●債務整理で自宅や車を守りたいときはどうすべきか?
●自己破産で自宅や車を守れるか?
●個人再生で自宅や車を守れるか?
●任意整理で自宅や車を守れるか?
●自宅や車を守る場合の注意点は?
というお悩みはありませんか?
このページでは,債務整理で自宅や車を守りたいとお考えの方に向けて,債務整理で自宅や車を守るための方法や注意点などを解説します。
目次
債務整理で自宅や車を守る必要
債務整理は,債務者の債務と財産を取り扱う手続です。そして,自宅や自動車も重要な債務者の財産であるため,手続によっては自宅や車を手放した上で経済的な再建を目指さなければなりません。
しかし,自宅や車は生活の基盤となる財産であり,その経済的価値は他の財産よりも著しく高額であることが一般的です。そうすると,債権者のためには金銭に換価して配当に回すべきですが,債務者の経済的再建のためには奪ってしまう不利益があまりに大きい財産となり得ます。
そのため,債務整理の手続選択によっては,自宅や車を守ることができるようにしながら,経済的再建を目指すことも可能とされています。
ポイント
自宅や車は高価な財産であるため,債権者のためには金銭に換価して配当に回すべき
もっとも,自宅や車を奪われると債務者の生活が再建できなくなる恐れがある
方法①自宅や車を対象としない手続を使う
債務整理で自宅や車を守るためには,そもそも自宅や車を対象としない債務整理を行うことが一案です。債務整理には,債務の全てを対象としなければならない手続(自己破産,個人再生)と,債務の一部だけを対象とすることのできる手続(任意整理)があります。そのため,任意整理を実施の上,自宅や車と関係のない債務だけを対象とすれば,自宅や車を守りながらの債務整理ができることになります。
方法②自宅や車の処分を免れる制度を活用する
債務整理においては,財産の処分を要する手続(自己破産)と財産の処分を原則として要しない手続(個人再生,任意整理)があります。そのため,財産の処分を要しない手続を用いることで,自宅や車の処分を免れられる可能性があります。
もっとも,自宅や車はローンでの購入も多く,ローンがあるとそう簡単には自宅や車を守れません。ローンは,購入した自宅や車そのものを担保にしていることが多いため,返済ができない場合には担保が実行され,自宅や車を引き揚げられてしまう可能性が高いのです。
この点,個人再生の場合に限り,住宅ローン付きの自宅でも処分を免れる制度があります(いわゆる住宅ローン特則)。自宅の重要性を踏まえ,自宅を守りながら個人再生を実現する手段を法律が用意しているのですね。
ポイント 自宅や車を残す方法
自宅や車と関係のない債務だけを対象にする
財産の処分をしなくてもよい手続を用いる(ただしローンがあると不可)
住宅ローンについては,個人再生の場合に限り特別な制度がある
自己破産は自宅や車を守れるか
自己破産は,必要最低限の財産を除き一切の財産を処分した上で,引き換えに債務も免除することによって,財産も債務もない状態とすることを目指す手続です。そのため,自己破産後に所持していられる財産は,20万円以下のものに限られます。
この点,車に関しては,売却価格の査定を行い,20万円以下であることが示せれば,処分することなく自己破産が可能です。もっとも,自宅に関しては,明らかに売却価値がないような例外的場合を除き処分せざるを得ないため,自宅を守りながら自己破産するのは不可能と考えるべきでしょう。
ポイント 自己破産の場合
住宅を守ることは困難
車は売却価格が20万円以下であれば守ることが可能
個人再生は自宅や車を守れるか
①自動車について
個人再生は,基本的に財産の処分を必要としない手続であるため,個人再生をしたからといって自動車を手放す必要はありません。特に,一括払いで購入した場合や,ローンを組んで完済済みの場合など,自動車代金の支払が残っていない状況であれば,全く問題なく自動車を守ることが可能です。
しかし,以下の場合には,個人再生に際して自動車の処分が必要となります。
個人再生で自動車の処分が必要な場合
1.自動車ローンが完済前であり,
2.自動車に「所有権留保」がついている場合
自動車をローンで購入するとき,売主が「所有権留保」という担保を設定することがあります。これは,ローンが完済されるまでは自動車の所有権を売主にとどめておく(留保する)というものです。所有権留保があると,ローンの完済前は自動車の所有権が販売者側にあるため,所有権留保を実行することで自動車を引き上げることができます。これにより,代金の支払が滞るケースに備えるというわけですね。
ポイント
基本的に自動車の処分は必要ない
ローン完済前かつ所有権留保がついていると,自動車を失う可能性あり
②自宅について
自宅についても,代金が全額支払済みであれば処分は必要ありませんが,現実的にそのようなケースはほとんどないでしょう。
したがって,住宅ローンの支払が残っていることになりますが,住宅ローンの担保として自宅に抵当権が設定されているのが通常です。そのため,住宅ローンが支払えないとなると抵当権が実行されて住宅が強制的に売却させられ,ローンの支払に充てられてしまいます。
しかし,全てのケースでこのようにするのはあまり経済的に望ましくない上,債務者の経済的再建にとっても著しいマイナスになることが間違いありません。
そこで,個人再生に限り,「住宅資金特別条項」(いわゆる住宅ローン特則)という制度が用意されており,自宅を守りながら個人再生できる場合があります。
「住宅資金特別条項」は,住宅ローンを個人再生の対象となる債権から外し,住宅ローンだけはそれまで通り支払い続ける,という個人再生の制度です。この制度を利用するには,以下の要件を満たすことが必要とされます。
