●相手が離婚を請求してきたときにはどうすべきか?
●離婚を請求されたら弁護士に依頼すべきか?
●離婚の請求を受け入れなければならない場合は?
●離婚の請求を断れる場合は?
●相手から一方的に離婚されないために取るべき手段は?
●相手からの離婚の請求に備えておくべきことは?
という悩みはありませんか?
このページでは,相手が離婚を請求してきたときに弁護士へ依頼すべきか,という点でお困りの方に向けて,相手が離婚を請求してきたときの対応方法や判断基準,弁護士依頼のメリットなどを解説します。
目次
相手が離婚を請求してきたときに検討すべきこと
配偶者が離婚を請求してきた場合,ケースによっては突然の出来事に冷静さを失ってしまいがちですが,まず最初に以下の各事項を検討するようにしましょう。
①自分は離婚したいか
相手が離婚を請求してきている以上,相手は離婚をしたいことが明らかです。一方,自分が離婚したいか離婚したくないか,という点は,最初に明確にするのが適切でしょう。
自分も離婚をしたいという場合には,離婚するかどうかの争いはなく,後は離婚に際しての条件面のみのお話になります。そこでは,離婚に至った責任がどちらにあるのか,又はどちらにもないのか,といったことを踏まえ,離婚の条件を協議することが必要になってくるでしょう。
この点,離婚に至った責任が自分にはないのに,自分に不利益な条件で離婚をするメリットはありません。そのため,「離婚は了承するが条件は自分の希望通りにすることを求める」というスタンスが有力な選択肢になります。
一方,自分は離婚を希望せず,婚姻関係の継続を求める,ということであれば,離婚するかどうか,という入口段階で当事者間の主張が対立していることになります。その場合,離婚原因があるかどうか,具体的には婚姻関係が破綻していると言えるのか,という点が主な問題点となるでしょう。
離婚を希望しないにもかからわず,離婚の条件を検討してもあまり実益はありません。まず最初に離婚したいかどうかを明確にすることは,その後の方針や検討を間違えないためにとても重要なステップになります。
ポイント
自分も離婚したいのであれば,離婚の条件を有利にするための検討が必要
離婚したくないのであれば,離婚原因(婚姻関係の破綻)があるかという問題になる
②相手の請求に根拠があるか
相手が離婚を求めてくる場合,離婚の請求が正当であることの根拠を示してくることが多いでしょう。また,離婚の請求に合わせて自分に有利な条件を要求してくる場合は,離婚原因がこちらにあることを前提にしているので,離婚原因にこちらの責任がある,との主張をしてくることが通常です。
この点,相手の主張する離婚の原因は,法的には離婚が認められるような性質のものでないことも多く見られます。特に,弁護士に依頼せず本人が請求してきている場合,その請求が法的に正当かどうかを考慮した上でされている可能性はほとんどないでしょう。そうすると,離婚を希望しない場合に相手の主張する離婚原因を鵜呑みにして離婚に応じるのは,明らかに不合理であって取り返しのつかない不利益につながる恐れの大きい行為です。
また,離婚原因を作った責任がこちらにある,という相手の主張も,相手の一方的な言い分にとどまることが少なくありません。相手の主張に事実でない内容が含まれていないか,事実を捻じ曲げた上で本来存在しない責任を背負わせようとしてきていないか,という点は十分に確認するのが適切です。
ポイント
離婚の原因として相手の主張する内容が法的な離婚原因に当たるか
事実を捻じ曲げて離婚原因の責任を自分に背負わせようとしていないか
離婚請求された場合に弁護士へ依頼するメリット
相手から離婚を請求された場合,既に法的な検討や対応が必要な段階にあることが明白であるため,基本的に弁護士へ依頼するのが合理的でしょう。
以下では,離婚請求をされた場合に弁護士へ依頼する具体的なメリットを解説します。
①相手の請求を法的に評価・判断できる
相手から離婚を請求されている場合,その請求内容に対する評価・判断が不可欠ですが,弁護士に依頼することによって,弁護士に相手の請求を法的に評価・判断してもらうことが可能です。この評価・判断を自分で行うとなると非常に骨の折れる作業になりますが,弁護士に依頼をすれば,弁護士に検討を委ねて弁護士から説明を受けるだけで足りるので,その労力も正確さも雲泥の差ということができるでしょう。
相手の請求に法律の用語が含まれていたり,相手の請求が内容証明郵便などのきっちりした形式で行われたりすると,その内容も法的な正当性があるように感じてしまいがちですが,当然ながら請求の法的な評価は用いる用語や郵便の方法では決まりません。あくまで,離婚を請求する主張の根拠が法律上の要件に沿ったものであるか,という内容によって判断されるべきものであるため,法律の専門家に吟味してもらうのが最も適切です。
