【盗撮事件の示談を知りたい人のために】示談金相場や示談のメリット,余罪に関する示談などを弁護士がすべて解説

このページでは,盗撮事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

盗撮事件で示談は必要か
盗撮事件における示談のメリット
盗撮事件で示談をする方法
盗撮事件の示談金相場
盗撮事件の示談内容・条項
余罪の示談について
盗撮事件の示談に必要な費用

盗撮事件で示談は必要か

盗撮事件は,基本的に示談が必要であると理解するのが適切です。
一般的な盗撮事件の場合,示談ができているかどうかによって処分が決まると言っても決して過言ではありません。

犯罪事実に争いのない盗撮事件では,特段の事情がなければ起訴されるのが通常です。起訴された場合,無罪でない限り刑罰を受けることになるため,刑罰を受けて前科が付くことになります。
一方,同じ事件で示談が成立した場合,特段の事情がなければ起訴されない方が通常の処理になりやすいです。被害者が起訴を希望していない場合,被害者の意向を押し切って起訴されることはあまりない事件が多い類型と言えるでしょう。

もちろん,示談をしても起訴を防げない事件はありますが,その場合でも示談をしていることによって処罰は一段軽くなるという理解をするのが一般的です。示談がなければ実刑判決の対象となる事件でも,示談があることによって実刑判決にならず済むことは決して珍しくありません。

盗撮事件の対応は,まず示談から検討することを強くお勧めします。

ポイント
盗撮事件は基本的に示談が必要
示談が成立していれば不起訴が見込まれやすい

盗撮事件における示談のメリット

盗撮事件は示談のメリットが非常に大きい事件類型です。具体的なメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①前科を防げる

刑事事件では,警察から事件の送致を受けた検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めます。そして,検察官に起訴されると,刑罰を受けて前科が残ることになります。
この点,検察官が起訴するか不起訴どうかは,様々な事情を総合的に考慮の上で判断されますが,被害者がいる事件の場合,被害者の意向を反映させることが非常に多く見られます。

盗撮事件は被害者のいる事件類型のため,被害者が起訴を望むか不起訴を望むかという点が,検察官の判断を左右しやすい傾向にあります。そのため,不起訴を目指す場合の最も効果的な手段は,被害者に不起訴を希望してもらうことになるのです。

示談を行うことによって,被害者に不起訴を希望する意思を表明してもらうことができ,検察官の不起訴処分を獲得できる可能性が飛躍的に高くなります。不起訴処分となれば前科はつかないため,前科を防ぐための最も有力な手段は示談ということになるでしょう。

②早期釈放につながる

盗撮事件で逮捕・勾留されている場合,被害者との示談が成立すれば,その身柄拘束は早期に解かれる可能性が非常に高くなります。

そもそも,盗撮事件で逮捕・勾留といった身柄拘束をするのは,事件の捜査や処分(起訴・不起訴の判断)のために逮捕・勾留が必要であるからです。裏を返せば,捜査や処分を検討する必要がなくなれば,逮捕・勾留をしておく必要もなくなるため,早期に釈放されるということになります。

示談が成立した場合,被害者はそれ以上の捜査や加害者(被疑者)の刑事処罰を希望しなくなるため,捜査機関が捜査を続けたり刑事処罰を検討したりする必要は基本的になくなります。捜査機関の捜査は,被害者の協力がなければ困難なことも多いため,被害者が捜査を希望しないのに無理矢理捜査を続けることは難しい,という面もあります。

そうすると,示談が成立し,被害者が捜査や処罰を希望しないという希望を示せば,逮捕・勾留しておく必要もなくなります。その結果,不要な逮捕・勾留は終了し,早期釈放してもらうことが可能になりやすいでしょう。

③刑罰が軽減する

示談は,盗撮事件で起訴されることが防げない場合,刑罰を受けてしまう場合にも重要な効果を発揮します。

刑罰の重さを最終的に判断するのは裁判所ですが,裁判所が刑罰を判断する際に極めて重要視する事情に,被害者の処罰感情や被害者に対する被害の補填が挙げられます。

処罰感情とは,処罰を希望するかどうかという気持ちを言います。被害者の処罰感情が強いほど,刑罰は重くなる傾向にあります。
また,被害者に対する被害の補填は,被害者に生じた損害がどれだけ回復されているか,という意味で重要な判断要素になります。被害の補填は主に金銭で行われることが一般的ですが,事後的に被害が回復されていれば,その結果重い刑罰を科す必要はなくなる,という理解になるのが通常です。