住宅資金特別条項の要件
1.対象の債権が住宅資金貸付債権(住宅ローンとしての貸付)である
2.住宅ローンの担保となっている住居が債務者所有の建物である
3.住宅ローンの担保となっている住居が債務者居住用の建物である
4.住宅が住宅ローン以外の担保になっていない
5.保証会社が代位弁済した場合,代位弁済日から6か月以内に申立てている
1.対象の債権が住宅資金貸付債権(住宅ローンとしての貸付)である
住宅資金貸付債権とは,以下の債権をいうと定義されています(民事再生法196条3号)。
住宅資金貸付債権とは
a.住宅の建設,購入,改良に必要な資金を貸付したものである
b.分割払いでの貸付である
c.債権を担保するため,住宅に抵当権が設定されている
つまり,一般的な住宅ローンを指していると理解してよいでしょう。
2.住宅ローンの担保となっている住居が債務者所有の建物である
住宅資金特別条項の対象となるのは,「住宅」に対するローンに限られますが,「住宅」とは債務者自身が所有する建物をいいます(民事再生法196条1号)。
3.住宅ローンの担保となっている住居が債務者居住用の建物である
「住宅」に該当するためには,債務者が所有するのみならず,債務者が自己の居住の用に供する建物でなければなりません(民事再生法196条1号)。
また,床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供されるものであることも必要です。自宅兼店舗といった形態の場合,「自宅」に当たらない可能性が生じ得るでしょう。
4.住宅が他のローンの担保になっていない
住宅が住宅ローン以外の債権の担保にもなっている場合,住宅資金特別条項を利用することができません(民事再生法198条1項)。これは,住宅が他の債権の担保にもなっていると,その債権者が担保を行使してしまい,結果的に住宅を守る手段がなくなってしまうためです。
この点,夫婦でペアローンを組んでいるときには注意が必要です。ペアローンの場合,住宅は夫の住宅ローンの担保であると同時に妻の住宅ローンの担保でもあるため,夫婦どちらの立場から見ても「住宅が他のローンの担保になっていない」場合に当たらないのです。
このときは,夫婦がそれぞれ個人再生を申し立てることで,住宅資金特別条項の利用を認められる可能性があります。
5.保証会社が代位弁済した場合,代位弁済日から6か月以内に申立てている
保証会社を付けている場合,金融機関は保証会社に対して支払を求め,保証会社が代わりに返済することがあります。これを「代位弁済」と言います。保証会社が代位弁済をした場合には,その弁済の日から6か月以内に再生手続開始の申立てをしなければ,住宅資金特別条項は利用できません(民事再生法198条2項)。
以上の通り,要件は複数に渡りますが,一般的な住宅ローンであって,住宅を住宅ローン以外の担保にしていなければ,条件を満たす可能性は非常に高いと思われます。
ポイント
自宅は住宅ローンが残っている限り抵当権が実行され競売されるのが原則
住宅資金特別条項を利用できれば,自宅を守りながら個人再生できる
任意整理は自宅や車を守れるか
任意整理は,債務者自身が債務を選択し,選択した債務について債権者と返済の交渉をする方法です。そのため,任意整理に当たって住宅ローンや自動車ローンを扱わなければならないわけではありません。
この点,債務整理で自宅や車を守れない場合があるのは,住宅ローンや自動車ローンの返済ができないと債権者に発覚し,債権者がローンの担保を実行するからです。そうすると,ローンの返済ができないと債権者に発覚しなければ,自宅や自動車を守りながらの債務整理が可能ということになります。
任意整理の場合には,住宅ローンや自動車ローンには手を付けず,ほかの債務だけ任意整理を試みることによって,自宅や車を守ることができるでしょう。
自宅や車を守るにはどの方法が適切か
自宅や車を守る方法としては,自己破産では不適切であり,個人再生か任意整理であれば守る余地がある,ということが分かりました。では,個人再生と任意整理のいずれが適切か,という問題になるところです。
この点,まず住宅がある場合には個人再生が適切でしょう。個人再生であれば,住宅資金特別条項を利用することで,住宅ローン以外の借金が大きく圧縮され,住宅ローンの返済が現実的になりやすいです。住宅ローンを避けて任意整理をしても自宅は守れますが,借金の減額幅には大きな限界があるため,任意整理をしたところで返済できるか不透明である,ということになりかねません。
一方,自動車ローンが残っており,自動車だけが問題であれば,任意整理を行うほかないでしょう。ローンの残った自動車は,所有権留保がついていない場合を除き個人再生で守ることができないので,自動車ローン以外の任意整理を試みる以外の手段がありません。
ポイント
住宅ローンがあるときは個人再生
自動車ローンだけが問題であれば任意整理
借金問題に強い弁護士をお探しの方へ
債務整理には,債務とともに財産を整理する手続となるものもあるため,自宅や車を守りたい場合には適切な手段を取る必要があります。
具体的な方法にはいくつかの選択肢があり,どの方法を選択するのが有益かはケースによりますので,ご検討の際は弁護士へのご相談をお勧めいたします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,借金問題に精通した弁護士が迅速に対応し,円滑な解決に向けたお力添えをすることが可能です。
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