債務整理すると資格はなくなる?解雇される場合はある?資格への影響でお悩みの方へ弁護士が解説

●債務整理は自分の持つ資格に影響するか?

●自己破産は資格への影響を防げるか?

●個人再生は資格への影響を防げるか?

●任意整理は資格への影響を防げるか?

●債務整理で失った資格は取り戻せるか?

●債務整理の資格への影響で注意すべきことは?

というお悩みはありませんか?

このページでは,債務整理の資格への影響についてお困りの方に向けて,債務整理が資格に影響を及ぼすケースや,失った資格を取り戻せる場合などを解説します。

債務整理が資格に影響する理由

債務整理をすると,一定の資格や免許などを持って行う業務に制限の生じる可能性があります。
例えば,弁護士の場合,「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」について欠格(資格を有しない)としており,破産手続開始決定を受けると資格を失うことになります(弁護士法7条4号)。

このように,債務整理が一定の資格に影響を与えるかどうかは,それぞれの資格について規律した法令によって定められています。特定の資格が影響を受けるかどうかは,その資格について定めた法令の内容を確認することが必要になるでしょう。

影響を受ける資格の類型

債務整理の影響を受ける資格の類型としては,以下のようなものが挙げられます。

資格・職業制限の例

1.一定の士業
→弁護士,公認会計士,司法書士,社会保険労務士など

2.金融機関等の役員
→日本銀行役員,銀行の取締役,協同組合の役員など

3.公的な委員会の委員
→公正取引委員会の委員,教育委員会の委員など

4.登録や免許を要する職業
→宅地建物取引主任者の登録,貸金業の登録,酒類の販売免許など

5.一定の事業の許可
→建設業許可,廃棄物処理業許可,風俗営業許可等

法律関係に携わる士業や,金銭の管理に携わる地位・職業などが広く対象とされています。
一方,医師や看護師,薬剤師,保育士などは,著名な資格ではあるものの債務整理による制限が生じません。

自己破産は資格に影響するか

自己破産の場合,資格に直接影響することが懸念されます。というのも,一般的に債務整理が資格や職業に影響を与えるのは,「破産手続開始決定から免責許可決定までの間」であるためです。

上記で紹介した弁護士法7条4号は,「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を欠格者としていましたが,弁護士に限らず,資格に影響が生じる場合の具体的な定めは「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」というものです。
破産手続開始の決定を受けると,復権を得ない限りは資格を失った状態になる,ということになります。

そして,「復権」とは,制限された資格(権利)が回復することをいいます。この復権には,2つの種類があります。

復権の種類

1.当然復権
2.申立てによる復権

1.当然復権】

法律上当然に復権が生じる場合をいいます。当然復権となるのは,以下の4つの場合です。

当然復権となる場合

a.免責許可決定が確定したとき
b.債権者全員の同意により破産手続廃止が確定したとき
c.再生計画の認可決定が確定したとき
d.破産手続開始決定から10年経過したとき

a.免責許可決定が確定したとき

自己破産の手続きが無事に終了し,免責決定に至った場合を指します。
最も代表的な当然復権の類型です。

b.債権者全員の同意により破産手続廃止が確定したとき

返済の目途が立ったなどの理由で,債権者全員が「破産しなかったこと」にすることに同意した場合を指します。債権者にメリットがないため通常は考えにくいでしょう。

c.再生計画の認可決定が確定したとき

自己破産で免責許可が得られなかったため,個人再生手続に切り替えた場合の定めです。再生計画とは,債権者に対する返済のプランを指しますが,その再生計画の認可が下りれば復権となります。

d.破産手続開始決定から10年経過したとき

免責許可が得られなくても,破産手続の開始決定から10年が経過すれば復権します。ただし,「詐欺破産罪」で有罪判決を受けていないことが必要となります。
詐欺破産罪は,破産者が所有する財産を隠すなどして虚偽の破産を行う犯罪です。

