●遺産分割の方法を知りたい
●遺産分割の流れを知りたい
●遺産分割の際に生じやすい問題は?
●遺産分割協議書とは何か?
●遺産分割を有効に行うための注意点は?
というお悩みはありませんか?
このページでは,遺産分割についてお困りの方へ向けて,遺産分割の流れ,遺産分割協議書の作成方法,遺産分割の際の注意点などを解説します。
目次
遺産分割の方法
相続が発生すると,相続人が複数人いる限り遺産分割の問題が生じます。遺産分割とは,被相続人(亡くなった方)の財産を相続人(遺産を受け継ぐ方)の間で分ける手続のことを指します。遺産には,現金・預貯金・不動産・動産(車や宝石など)など,様々な財産が含まれます。遺産分割は,相続人が適切に遺産を相続し,その後の生活や経済活動に活用するための重要な手続です。
この遺産分割の方法としては,以下のような種類が挙げられます。
1.遺言による分割
被相続人が遺言書を作成していた場合,原則としてその遺言の内容に沿って遺産分割を行う必要が生じます。そのため,遺産分割に当たってはまず遺言の有無を確認するのが一般的な流れになります。
なお,相続人全員が合意すれば,遺言書と異なる内容・方法での遺産分割も可能です。
2.遺産分割協議
遺言書がない場合には,相続人間で遺産分割を行う必要がありますが,まずは協議(話し合い)で遺産分割の取り決めを目指すのが通常です。
協議で遺産分割の内容が決まれば,遺産分割協議書を作成し,遺産分割が成立となります。
3.遺産分割調停
遺産分割協議では解決しなかった場合,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要が生じます。調停においては,裁判所を交えて相続人間での協議を行い,遺産分割の合意を目指すことになります。
調停が成立すれば,その内容で遺産分割が成立し,解決となります。
4.遺産分割審判
遺産分割調停で解決しなかった場合,自動的に審判手続に移行し,裁判所が審判を行います。審判は裁判所が遺産分割の内容を定めるもので,審判によって確定した分割方法には強制力が生じます。
なお,審判の結果に不服がある場合は,即時抗告という方法で不服申立てが可能です。
5.訴訟に移行する場合
遺産分割に関する法的手続は調停及び審判とされており,訴訟での遺産分割は想定されていません。もっとも,遺産分割の前提となる事項に争いがあるような場合には,訴訟に移行することもあり得ます。
具体的には,以下のようなケースが挙げられます。
遺産分割に関する訴訟
a.遺産確認訴訟
→遺産となる財産の範囲に争いがある場合の訴訟です。
b.相続人の地位不存在確認訴訟
→特定の人が相続人の地位にあるかどうか争いがある場合の訴訟です。
c.遺言無効確認訴訟
→遺言があるものの,その効力に争いがある場合の訴訟です。
d.遺産分割協議無効確認訴訟
→既に行われた遺産分割協議の効力に争いがある場合の訴訟です。
ポイント 遺産分割の方法
遺言→協議→調停→審判
争点によっては訴訟で解決する点も
遺産分割の流れ
遺産分割は,概ね以下の流れで行われるのが一般的です。
1.遺言の確認
被相続人が遺言を残している場合,遺産分割は原則として遺言の内容に従うことになります。そのため,まずは遺言の有無を確認します。
遺言が出てきたときは,家庭裁判所での検認手続が必要となるため,慌てて開封しないようにしましょう。ただし,公正証書で作成されている遺言書や,法務局で保管された遺言書であれば,家庭裁判所での検認は不要です。
2.相続財産・相続人の調査
相続財産を確定するため,預金口座について銀行に問い合わせたり所有不動産の登記を確認したりするなどして,相続財産調査を行います。また,被相続人の戸籍を出生まで遡って取得し,相続人調査を行うことも必要です。
相続財産や相続人に漏れのある遺産分割は,効力に問題が生じてしまうため,慎重に調査を行うようにしましょう。
3.遺産分割協議
遺言があれば遺言に従って遺産分割することになりますが,遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議の方法には特に制限がないため,どこかに集まって協議をしても,リモートで協議をしても問題ありません。