被害者との間で示談が成立すれば,被害者に処罰感情がないことや,被害の補填がなされたことが明らかになります。そのため,示談は刑罰の軽減に直結する効果を持つということができます。

示談がなければ実刑判決が見込まれるケースでも,示談によって実刑判決を回避できる場合は珍しくありません。示談は,被害者がいる事件で刑罰を軽減するための最も有益な試みと理解してよいでしょう。

④被害者との法律関係が解決する

盗撮事件が起きた場合,被害者と加害者の間には,「被害者が加害者に損害賠償を請求できる」という法律関係が発生します。盗撮行為は,被害者に対する「不法行為」に該当するため,盗撮行為(=不法行為)の被害者は,加害者に対して金銭賠償を請求できる,という関係に立つのです。
しかも,この法律関係は,加害者が刑事処罰を受けたとしてもなくなったり負担が軽くなったりするものではありません。当事者間の法律関係と刑事処罰とは無関係であるためです。

この点,被害者との間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間には示談の内容以外に法律関係がない(法律関係が解決した)という約束をすることになります。そのため,示談が成立すれば,その後に加えて被害者から金銭賠償を請求されることはなくなり,法律関係の面でも安心することができます。
なお,当事者間の法律関係が解決したことを約束する示談の条項を,「清算条項」と言います。示談に際して清算条項を盛り込んで解決することで,当事者間の法律関係は示談をもって終了することになります。

ポイント 示談のメリット
前科の回避につながる
身柄拘束からの釈放につながる
刑罰の軽減につながる
当事者間の法律関係が清算できる

盗撮事件で示談をする方法

盗撮事件で捜査を受けている場合,示談をするためには捜査機関(警察や検察)にその旨を申し入れ,捜査機関から被害者に連絡を取ってもらうことが必要です。
もっとも,捜査機関は加害者本人と被害者を引き合わせることをしません。当事者同士で連絡を取らせるのは,被害者にとって不適切である上,二次被害の原因になる可能性がある,と考えるためです。
そのため,盗撮事件で示談を試みるためには,弁護士に依頼の上,弁護士を通じて動くことが必要となります。

具体的な流れは,以下の通りです。

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

被疑者の方ご本人は,弁護士にご依頼の後,この流れが進むのをお待ちいただくことになります。
弁護士から各所へ連絡を取った際,捜査機関や被害者から連絡を受け取った際など,流れが進むに応じて適宜報告を受けながら,示談の進捗を把握することが可能です。

ポイント
示談の申し入れは,弁護士から捜査機関へ行う
被疑者は,弁護士に依頼の後,弁護士を通じて状況を把握する

盗撮事件の示談金相場

刑事事件で示談を行う場合,加害者(被疑者)から被害者へ示談金の支払を行うのが通常です。具体的な示談金の金額は当事者間の協議で定められることになりますが,事件類型ごとに大まかな目安はあります。

この点,盗撮事件の場合,概ね30万円ほどとされる例が多く見られる傾向にあります。
ただ,被害者側の意向によってはより大きな金額となることも多数あります。特に,2023年に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され,盗撮事件がいわゆる「撮影罪」として厳罰化されたことは広く知られています。そのため,盗撮事件の厳罰傾向を踏まえた示談金額の検討を求められることも一定数あるところです。

被害者との交渉も踏まえた示談金額の目安としては,30~50万円ほどを想定するのが有力でしょう。
具体的な示談金額はこの目安を上回るケースもありますが,金額が変動する要因としては以下のような事項が挙げられます。

盗撮事件における示談金額の変動要因

1.盗撮の場所・方法
→自宅の浴室など,通常衣服をつけないプライベートな場所での撮影は,被害者の精神的苦痛が大きく示談金額の増額要因になります。

2.盗撮の期間・回数
→長期間,複数回の盗撮行為がある場合,示談金額の増額要因になります。

3.被害者の心身への支障
→精神疾患などの原因になっている場合,示談金の増額要因になります。

4.加害者の経済力
→経済力に限界のある場合,示談金の減額要因になります。

盗撮事件の示談内容・条項

【確認条項】

加害者が被害者へいくらの支払を行う必要(義務)があるかを,当事者間で確認する条項です。
当事者間で合意した示談金の金額を,支払う義務のある金額と定めることになります。

