熟年離婚を円滑に進める方法は?熟年離婚で損をしないための注意点は?弁護士依頼のメリットも紹介

●熟年離婚はどうすれば可能か?

●熟年離婚で生じやすい問題は?

●熟年離婚する場合に注意すべきことは何か?

●熟年離婚は弁護士に依頼すべきか?

という悩みはありませんか?

このページでは,熟年離婚についてお困りの方に向けて、熟年離婚が可能な場合やその方法争点になりやすい事項や対処法などを解説します。

熟年離婚とは

熟年離婚とは,長期間にわたって結婚生活を続けた夫婦が高齢になってから離婚することを指すのが一般的です。多くの場合,婚姻期間20~30年以上,年齢50代以上の夫婦の離婚が熟年離婚と呼ばれます。

熟年離婚の特徴は,その婚姻期間の長さと子どもの年齢です。
熟年離婚の場合,婚姻期間が長期間であるため,夫婦の共同生活で積み上げた財産が多く,多岐に渡るケースが多く見られます。財産分与の金額的規模も内容も相当であり,財産の全てを把握することも容易ではありません。退職金や年金分割など,仕事を終えた後のセカンドライフに関する金銭的解決が必要となることが多い点にも特徴がみられます。
一方で,子どもは成人しているなど独り立ちしている場合が多く,親権や養育費,面会交流といった子どもに伴う権利関係の争いが生じることは多くありません。夫婦間で金銭関係をどのように解決するか,という点に焦点が絞られやすい傾向があると言えるでしょう。

ポイント
熟年離婚とは,「長期間婚姻」していた「高齢夫婦」の離婚
金銭面で解決の必要な事項が多い一方,子どもに関する争点が生じにくい

熟年離婚の主な原因

熟年離婚は,長期間に渡る夫婦生活にピリオドを打つものであり,長期の夫婦生活では様々な出来事が起きているため,熟年離婚に至る原因は多種多様です。そのため,熟年離婚の原因を具体的に特定することは困難ですが,主な原因として指摘されやすい事項としては,以下のような点が挙げられます。

熟年離婚の主な原因

1.小さな不満の蓄積
→一つ一つの不満は小さなものでも,長年蓄積され続けた結果,大きなストレスとなって離婚の原因になることがあります。

2.子の独立
→子どもが独立するまで我慢していた場合や,子供が独立して夫婦二人の生活になることで夫婦間の問題が顕在化した場合など,夫婦関係を支えていた子の存在がなくなることで離婚に至る場合があります。

3.ライフスタイルや価値観の変化
退職後や老後の生活設計が夫婦間で大きく異なっていることが分かり,夫婦関係の継続が困難と感じた場合,離婚の原因となることがあります。

4.自己実現の追求
→夫婦の一方が家庭生活のために自分の夢やキャリアを我慢してきた場合,自分の人生を見直して夢やキャリアを追い求めるため離婚を希望する場合があります。

5.健康問題・介護負担
配偶者や親族の介護に関する負担が大きく,夫婦関係に耐えられなくなってしまう場合,離婚の原因となることがあります。介護に関する考え方のズレが離婚につながる場合も考えられます。

6.コミュニケーション不足
長年にわたるコミュニケーション不足の結果,夫婦関係が極度に冷え込み,離婚の原因になることがあります。コミュニケーション不足は,性格や価値観の不一致を話し合う機会も奪ってしまうため,配偶者への不信感につながり,離婚の原因となることも考えられます。

7.性関係の欠如
配偶者に対する性的な不満や性生活の不足が疎遠感などを生み,離婚の原因となることがあります。配偶者を性的な対象と見ることができなくなり,双方の不満から離婚に至ることも考えられます。

8.経済面の対立
老後の収入減少や,財産の分配をめぐる対立,家計の管理に対する考え方の違いなどが,婚姻関係の継続を困難にし離婚原因となることがあります。

9.生活リズムの違い
活動時間帯や活動内容,趣味や興味関心のズレから,共同生活に対して負担や不満の方が大きくなってしまい,離婚原因となることがあります。

10.裏切りの発覚
長期に渡る配偶者の不貞行為が発覚するなど,婚姻関係における裏切りが分かった結果,離婚の原因になることがあります。

11.親族関係の悪化
親族との同居問題や介護問題がトラブルにつながる場合や,特定の親族との関係悪化が夫婦関係に悪影響を与える場合などに,離婚の原因となることがあります。

熟年離婚の注意点 離婚の成否①離婚原因

離婚するためには,夫婦双方が離婚することで合意しているのでない限り,法律の定める離婚原因(法定離婚事由)に該当していることが必要です。この点,法定離婚事由は以下の通りです。