協議がまとまったら,その内容を遺産分割協議書にまとめることも重要です。遺産分割協議書は,不動産の相続登記や,自動車等の名義変更に必要となる書面であるとともに,合意を証明することで紛争の蒸し返しを防ぐ役割もあります。
4.調停・審判
遺産分割協議が整わなかった場合,家庭裁判所に調停を申し立て,裁判手続での解決を目指します。調停が成立しなければ,裁判所から審判がなされます。
なお,調停を行うことなく,いきなり遺産分割審判を申し立てることも法律上は可能ですが,現実的には調停に付され,まずは話し合いでの解決を目指すことになりやすいでしょう。
遺産分割で生じる争点①遺言の有効性
遺言は,被相続人が遺産分割の方法を決定する点で非常に影響力の大きなものです。そのため,不正な方法で不公平な遺言が作成されるケースもあり,その可能性がある場合は遺言の有効性が争点になります。
遺言が無効になる場合としては,以下のようなケースが挙げられます。
遺言が無効になる場合
1.遺言能力がない
→遺言を作成した時には既に認知症が進行していたなど,遺言を残す能力がなかった場合です。
2.作成方法の法令違反(方式違背)
→自筆証書遺言の場合,自筆でない,日付や押印がないといった形式の違反がある場合です。
3.共同遺言
→2人以上が同一の証書で遺言すること(共同遺言)はできません。夫婦が同一の書面で遺言を残すなどの場合が該当します。
4.公序良俗違反,錯誤,詐欺,強迫など
→法律上,意思表示の有効性に問題の生じる事情がある場合です。
遺産分割で生じる争点②相続人の範囲
特定の人物が相続人であるかどうかが争点となることも考えられます。具体的には,以下のようなケースが挙げられます。
相続人であるかが争点となる場合
1.相続欠格事由があり得る場合
相続欠格事由とは,相続人としての倫理に著しく反する行為であって,法律上自動的に相続権を失うものをいいます。被相続人や他の相続人を死亡させようとしたり,被相続人に無理矢理遺言をさせようとしたりした場合などが挙げられます。
2.養子縁組の効力に問題がある場合
被相続人の子については,実子のみでなく養子も相続人となります。もっとも,養子が相続人であるのは有効な養子縁組があるからであるため,養子縁組の効力に問題がある場合は,相続人であるかどうかの争点が生じます。
3.戸籍上の子が他人である場合
戸籍上は子とされていても,実際には被相続人の子でなく他人であるという場合,相続人でない可能性があり,相続人であるかが争点となり得ます。
遺産分割で生じる争点③遺産帰属性
被相続人の財産に見えるものが実際は異なる,逆に他人の財産に見えるものが実際は被相続人の財産である,といった事情があり得る場合,その財産は遺産に含まれるかどうか争点になることがあります。具体的には,以下のようなケースが考えられます。
1.被相続人が作った家族名義の預金
被相続人が,家族のために預金口座を作ってお金を入れていた場合,実質的には被相続人の財産でないか争点となり得ます。名義人と実質的な管理者が異なる預金を「名義預金」と言いますが,名義預金は相続トラブルの対象になることが少なくありません。
2.被相続人の土地上の建築物
被相続人が土地を所有しており,その土地に何らかの建築物があった場合,一般的には土地所有者である被相続人の財産と思われますが,実際には他者が被相続人の許可を得て設けたものである,といった事情があれば,誰の財産か争点になり得ます。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は,遺産分割協議で相続人全員が合意した内容を書面化し,相続人全員が署名押印したものです。
遺産分割協議書を作成することで,記載通りに自分が財産を相続したと第三者に主張することが可能になります。そのため,不動産を相続する内容であれば相続登記ができ,預金を相続する内容であれば名義変更ができます。
また,遺産分割協議書には,相続人間における紛争の蒸し返しを防ぐ効果もあります。口頭だけの合意にとどまる場合,合意内容を裏付けるものがなく,合意をしたかどうかが後で争いになり得ますが,遺産分割協議書を残しておくことで,合意をした事実や内容が証明でき,後から「合意していない」などの主張を受けずに済みます。
遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書作成時の記載については,以下のような点を踏まえて行うようにしましょう。
1.相続の発生に関する特定
被相続人の氏名,相続開始日(死亡日),本籍地といった被相続人の情報や,相続を受ける各相続人の氏名を記載しましょう。
2.遺産の表示方法
不動産の場合,登記の通りに表記しましょう。登記と異なる表記だと,遺産分割後の相続登記に影響を及ぼす可能性があります。
預貯金は,金融機関名,支店名,口座番号による表示が適切です。
3.署名押印
全ての相続人が氏名及び住所を自筆で記入し,実印で押印しましょう。
特に,押印は実印でないと後の相続登記や預金名義の変更ができなくなってしまうため,注意が必要です。
また,書面が複数枚に渡る場合は,同一の書面であることを証するために契印をしましょう。
4.印鑑証明書
実印での押印を証明するため,相続人全員分の印鑑証明書を添付しましょう。
遺産分割を有効に行うための注意点
遺産分割を行う場合,全員が円滑に協議できるのが最も望ましくはありますが,相続人の状況によっては慎重な対応をしなければ遺産分割の有効性に問題が生じかねず,注意が必要です。
具体的には,以下のような注意点が挙げられます。
①未成年者が含まれる場合
相続人に未成年者が含まれる場合,未成年者自身が遺産分割協議を行うことはできないため,親権者である父や母が代理する必要が生じます。
しかし,未成年者の父か母が被相続人の場合には,そうもいきません。父が被相続人の場合,母と子がともに相続人となり,母と子が利益相反の関係になるため,母が子の代理をするわけにはいかず,子の代理をするための特別代理人が必要となります。
また,未成年者の子が複数いる場合にも,複数の子の間で利益相反の関係が生じるため,未成年者のための特別代理人が必要です。
②所在の分からない人が含まれる場合
相続人の中に行方不明の人がいる場合,相続人全員での遺産分割協議ができないため,以下のいずれかの方法が必要です。
行方不明者がいる場合の対処法
1.失踪宣告する
→利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告を申立て,裁判所の審判で認められれば,行方不明者は死亡したものとみなされます。
2.財産管理人を選任する
→利害関係人が家庭裁判所に財産管理人の選任を申立て,選任された財産管理人を遺産分割協議に参加させることで,適法な遺産分割協議が可能になります。
③胎児が含まれる場合
胎児は,出生前の胎児の段階でも相続人となります。もっとも,死産となってしまった場合は相続人になりません。そのため,胎児を無視して遺産分割協議をした場合も,胎児を含めて遺産分割をした後に胎児が死産となった場合も,新たな遺産分割協議が必要となってしまいます。
胎児が含まれる場合の遺産分割は,胎児の出生を待って行うのが無難でしょう。
④成年被後見人が含まれる場合
成年被後見人が含まれる場合,代理人として成年後見人が遺産分割協議に参加する必要が生じます。もっとも,成年後見人も同様に相続人であることは珍しくありません。
成年被後見人,成年後見人ともに相続人の立場にある場合,両者間に利益相反が生じるため,成年後見人が遺産分割協議を代理することはできず,成年被後見人のため特別代理人が必要となります。
相続問題に強い弁護士をお探しの方へ
遺産分割は,相続問題の最も代表的なものであり,相続人皆様の今後のためにも適切に解決する必要があります。
後々紛争になることを防ぐためにも,対応に長けた弁護士へのご相談をお勧めします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,相続問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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