2.申立てによる復権】

破産手続開始決定後,免責許可決定を得るまでの間に,相続を受けたなどして大金を取得し,借金を完済できる場合もあり得るところです。この場合,免責許可決定を受けることがないため,免責許可決定に伴う当然復権が生じず,復権するためには申立てをする必要があります。

このようなときに用いられるのが,申立てによる復権です。

以上の通り,復権にはいくつかの類型がありますが,最も代表的なものが免責許可決定の確定による当然復権です。そのため,債務整理が資格や職業に影響を与えるのは,「破産手続開始決定から免責許可決定までの間」となりやすいのですね。

なお,復権した場合,破産手続開始決定を理由とする資格制限が消滅するため,それまで通りに資格を用いた業務が可能になります。

ポイント
破産手続開始決定によって資格制限が生じる
復権すれば資格制限が消滅する
復権の代表例は免責許可決定の確定

個人再生は資格に影響するか

債務整理が資格に影響するかは,その資格について規律する法令の定めによりますが,現在,個人再生を理由に制限が生じる資格や職業はありません。そのため,個人再生は資格に影響しない,という結論になります。

そもそも,個人再生は,安定した収入が得られる人を対象にした債務整理手続であり,返済プランである再生計画も,安定収入を前提としたものです。そのため,個人再生によって資格に影響することは制度の性質上ないということになるでしょう。

任意整理は資格に影響するか

任意整理は,つまるところ当事者間の交渉にとどまります。債権者と交渉をすることで資格に影響が生じることはないため,任意整理が資格に影響することはありません。

資格への影響を防ぐために適切な手段は

資格への影響を防ぎたい場合,適切な債務整理の手段は自己破産以外のいずれか(個人再生又は任意整理)ということになるでしょう。特に,資格を活用した仕事をしている立場の場合,安定収入が見込まれやすいため個人再生と相性がいい状況にあることが多いかもしれません。

もっとも,自己破産をしても,復権すれば資格への影響は消滅します。復権までの期間は,一般的には免責許可決定までの期間ということになりますが,ケースにより数か月,といったところでしょう。
免責許可決定までの資格制限が受け入れられる場合は,自己破産も選択肢に入ってくるでしょう。

ポイント
資格に影響を及ぼすのは自己破産のみ
もっとも,その期間は破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで

資格への影響と解雇

自己破産によって資格への影響が生じた場合,資格への影響そのものは一定期間で終了するとしても,勤務先を解雇されてしまえば仕方がありません。そこで,自己破産と解雇との関係が問題になるところです。

この点,まず,自己破産を理由とした解雇は違法であるとの理解が通常です。自己破産は解雇の合理的な理由であると考えられていないため,自己破産を理由に解雇をすることは認められないのが一般的でしょう。
ただし,自己破産によって資格に影響を及ぼす場合は事情が変わってくる可能性もあり得ます。特に,制限された資格がなければ仕事ができない場合や,資格があることを前提に雇用した場合など,資格制限が雇用契約に重大な影響を及ぼすときには,自己破産(による資格制限)を理由とした解雇も適法になる可能性があるでしょう。

もっとも,個人再生や任意整理の場合は,資格への影響が生じないため,自己破産のように解雇が適法になるケースはほとんどないと思われます。

ポイント
自己破産そのものは解雇の理由にできない
自己破産に伴う資格制限が解雇の理由になる場合は仕事によりあり得る
個人再生や任意整理を理由にした解雇は基本的に違法

借金問題に強い弁護士をお探しの方へ

債務整理のうち,自己破産は本人の持つ資格を失わせることになる場合があります。
同時廃止で免責許可が見込まれる場合には,比較的影響は小さく済みやすいですが,それでも影響を防ぐことは困難であり,自己破産の前に十分な検討が必要です。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,借金問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決に向けたお力添えをすることが可能です。
お困りごとの際は,ぜひお気軽にご相談ください。

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