法定離婚事由

1.不貞行為 配偶者が不貞行為(不倫)を行った場合
2.悪意の遺棄 正当な理由なく配偶者との同居や扶養などを放棄する行為
3.3年以上の生死不明 配偶者が3年以上生死不明の場合
4.強度の精神病 配偶者が強度の精神病にかかり,婚姻の継続が困難な場合
5.その他婚姻を継続しがたい重大な事由 上記のほか,夫婦関係が著しく破綻している場合(長期別居など)

一般的に,熟年離婚の原因とされるものは,法定離婚事由に該当している可能性の低いことが見込まれます。熟年離婚の原因の多くは,価値観や性格のズレにとどまり,法定離婚事由のいずれにも当たらないためです。
法定離婚事由に当たる事情がない場合,裁判で争っても離婚は認められないため,これを踏まえた検討が必要になるでしょう。

熟年離婚の注意点 離婚の成否②離婚の手続

熟年離婚の多くは法定離婚事由のないケースであるため,離婚をするためには夫婦間で合意をすることが必要になりやすいでしょう。つまり,熟年離婚は基本的に協議離婚で決着させるべきである,ということになります。

熟年離婚の場合,通常は夫婦二人きりでの結婚生活を老後も続けるかどうか,という問題になります。そのため,二人きりの夫婦のどちらか一方にその気がなければ,離婚した方が互いにとって前向きな結論だということも間違いありません。
夫婦間でしっかりと協議をする場を持ち,老後の結婚生活を継続する意思がないことを表明するなどして,配偶者の理解を得る努力を尽くすのが有益でしょう。

ポイント 熟年離婚の成否
法律上の離婚原因に当たる場合は少ない
裁判では認められづらいため,協議離婚での決着が望ましい

熟年離婚の注意点 金銭面①財産分与

婚姻期間中に夫婦の共同の努力で得た財産は,原則として財産分与の対象となります。例えば,婚姻期間中に一方が労働をして獲得した賃金(収入)は,形式的には一方のみに対する支払ですが,夫婦関係においては夫婦共同の財産と理解されます。

この点,熟年離婚は婚姻期間が長いため,期間に比例して財産分与の対象となる財産も多くなる傾向にあります。財産分与は,その対象が多ければ多いほど困難な作業になりやすいと言われ,熟年離婚ではその傾向がより顕著です。その原因としては,以下のような点が挙げられます。

熟年離婚の財産分与に困難が伴う理由

1.財産の特定が困難

熟年離婚の財産分与で最も問題になりやすいのは,財産をすべて把握できているか,という点です。

長年の婚姻生活の中で,配偶者の把握しない財産がいくつも生じていることは珍しくありません。独自に開設した銀行口座や,購入した株式や不動産,金(ゴールド)や自動車といった動産まで,配偶者に知らせず手に入れた財産が保管されている場合は多く見られます。
もっとも,協議離婚で財産分与を試みる場合,財産の全てを特定するためには,事前に財産を把握しているか,配偶者に財産をすべて開示してもらうかしかありませんが,配偶者の開示にはあまり期待できないため,事前に財産を把握することが必要になりやすいです。

そのため,熟年離婚を考える場合には,離婚を切り出す前に可能な限り配偶者の財産を把握するよう努めるのが賢明でしょう。離婚協議に至ってからでは配偶者の協力は得られないものと考え,協議開始後の財産開示に依存しない動きを取るのが重要です。

2.金額換算が困難

財産分与に際しては,金銭や預金債権以外の財産はその金額(時価額)を特定しなければなりません。もっとも,財産の種類が多岐にわたる場合は,財産ごとに金額換算の方法も異なり,全体の財産額の計算が困難であることも少なくありません。
特に,時期によって価値が上がったり下がったりする財産や,取得してから長期間が経過した財産は,金額換算が困難なケースが多く見られます。

3.分与の方法選択が困難

財産の種類が多岐にわたる場合,全て金銭に換価してしまうのか,現物のまま分与するのかという点の協議が容易でないことも少なくありません。一切の財産を金銭に換えてその金銭を2分の1に分けることができれば,それほど容易なことはありませんが,金銭に換えるのが合理的でない財産や,そもそも金銭換算に時間のかかる(又は金銭換算が難しい)財産もあり,全てを金銭にする方法は現実的でないことがほとんどです。

そのため,夫婦間の公平を保ちながら合理的な財産分与をするためには,財産ごとの金額換算を正確にすることはもちろん,大小様々な財産をどのように分けると適切な解決に至るのか,綿密な検討が必要になるでしょう。

ポイント 熟年離婚と財産分与
全財産の把握は困難な場合が多いため,事前の特定が重要
金銭換算の必要が多くなると,それだけ正確な換算は難しくなる
様々な財産を公平に分ける方法を見つけることは容易でない

