利益は,以下の計算式で計算されるのが通常です。

後遺障害逸失利益
=「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」

一方,死亡事故では,逸失利益が生じたという経済的なマイナスがある一方,今後の被害者の生活費が発生しなくなったという経済的なプラスもあると考えられています。そのため,逸失利益の計算においては,この両方を踏まえて計算を行うことになるのです。

具体的な死亡逸失利益の計算においては,「生活費控除」という形で行われます。生活費控除は,基礎収入のうち一定の割合は生活費として費消されていたはずであるとみなし,基礎収入から一定額を割り引く方法で計算されます。

例えば,独身男性の場合だと生活費控除率は50%とされます。基礎収入の50%は生活費で消えていたはずであるから,逸失利益としては支払わない,という考え方になるのですね。
したがって,40歳で年収500万円の独身男性が死亡した場合の死亡逸失利益は,以下の通り算出されます。

死亡逸失利益(40歳年収500万円の独身男性)
=500万円×50%×(労働能力喪失率=100%)×27年ライプニッツ※

※67-40=27年のため

なお,主な生活費控除率は以下の通りです。

①一家の支柱 被扶養者1人:40%
②一家の支柱 被扶養者2人以上:30%
③女性(主婦・独身・幼児等):30%
④男性(独身・幼児等):50%

②年金収入

年金収入に関する逸失利益は,事故がなければ得られていたであろう年金収入を対象とするものです。そのため,逸失利益の対象期間は,「事故がなければ健在であったであろう期間」ということになります。
具体的には,死亡時の年齢を基準とした平均余命を用いて計算することが一般的です。平均余命までは健在であったであろう,とみなし,その期間を対象に年金収入の逸失利益を計算します。

なお,生活費控除を行うことは,年金の場合でも同様です。

具体的な計算式は,以下の通りです。

死亡逸失利益(年金)
=「基礎収入=年金収入額」×(1-生活費控除率)×「平均余命に対応するライプニッツ係数」

確認ポイント③自賠責保険金と比較すべき場合

死亡事故の場合,自賠責保険金の金額と加害者から受領できるであろう金額を比較し,加害者側への請求を試みるかどうか検討,判断することがあります。なぜなら,自賠責保険金の方が大きな金額となる場合,加害者側に請求してもコストだけが発生してしまい,メリットがないためです。

自賠責保険金額との比較が適切な場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

自賠責保険金額と比較すべきケース

1.被害者の過失割合が大きい
→過失割合を差し引くと,自賠責保険金より小さい可能性がある

2.被害者の収入がない又は少ない
→逸失利益がない場合,自賠責保険金より小さい可能性がある

個別の対応方針は,具体的な内容を踏まえての判断が必要になるため,一度弁護士への相談を試みられることをお勧めします。

死亡事故の注意点

死亡事故の場合,加害者側への請求権を持つのはそれぞれの相続人です。そして,各相続人が相続する範囲は,その相続分によって決定することになります。
そのため,各相続人は,自分が相続する範囲について独自に加害者側へ請求できます。裏を返せば,他の相続人が相続した範囲については,勝手に交渉をしたり請求したりすることはできません。

加害者の保険会社と交渉する場合や,弁護士に依頼する場合は,全ての相続人が一緒になって行うのか,一部の相続人だけが行うのか,という点を必ず明確にしましょう。

死亡事故で弁護士に依頼するメリット

交通事故の中でも,死亡事故では弁護士依頼するメリットの大きい場合が多く見られます。具体的には,以下のような事情が挙げられるでしょう。

①増額幅の大きさ

交通事故は,弁護士がいる場合にはいない場合と比べて賠償額が大きくなる傾向にありますが,死亡事故だと,元々の損害額が大きい関係で,弁護士の有無による金額の差も大きくなりやすいです。特に,一家の支柱として家計を支えてきた人物や,若くして被害に遭った人物などの場合には,その傾向がより強く現れやすいでしょう。

死亡事故による被害は極めて大きく,それだけに適切な金銭賠償の獲得は不可欠です。弁護士への依頼は,適切な金銭的解決のため非常に重要なものということができるでしょう。

②手続の煩雑さ

死亡事故では,戸籍をはじめとした資料の収集・提出や,金額計算に必要な確認など,解決のための手続が煩雑になりやすく,遺族側の対応負担も多くなりやすいものです。しかし,死亡事故による精神的負担に加えて,それらの手続負担に耐えることは決して容易ではありません。

この点,弁護士に依頼することで,煩雑な手続を弁護士に任せることができ,対応の負担を非常に大きく軽減することが可能になるでしょう。

③早期着手

一般的な死亡事故の取り扱いとして,加害者の保険会社は四十九日後の対応開始となることが多く見られます。ただ,これでは概ね2か月程度の間,何も解決の動きが進まないまま時間だけが流れることになり,早期解決は図りづらいと言わざるを得ません。

この点,弁護士へ早期に依頼することで,加害者の保険会社に対して四十九日の前から動き出してもらい,弁護士との間で必要な手続を進めてもらうことが可能になります。対応の負担を軽減しつつ,早期の処理を求めることもできるというのは,弁護士に依頼した場合だけの大きなメリットと言えるでしょう。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

死亡事故は,その被害の大きさでは交通事故の中でも最大のものです。まず,身近にご不幸があった方には心よりお悔やみ申し上げます。
金銭賠償との関係では,その被害の大きさに見合った金額を確実に受領される必要がありますが,相手保険会社に任せていてはそれは困難です。ぜひ,今後の生活のためにも交通事故に精通した弁護士への依頼を検討されてみてください。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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