●どんな行為がモラハラに当たるか?
●モラハラはどんな場合に離婚の原因になるか?
●モラハラを原因に離婚する方法は?
●モラハラで離婚するためにすべき準備は何か?
●子どもへのモラハラや義父母からのモラハラでも離婚できるか?
という悩みはありませんか?
このページでは,モラハラを原因とする離婚でお困りの方に向けて,モラハラが離婚原因になる場合やその判断基準,モラハラで離婚する場合に必要な対応などを解説します。
目次
モラハラとは
モラハラ(モラルハラスメント)とは,精神的暴力行為を指します。倫理や道徳に反した嫌がらせ行為をいうことが一般的です。
夫婦間では,互いの距離や関係が近いことから,配慮が不足し心無い言動をしてしまうことが多くなりがちです。そのような言動がエスカレートしてしまうと,もう一方は婚姻生活に耐えることが難しくなり,離婚原因となる可能性が生じます。
モラハラに当たる行為
夫婦間でモラハラに当たる行為の具体例としては,以下のようなものが挙げられます。
1.否定的な言葉
配偶者を侮辱したり軽蔑したりする言葉を投げかける場合が代表例です。
また,相手の価値観や考え方を頭ごなしに否定することもこれに当たるでしょう。
2.無視や冷遇
話しかけても無視して返事をしないこと,相手が存在しないかのような態度を取ることなどが挙げられます。
3.過度な束縛や監視
相手の行動や交友関係に対して過度に干渉することが挙げられます。また,友人関係や親族付き合いを禁止するなど,配偶者を束縛しようとする行為も含まれるでしょう。
4.威圧や脅迫
怒鳴りつける,物を投げつける,離婚や子どもの存在をほのめかして言うことに従わせようとする,といった行為が挙げられます。
5.人格否定
相手の外見や能力の一部を執拗に指摘し,相手の価値が低いかのように批判することが挙げられます。また,過去の失敗を何度も持ち出して相手を非難する行為も含まれるでしょう。
6.馬鹿にする,笑いものにする
第三者のいる前で配偶者をけなしたり小馬鹿にしたりして,配偶者を周囲の笑いものの対象にする行為が挙げられます。
馬鹿にしたり笑いものにしたりする内容は,家庭内での行動や身体的特徴など様々です。
7.自分の非を認めない
配偶者が間違いを指摘しても謝罪などせず,逆切れしたり理不尽に責任転嫁したりする行為が挙げられます。
8.配偶者の分だけ家事をしない
配偶者の食事だけ用意しない,配偶者の洗濯物だけ手を付けないなど,わざと配偶者の分だけ家事を行わない行為が挙げられます。
モラハラが離婚原因になる場合
モラハラは,その内容・程度によって離婚原因となり得ます。具体的には,モラハラが「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当する場合,離婚原因となります。
「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかは,数量的な判断ができないため,個別の事情を総合的に考慮して決定されることになりますが,モラハラの内容や程度が著しいほど「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当しやすいことは間違いないでしょう。
具体的には,以下のような場合にモラハラが離婚原因として認められやすいでしょう。
モラハラが離婚原因になるケース
1.継続的な精神的苦痛
長期間に渡って言葉の暴力や無視などが繰り返され,精神的苦痛が増大している場合,離婚原因に当たりやすいと言えます。
また,配偶者が常に批判的な態度をとっており,自分の価値が否定されて続ける状況の場合,やはり精神的苦痛の程度が大きく,離婚原因に当たりやすいと考えられます。
2.健康被害
モラハラによる精神的なストレスの結果,不安障害やうつ病といった精神疾患が生じてしまう場合,婚姻生活が健康被害にまで至っていることから,離婚原因に当たりやすいでしょう。
また,モラハラが身体にも支障をきたし,日常生活が困難になれば,離婚原因に当たる可能性はより高くなると考えられます。
3.家庭内平和の破壊
モラハラが原因で家庭内の雰囲気が著しく悪化し,子どもなどの他の家族にも悪影響を及ぼしている場合,家族の生活を守るためにも離婚原因に当たると評価されやすくなります。
また,モラハラが原因で夫婦間のトラブルが絶えない場合,その夫婦関係は平和的な継続が困難と言わざるを得ず,やはり離婚原因に当たりやすくなると言えます。
4.著しい経済的拘束
配偶者への束縛がエスカレートした結果,配偶者の生活費を著しく制限するなど,経済的な拘束に発展した場合,配偶者が困窮した生活を継続することは困難であるため,離婚原因に当たる可能性が高くなります。
5.配偶者への恐怖
離婚をちらつかせたり子どもの連れ去りを示唆したりなどして,配偶者を従わせる脅迫行為が頻繁に行われた結果,配偶者への恐怖が募る状況に至ってしまった場合,夫婦間の安心した生活は継続が困難であるため,離婚原因に当たりやすくなるでしょう。
6.交友関係への悪影響
モラハラの結果,現実に交友関係がほとんどなくなってしまったり,自分の親族との付き合いが激減してしまったりするなど,周囲の人間関係への悪影響が生じる場合,配偶者が精神的不安のない生活を継続することは困難であるため,離婚原因に当たる可能性が高くなるでしょう。