【給付条項】

確認された支払の義務をどのように果たす(給付する)のか,という点を定める条項です。
金銭の支払を内容とするのが通常ですが,支払方法が手渡しか振り込みか,手渡しであればいつどこで行うか,振り込みの場合はどの口座か,振込手数料は誰が負担するか(通常は加害者が負担),支払の期限はいつまでか,といった点を定めます。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間に債権債務関係(法律関係)がないことを確認する条項です。この条項を設けることで,加害者と被害者との法律関係は示談金の支払をもって終了することになります。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは「許し」を意味します。宥恕条項は,被害者が加害者を許すことを内容とする条項です。
加害者が示談金の支払を負担して示談を目指すのは,基本的にこの宥恕条項を獲得するためです。宥恕条項があることによって,捜査機関は被害者に処罰感情がないことを把握でき,不起訴処分の根拠とすることが可能になります。

【行動の制約】

示談成立後に一定の行動をしないこと(又はすること)を約束するものです。多くの場合,被害者と加害者が接触しないことを確かにするため,両者を物理的に引き離す目的で盛り込むことが考えられます。

盗撮事件で設けられやすい行動制約の内容としては,以下のものが挙げられます。

盗撮事件における行動制約の例

1.盗撮画像,映像を削除する
2.盗撮に用いた機器を処分する
3.事件が起きた電車の利用をしない・制限する
4.事件が起きた駅の利用をしない・制限する
5.事件発生場所の近辺に立ち入らない
6.勤務先を退職する(職場内での事件など)

なお,示談の内容は「今後一切接触しない」ことを前提にすることが通常であるため,一切接触しないとの約束を補強する意味合いの条項と理解されます。

【違約金】

加害者が示談で定めた約束に違反した場合,約束違反のペナルティとして被害者に金銭(違約金)を支払うという条項です。
主に,行動制約を取り決めた場合に,これを遵守してくれるか被害者が不安である,というケースで設けることが考えられます。
違約金の金額は,特段のルールはありませんが,示談金額をベースに定めることが多く見られます。

この違約金条項は,実際に違約があり金銭を支払う,という形で活用されることはほとんどありません。現実的には,「違約金の約束をできるほど示談条件を守る気持ちが強い」という意思を表明する手段として用いられるものです。

【口外禁止】

事件の内容や示談の内容を,第三者に口外しないと約束する条項です。両当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
盗撮事件の場合,口外されてよいと考える加害者はほとんどいないため,弁護士からはほぼすべてのケースで被害者へ口外禁止条項の設定を依頼することになるでしょう。

その他,被害者が複数いて被害者間に交友関係がある場合,示談の内容が共有されてしまうと,他の被害者との示談に悪影響が生じかねないため,被害者間の情報共有を防ぐ目的で設けられることもあります。

余罪の示談について

盗撮事件の場合,現実に発覚し捜査されている事件以外にも,余罪が複数存在することが考えられます。そのため,余罪も含めて示談する必要があるのかは重要な問題になります。

この点,余罪をすべて示談することは決して必要ではありません。余罪が存在したとしても,そのすべてが捜査・処分の対象になるわけではないからです。

余罪がある場合の取り扱いは,基本的に以下のいずれかとなります。

余罪の取り扱い

1.余罪を別途捜査・処分の対象とする
2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)

このうち,「1.余罪を別途捜査・処分の対象とする」ケースだと,余罪についても示談が必要となります。余罪の示談をしなければ余罪が起訴される可能性が高いためです。
しかし,「2.余罪があることを踏まえて本罪の処分を判断する(余罪は情状のみの問題になる)」ケースでは,不起訴のために余罪の示談が必要とはされません。余罪そのものを起訴したり不起訴にしたりするわけではないからですね。

この取り扱いの違いは,余罪について被害者が捜査・処分を求めているかによって変わるのが通常です。具体的には,事前に余罪の被害届が出ているかどうかによって左右される傾向にあります。
もっとも,盗撮事件の余罪について,事前に被害届が出ていることはあまりありません。盗撮行為の性質上,余罪が被害者に発覚している可能性が非常に低いため,余罪の被害者は事件を知らず,被害届も出ていないことが大多数です。

余罪に関しては,別途捜査の対象とされたことが分かってから,捜査の対象となった事件について行う方針が適切でしょう。

ポイント 余罪の示談
余罪が情状の問題にとどまるのであれば示談不要
余罪自体が捜査・処分の対象となる場合は示談が必要

盗撮事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で盗撮事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します

③示談金

一般的な盗撮事件の場合,30~50万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

⑤柔軟な料金設定が可能な場合

弁護士費用は,弁護活動の範囲を限定することで費用額を安く抑えることも可能な場合があります。
盗撮事件では,弁護活動の内容を示談に限定することで,費用額を抑える柔軟な料金設定のご案内ができる可能性もあります。

可能な費用負担に限界がある場合も,一度お問い合わせいただくことをお勧めいたします。弁護士から詳細なご案内を申し上げることが可能です。

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