熟年離婚の注意点 金銭面②年金分割

年金分割とは,離婚の際に,婚姻中に夫婦が納めた厚生年金の保険料を公平に分け合う制度です。

厚生年金は,会社に勤める従業員(給与所得者)を対象にした年金制度で,その年金受給額は,保険料の納付月数と収入によって異なります。収入が高いほど,納付額も高くなり,年金受給額も高くなります。
そうすると,夫婦の一方に収入が偏っており,もう一方が専業主婦(主夫)である場合には,厚生年金の受給額に夫婦間の大きな差が生じてしまいます。もっとも,婚姻中に納めた厚生年金は,夫婦が共同生活の中から協力して支出したものであるため,婚姻中の納付分に対する年金は,一方のみに受給させると不公平な結論になってしまいます。
そこで,婚姻期間中のに納めた厚生年金に関して,夫婦間で公平に分け合うための制度が年金分割というものです。

熟年離婚の場合,特に給与所得者と専業主婦,という関係にあったケースだと,専業主婦側にとって年金分割は非常に重要な制度となります。専業主婦の場合,自分の収入がないことから自身の厚生年金は低額にならざるを得ませんが,年金分割をして配偶者分の年金を公平に分け合ってもらうことができれば,年金額は大きく上昇するためです。
また,給与所得者の配偶者である専業主婦の場合,3号分割という方法で配偶者の承諾なくして年金分割が可能であるため,年金分割に配慮するかどうかだけで結果が大きく変わることになるでしょう。

ポイント
配偶者が給与所得者である場合,年金分割への配慮が重要

熟年離婚は弁護士に依頼すべきか

熟年離婚については,夫婦間の協議が円滑に進む場合を除き,基本的には弁護士への依頼を検討するのが適切でしょう。その理由としては,以下のような点が挙げられます。

①離婚の成否に関して粘り強い協議を要する

熟年離婚は,不貞行為や家庭内暴力などの違法行為がある場合を除き,裁判で離婚を争っても認められない可能性が高いため,協議離婚を目指す必要があります。もっとも,配偶者としても,長期間の婚姻生活の末に突然熟年離婚を切り出され,円滑に対応するというのは困難なことが多いです。

この点,弁護士に依頼することで,夫婦間に弁護士という仲介役を設けることができるため,感情任せになることを防ぎ,理性的な協議が可能になりやすいでしょう。また,弁護士に依頼してまで離婚を希望する,という態度を明確にすれば,配偶者も頑なに離婚を断るのでなく,離婚に向けた前向きな協議に応じてくる可能性が高くなりやすいです。
さらに,離婚を拒否し続ける配偶者に対しては,弁護士が法的な観点や第三者の目線から粘り強く協議を試みることによって,その配偶者の方針が不合理であると理解してもらえる可能性が上がるでしょう。

②財産分与の対処次第で結果が劇的に変わる

熟年離婚の最大の問題は,財産分与であることがほとんどです
それは,財産分与の対象となる共有財産をどこまで把握できているかによって,財産分与の結果が決定的に変わりやすいためです。一方が多額の財産を隠し持ったまま財産分与が終われば,配偶者は財産分与の機会を不当に失ったまま離婚協議を終了せざるを得ないことになるでしょう。

弁護士に依頼すれば,財産分与を有益な結果とするために必要な行動やプランを提示してもらうことで,財産分与を適切に進めることが可能になりやすいでしょう。また,離婚を切り出す前に弁護士に依頼することで,離婚協議の前に財産を把握する方法が分かり,財産分与をより有利に行える可能性が高まります。

③財産額の計算に専門的処理を要する

金銭や預金債権など,金額の特定が容易なものを除き,金額計算に専門的な対応が必要となります。最も代表的な住宅一つをとっても,鑑定が必要になると思われますが,どこに依頼するのか,鑑定の結果は信頼できるのか,信頼できるかどうかをどのように判断するのかなど,適正な金額を確認するために必要な事項は山積みです。
このような財産額の計算を,当事者間ですべて行うのは非常に困難と言わざるを得ないでしょう。

この点,弁護士に依頼すれば,財産額の確認方法やそれを踏まえた協議の方法について,法的な観点から適切な助言を受けることができ,円滑な離婚協議につながります。また,夫婦間では相互に相手の主張する財産額に反論しやすい傾向がありますが,法的根拠を踏まえて相手に説明などを尽くすことで,相手との不要な争いや反論を回避することも可能になるでしょう。

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

熟年離婚は、法律上の離婚事由に該当するケースがあまり見られないため、基本的には当事者間の合意で離婚に至ることが必要になりやすいです。
また、婚姻期間が長い場合が多いため、財産面の解決に際して問題の生じることが多いという特徴もあります。
金銭問題は深刻化することが少なくないので、弁護士への依頼を積極的に検討することをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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