【児童ポルノ事件の示談を知りたい人のために】児童ポルノと示談の関係,示談の方法や金額,示談の効果などを一挙解説

このページでは,児童ポルノ事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

児童ポルノ事件は示談で不起訴になるか
児童ポルノ事件で示談する意味
児童ポルノ事件で示談をする方法
児童ポルノ事件の示談金相場
児童ポルノ事件の示談内容・条項
児童ポルノ事件の示談で注意すべきこと
児童ポルノ事件の示談に必要な費用

児童ポルノ事件は示談で不起訴になるか

児童ポルノ事件でも示談は有力な手段です。児童ポルノに関する事件として最も代表的なのは児童ポルノの「製造」事件ですが,これは児童ポルノを撮影したり,児童本人に撮影させてデータを送信してもらったりする行為が該当します。そして,被写体となった児童及びその親権者との間で,児童ポルノ製造事件について示談をすることは数多く見られます。

ただし,製造をはじめとする児童ポルノ事件については,示談をしたから不起訴になるというわけではない,という点に注意が必要です。

そもそも,示談が不起訴の重要な材料になるのは,事件の被害者自身が,示談によって不起訴を希望することとなったためです。被害者の存在する事件では,その被害者の意向を起訴不起訴の判断に反映させる取り扱いが一般的であるため,被害者が不起訴を望む以上は不起訴にすべきだ,という結論になりやすいわけです。

しかしながら,児童ポルノの事件は,単純に示談を被害者とする事件というのみでなく,社会の秩序を乱すという側面があると言われています。児童ポルノが広く製造されてしまうと,児童が健全に成長できる社会にならないため,児童ポルノ事件を犯罪とすることで健全な社会を守ろうとしているということです。

児童ポルノ事件の二つの側面

1.被害者である児童を保護する側面

2.社会の秩序を維持する側面

そうすると,児童ポルノ事件における示談は,「1.被害者である児童を保護する側面」には大きく影響するものの,「2.社会の秩序を維持する側面」から起訴するべきだという問題は解決できないため,示談をしても起訴される可能性が十分に残るのです。
そのため,児童ポルノ事件では「示談=不起訴」でないという点に十分留意するのが適切でしょう。

もっとも,これは児童ポルノ事件で示談する利益がない,という意味ではありません。児童ポルノ事件で不起訴を目指す最も有力な手段は,やはり示談であることがほとんどでしょう。
その点では,「示談=不起訴」ではないことを踏まえつつ,不起訴を目指すのであれば示談を試みることが望ましいと言えます。

ポイント
児童ポルノ事件は示談しても起訴される可能性がある
ただし,不起訴を目指す最も有力な手段が示談であることは変わりない

児童ポルノ事件で示談する意味

児童ポルノ事件の場合,示談されてもなお起訴される可能性はあるため,示談をすることにどのような意味があるのか,という疑問を持たれる場合もあり得るところです。
この点,結論的には,児童ポルノ事件の示談には大きな意味がある,と考えるのが適切でしょう。具体的には,以下のような意味があり得ます。

①処分の軽減

児童ポルノ事件で示談しても不起訴にならないことがある,というのは,示談に不起訴の可能性を高める効果がないという意味ではありません。示談は間違いなく不起訴の可能性を高める重要な要素です。
また,仮に示談で起訴が避けられなかったとしても,起訴後の処分の重さは示談するのとしないのとで大きな差が生じます。

刑事処罰には,大きく分けて罰金,執行猶予,実刑という3種類の内容があります。

この点,罰金で終了すれば,公開の裁判を受ける必要なく,金銭の支払だけで手続が終了するため,最も軽微な処分と言えます。一方,執行猶予では刑務所には入らないものの公開の裁判を受けることになり,実刑では直ちに刑務所へ収容されることとなります。

児童ポルノ事件では,初犯の場合に執行猶予又は罰金という処分が多く見られますが,示談によって執行猶予が罰金になったり,同じ罰金でも罰金額が大きく減少したりと,示談を考慮した処分の軽減となるのが通常です。