モラハラで離婚するためにすべき準備
①モラハラでの離婚に準備を要する理由
モラハラを原因とする離婚は容易ではありません。その理由としては,以下のようなものが挙げられます。
モラハラを原因とする離婚が容易でない理由
1.配偶者が離婚に応じない
モラハラを原因とする離婚を配偶者に求めても,配偶者が自分の意思で同意することは期待できないのが通常です。モラハラに及ぶ配偶者は,夫婦間で自分が上位であるという上下関係を作り上げていることが多く,自分より下位にいるはずだと思っている相手からの離婚請求に従うのは,プライドが許さない行為であるためです。
そのため,モラハラを原因とする離婚の場合,協議離婚での解決が困難ということが大多数でしょう。
協議離婚で解決できない場合,家庭裁判所に離婚調停を申し立て,調停での解決を目指す必要が生じます。もっとも,調停は裁判所を介した協議であるため,やはり配偶者が応じるかどうかという問題が残ることになります。
調停でも離婚が成立しなければ,離婚裁判の提起が必要になるところです。裁判では,法定離婚事由があるか,という問題になるため,配偶者が承諾しなくても離婚は可能ですが,法定離婚事由に当たる程度のモラハラがあったと認めてもらえるかは個別のケースによるでしょう。また,離婚裁判は相当な長期間を要することが多いため,離婚が実現するためには多くの時間と手間がかかりやすいところです。
2.モラハラの証拠収集が難しい
モラハラは,基本的に家庭内で起きることであるため,第三者による特定や立証が困難です。また,夫婦間のやり取りで常にモラハラが起きているわけではないため,モラハラと認められるような出来事をピンポイントで記録化し,証拠とすることは容易ではありません。
さらに,モラハラをする配偶者には,家庭内での暴力的な態度と社会での親切な態度の二面性があるケースも多く,周囲にはモラハラの実態が正しく伝わらない場合も多く見られます。
モラハラという言葉自体が,数多くの事柄を内容に含んだ抽象的なものであるため,モラハラに該当するかどうかという判断基準も一概には定められない面があります。
モラハラでの離婚を主張する場合は,その主張を具体的な行為に落とし込んだ上で,その行為がたびたび行われていることの証拠を収集するのが有力な方針になりやすいです。もっとも,その証拠収集の困難さから,モラハラを原因とする離婚は容易でないところでもあります。
ポイント
モラハラでの離婚は,調停や裁判を見据えた立証の準備が必要
モラハラ行為を立証するための証拠収集は容易でない
②客観的証拠を残すこと
家庭内で起きるモラハラ行為は,客観的な証拠がなければ第三者にその存在を認めてもらうことは難しいのが実情です。そのため,個別のモラハラ行為に対して,その客観的な証拠を残すことは非常に重要でしょう。
録画や録音,メールなど,モラハラ行為を直接記録したものは,客観的証拠の代表例と言えます。その他,メモに残しておくことや,モラハラの過程で壊されたものを残しておくことも有用でしょう。
モラハラの客観的な証拠を残す際には,以下の点に留意することが有力です。
1.継続的な複数回の行為の証拠を収集すること
モラハラは,継続的な行動の数々によって徐々に配偶者の精神面を傷つけるものです。そのため,1回暴言を吐いた,1回無視された,というのでは,離婚原因に当たるとの評価は難しく,そもそもケンカなどとの区別ができないためモラハラに当たるかどうかも不明確になってしまいます。
そのため,モラハラに当たる行為の客観的な証拠を残すときには,継続的に,複数回に渡ってモラハラ行為が行われていると分かるような内容にするよう留意するのが有益でしょう。できれば,暴言であれば暴言,馬鹿にされるなら馬鹿にされるなど,同じ類型のモラハラ行為が継続的に行われていることが証拠化されていると,よりモラハラとの認定に近づきやすい傾向が見られます。
2.可能な限り具体的な内容であること
モラハラ行為を日記やメモに残す場合,その内容はどれだけでも具体的であることが望ましいです。例えば,「暴言を吐かれた」のではなく,「「だからお前はダメなんだよ,このバカ。お前は何もできないな」と言われた」というように,抽象的な言葉でまとめるより事実ありのままの内容を残すことが適切でしょう。
「暴言」というだけでは家庭内における言動の実態が分からず,配偶者も言い逃れや反論が容易になってしまいますが,具体的な内容を特定することによって,第三者にも状況が伝わりやすく,配偶者の言い逃れも難しくなると考えられます。
ポイント
モラハラの証拠は,継続的に同様の行為を繰り返したことが分かるように残す
メモや日記にする場合は,事実ありのままを具体的に残す
③別居を検討すること
モラハラ被害を受けて離婚を検討するという場合,離婚に先立って別居することも一案です。
別居することで,まず何よりその後のモラハラ被害を防ぐことができるため,精神的苦痛の緩和につながります。また,別居が長期間継続した場合,別居を理由に婚姻関係の破綻が認められ,離婚の実現に至る可能性も生じます。
モラハラを原因とする離婚で別居を検討する場合には,以下の事項に留意しておくとよいでしょう。
1.モラハラ行為の証拠化を済ませておく
別居後は,当然ながら家庭内のモラハラ行為が行われないため,家庭内におけるモラハラ行為の証拠は,別居前に確保してある状態であることが適切です。調停や裁判等において提出する証拠は,別居前に全て揃っていることが望ましいでしょう。
また,別居自体は,夫婦間の同居義務に違反する行為です。そのため,別居をする方が夫婦関係を壊した責任者であるとの評価も不可能ではありません。
そのため,別居に正当な理由があることを裏付けるため,あらかじめモラハラ行為を証拠化しておき,証拠化が済んだ後に別居することが有益です。
2.別居中のやり取りも記録しておく
モラハラが原因で別居した場合,別居後に配偶者から威圧的な言動が繰り返されるケースも少なくありません。別居を強く咎めるような配偶者の威圧的言動は,別居前にモラハラ行為があったことをうかがわせる重要な事情であるため,記録しておけるよう準備しておくことをお勧めします。
別居中のやり取りは,密室内での対面でのものと異なり,通話や文面といった形で記録に残りやすいものであるため,音声はこのように記録する,文面はこのように記録する,というように,事前に方法を決めておくことも十分に可能です。
3.婚姻費用を請求する
別居中の場合,生活費に問題の生じることが考えられます。そのため,別居後に婚姻費用の請求をすることを見込んでおくようにしましょう。
婚姻費用の請求は,当事者間での協議か調停の申し立てが手段となりますが,やはり当事者間での協議は現実的でないため,家庭裁判所に調停を申し立てる方法が有力です。別居後速やかに婚姻費用を請求する準備を整えた上で,別居に踏み切るのが円滑でしょう。
ポイント
別居することで,その後のモラハラ被害を防ぐことができる
長期間の別居は,それ自体が離婚原因になり得る
別居する場合,モラハラ行為の証拠化や婚姻費用の請求準備を事前にしておく
④金銭面の備えをすること
離婚後の生活に金銭面の不安があることから,モラハラ被害を受け続けても離婚に踏み切れないというケースは相当数見られます。そのため,離婚後の生活に向けた金銭面の備えは,可能な限り行っておくようにしましょう。
離婚原因の性質上,モラハラを受けていた方が引っ越しをし,新生活を行うことになりやすい傾向にありますが,転居費用や家具家電,消耗品などの用意が必要となります。離婚後の収入のあてを見つけておく,親族に協力を依頼するなどの方法で,離婚後の生活費が捻出できる見通しを立てておくのが適切でしょう。
また,離婚のために調停や裁判を行う際,弁護士に依頼する場合は,弁護士費用の金額や支払方法にも留意するのが望ましいところです。特に,調停や裁判といった法的手続に移行すると,弁護士費用も相応の金額となるため,弁護士費用の支払も踏まえた生活設計をしておくことをお勧めします。
子どもへのモラハラが離婚原因になるか
配偶者が子どもに強く当たり散らすなど,配偶者に対してでなく子どもに対して行われるモラハラもあり得ます。多くの場合,子どもが自分の言うことを聞かないという理由で,子どもへのしつけと称して度が過ぎたハラスメント行為に及ぶことが問題になります。
この点,親がしつけであると考えていたとしても,その程度が不合理であって,子どもが配偶者に恐怖心を抱くような状況にあれば,子どもに対するモラハラ(精神的虐待)と評価することが可能です。
そして,子どもに対するモラハラの結果,夫婦の婚姻関係が継続できない状況に至ったのであれば,配偶者への直接のモラハラでなくても離婚原因になることは十分に考えられるでしょう。
なお,子どもへのモラハラによって離婚を試みる場合は,まず子ども自身の安全確保が最重要です。離婚を切り出すことで子どもに更なる被害が生じないよう,子どもを連れて別居するなど,モラハラが深刻化しないための手当てをしてあげてください。
義父母からのモラハラが離婚原因になるか
嫁姑問題に代表されるように,配偶者自身でなくその親(義父母)からモラハラ行為を受けることも考えられます。
この場合,配偶者との関係が破綻しているわけではないので,法的には直ちに離婚原因となることは考えにくいところです。義父母からのモラハラのみを理由に裁判手続で離婚を請求しても,認められるケースは少ないと思われます。
もっとも,配偶者が義父母によるモラハラを認識しながら放置していたり,義父母のモラハラに加担していたりすれば話は大きく異なります。配偶者が義父母の行動を抑止しなければ家庭生活は円満に続けられない以上,その努力を配偶者が怠るのは立派な離婚原因に該当し得るためです。
そのため,義父母からのモラハラによる離婚を検討する場合は,その事実を配偶者に共有の上,配偶者の対応を詳細に記録化,証拠化する方針が有力でしょう。
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モラハラは、外からは分かりづらい家庭内での問題であることが多く、当事者間でモラハラの有無に争いがある場合は離婚原因になるかどうかの判断も困難なケースが見られます。
そのため、モラハラによる離婚は、十分な準備と適切な手順を尽くすことが重要ですが、離婚事件に精通した弁護士とともに進めることで、適切な動きが可能になります。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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