なお,罰金額の減少は,より軽微な前科しか残らなかったということになるため,万一その後に別件で刑事処分を受けた場合の重さに大きな影響を及ぼします。

②逮捕の回避

児童ポルノ事件は,捜査に際して逮捕される場合されない場合いずれも考えられる事件類型です。そして,逮捕を行うかどうかは,捜査の初期段階で判断されることもあれば,捜査がある程度進行した段階で判断されることもあります。

この点,比較的早期に示談が成立すれば,その後に逮捕される可能性は非常に低くなるでしょう。特に逮捕するべき事情が他になければ,示談が成立した児童ポルノ事件で逮捕されることは考え難いと言っても過言ではありません。

示談を早期に試みることで,示談そのものの成功率も高くなりやすいため,迅速に示談を進め,逮捕を回避することを目指すのは非常に有力でしょう。

③金銭請求の予防

児童ポルノ事件が発生した場合,児童の親権者から,児童に生じた損害の賠償を請求される可能性があり得ます。例えば,児童ポルノの流出によって精神的苦痛を受けた,不登校になってしまった,精神疾患が生じてしまったなど,児童の生活に支障が生じた場合には,具体的な損害もあるため,その損害を金銭で埋め合わせるよう求められる可能性が高くなるでしょう。

この点,示談の成立は当事者間の金銭問題の解決を意味するものです。示談が成立すれば,その後に金銭請求を受ける筋合いは法的になくなります。そのため,示談が成立することで,その後の一切の金銭請求が予防でき,大きな安心につながるでしょう。

児童ポルノ事件で示談をする方法

児童ポルノ事件で示談をする場合は,まず弁護士に依頼をしましょう。弁護士を窓口にして,弁護士限りで相手と連絡を取ることが不可欠です。

児童ポルノ事件で捜査を受けている場合,依頼を受けた弁護士は,捜査機関の担当者に示談希望の旨を連絡します。連絡を受けた捜査機関から児童側(通常は親権者)に連絡を取ってもらい,示談のお話に応じるか意思確認をしてもらうためです。
意思確認の結果,児童側の了承が得られれば,弁護士との間で連絡先を交換し,示談交渉を開始することができます。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

この点,代表例である児童ポルノ製造事件では,SNSなどで児童と直接連絡を取っていることが多く,児童との連絡手段が存在するケースも珍しくはありません。しかし,児童との直接の連絡は控え,警察や検察の担当者を通じて連絡を試みるようにしましょう。
例外的に,まだ捜査を受けていない段階では,児童の連絡先に直接問い合わせるしかないこともあります。もっとも,この場合でも当事者間で連絡を取ろうとするのはトラブルの原因になるため,弁護士から連絡を入れてもらうなど,事前に弁護士と十分に相談してください。

ポイント
弁護士を通じて,捜査機関担当者に連絡を入れてもらう
捜査を受けていない場合は,弁護士を通じて連絡を試みてもらう

児童ポルノ事件の示談金相場

児童ポルノ事件のうち,最も代表的な児童ポルノ製造事件では,概ね30~50万円ほどが示談金の目安とされやすいでしょう。

この点,示談金額に影響を及ぼす事情としては,主に以下の各事項が挙げられます。

示談金を増減させる事情

1.製造に至った経緯
→児童の意思を強く誘導しているほど増額要因になる

2.児童ポルノの数・内容
→数が多く,過激であるほど増額要因になる

3.児童の年齢
→年齢が低いほど増額要因になる

4.生活への影響
→児童の私生活や学校生活に具体的な支障があると,増額要因になる

5.親権者の受け止め
→親権者が,児童が被害を受けたという認識を強く持つ場合,増額要因になり得る

6.加害者側の経済力
→経済力に限りがある場合,減額要因になる

児童ポルノ事件の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項があることによって,児童側からの金銭請求を未然に防ぐことが可能になります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。

②児童ポルノ事件で特に定めやすい条項

【連絡禁止・接触禁止】

児童側に対する一切の連絡を禁じ,その他方法の手段を問わず接触することをあわせて禁止する条項です。
児童ポルノの事件では,加害者と児童とが知り合い,性的な内容のコミュニケーションを交わすことを通じて生じることが大多数です。そのため,原因となったコミュニケーションを将来に渡って絶つことが,示談の条件として定められやすい傾向にあります。

【児童ポルノの削除・撮影機器の処分】

児童側は,児童ポルノの流出を強く懸念していることが通常です。加害者側に流出させる意図が全くなかったとしても,言葉のみでは信用し難いとのリアクションを受けることは珍しくありません。

そのため,当該児童ポルノ画像・映像を削除することや,撮影に用いた機器を処分することを条項に盛り込み,児童側の安心につながる示談内容とするケースも少なくありません。
場合によっては,データを処分したことや機器を処分したことの根拠を事前に示すこともあり得るでしょう。具体的な方法は,個別の協議によるところです。

【SNSアカウントの削除】

当事者がSNSを通じて知り合った場合,該当するSNSアカウントを削除し,連絡方法を具体的に失わせることも考えられます。
これは,連絡禁止をより確かにするため追加で設ける条項,という意味合いが強いでしょう。

児童ポルノ事件の示談で注意すべきこと

①示談と不起訴の関係

児童ポルノ事件は,示談が成立しても不起訴が見込めるとは限らない,という点に注意が必要です。起訴前の示談は,不起訴を目指すために行う場合がほとんどですが,示談は実現できても不起訴は実現できない可能性がある,ということをあらかじめ踏まえて示談に臨むことが大切になります。

この点は,児童側から示談条件を求められた場合にどこまで応じるのか,という判断に強く影響することが考えられるでしょう。不起訴が約束されるのであれば大きな不利益を受け入れることができても,不起訴になるかが不透明であれば受け入れづらい,ということは少なくありません。

事件の内容や示談の状況によっては,弁護士が検察官との協議を試み,児童側の要望に応じて示談をすることを条件に不起訴処分を求める,という動き方もあり得るところです。そのような見込みや活動方法に関しては,やはり刑事事件に精通した弁護士への十分なご相談を強くお勧めいたします。

②余罪がある場合

児童ポルノの事件では,複数の児童を相手に児童ポルノ製造事件が起きている場合もあります。事件類型としては,比較的余罪の多い傾向にあるでしょう。特に,SNSを通じて児童と知り合う方法の場合,不特定多数の児童と連絡を取ることが可能であり,相手となる児童も不特定多数になることが少なくありません。

この点,複数の児童に対する事件がいずれも捜査・処分の対象となる場合,全体として不起訴になるためにはすべての相手との間で示談を行う必要があります。一人の児童と示談ができても,ほかの児童に対する事件の処分とは関係がないためです。

そのため,「示談=不起訴」と限らない点も相まって,余罪のある児童ポルノ事件では示談の試みに関する判断が非常に難しいという特徴があります。理想は全件の示談ですが,経済的な条件や処分見込みなどを踏まえて,やはり弁護士との十分なご相談をされるのが望ましいでしょう。

③親権者の感情面

児童ポルノの事件は,相手の当事者が児童(=未成年)であるため,示談交渉の相手は親権者となることが通常です。そして,親権者は加害者側に対して強い被害感情を持っている場合が少なくはありません。その理由としては,以下のような点が挙げられます。

親権者の被害感情が強い場合の理由

1.子である児童への思い入れ
2.事件の全体像を知らない(特に児童が何をしたか)
3.警察から被害者の立場であると指摘されている

一方で,児童ポルノ製造の事件は,児童が製造行為に応じていることがほとんどであり,加害者としては「無理矢理製造したわけではないのに」という感覚を持つことも少なくありません。そのため,児童の親権者が強い被害感情を持っている一方,加害者側としては児童に大きな被害を与えた,という認識まではないなど,当事者間のズレが生じることも多数見られます。

示談を試みる場合は,親権者が想像以上に強い被害感情を持っている可能性があることを事前に踏まえておくことが望ましいでしょう。また,その点を正確に踏まえた弁護士に依頼することで,円滑かつ合理的な内容の示談につながる可能性が高くなります。

児童ポルノ事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で児童ポルノ事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

児童ポルノ事件の場合,30~50万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

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