②適切な対応手段を考えてもらえる
弁護士に依頼すれば,相手の請求が法的に妥当なものか,という判断を前提に,具体的な対応手段についても適切なものを選択してもらうことが可能です。
例えば,相手の主張する離婚の原因が法的には離婚を認めるような内容でない場合,端的に相手の請求を断るのみで足り,自分から何らかの法的な手続を取る必要はないでしょう。一方,離婚すること自体には争いがないものの,相手が財産を勝手に持って行ってしまっている,という場合だと,適正な内容の財産分与を積極的に求めていくべきことが見込まれます。
さらに,相手が調停を申し立てている場合には,理由なく調停を無視することは不適切であるため,調停の手続上で適切な主張を尽くすことが望ましいでしょう。
以上のように,離婚を請求する相手の主張に応じて適切な手段は異なるため,弁護士を通じて個別のケースで適切な対応手段を判断してもらい,対応を委ねるのが合理的です。
③逆に相手の責任を追及できる場合もある
相手が離婚を請求してきている場合,実は相手の方が責任を負うべきであるのに,その責任をうやむやにしようとしてきていることもあり得ます。自分で離婚の原因を作っておきながら一方的に離婚を申し出る場合などが典型例でしょう。
相手に責任がある場合,相手の請求に対応するのみでなく積極的に相手の責任を追及することが適切です。例えば,相手が勝手に家を出てしまったのであれば,離婚の協議より先に婚姻費用を支払ってもらい,別居中の生活を保障してもらうべきでしょう。また,相手の不貞行為が原因なのであれば,まずは離婚より先にその不貞行為の責任について慰謝料などの負担をしてもらうことを話し合うべきと考えられます。
弁護士に依頼をすることで,相手の請求に対して受け身になることなく,積極的に相手の責任を追及することも容易になります。特に離婚原因に対して相手の落ち度が大きいと思われる場合は,相手の責任を追及する目的で弁護士に動いてもらうことも検討するのがよいでしょう。
離婚の請求を受け入れなければならない場合
相手から離婚の請求をされたとき,その請求に根拠がある場合は,離婚を受け入れなければならないことが通常です。具体的には,法定離婚事由に該当する事情がある場合,離婚の請求に根拠がある,ということになるでしょう。
民法に定められた法定離婚事由は,以下の通りです。
1.不貞行為 配偶者が不貞行為(不倫)を行った場合
2.悪意の遺棄 正当な理由なく配偶者との同居や扶養などを放棄する行為
3.3年以上の生死不明 配偶者が3年以上生死不明の場合
4.強度の精神病 配偶者が強度の精神病にかかり,婚姻の継続が困難な場合
5.その他婚姻を継続しがたい重大な事由 上記のほか,夫婦関係が著しく破綻している場合(長期別居など)
相手が法定離婚事由に該当する事実を主張しており,その事実が確かに存在するというのであれば,離婚の請求は受け入れるのが賢明と言えます。
このときは,離婚の原因もこちら側にあることが通常なので,離婚の条件を少しでも不利益の小さいものにすることを目指すのが適切でしょう。もっとも,自分から条件の緩和を申し入れていくのは困難がつきまとうため,弁護士に依頼の上,弁護士を通じて交渉を試みるのが望ましいところです。
ポイント
法定離婚事由に該当する事実がある場合は離婚を受け入れるべき
離婚を受け入れるべき場合は,離婚の条件を少しでも有利にするための弁護士依頼を
離婚に応じたくない場合にしておくべきこと
相手は離婚を請求しているものの離婚に応じたくない場合には,相手から一方的に離婚届が提出されないよう備えることが重要です。具体的には,「離婚届の不受理申出書」を提出し,相手の勝手な離婚届の提出を阻止するようにしましょう。
離婚届は,夫婦間で離婚の合意ができた後に,夫婦と証人2人が署名等した上で,住居地や本籍地のある役所に提出することになります。そのため,離婚届の提出は夫婦の合意の存在が大前提となるものです。
もっとも,離婚届を受理する役所は,必要な記載さえできていれば離婚届を受理しており,本当に夫婦の双方に離婚意思があるかを確認するものではありません。そのため,夫婦の一方が勝手に離婚届を作成・提出したとしても,形式的には離婚が成立してしまう可能性があります。
もちろん,離婚の意思がない離婚届は無効ですが,後から無効であると主張するのは調停や訴訟といった裁判手続が必要になり,非常に負担が大きくなってしまいます。
離婚届の不受理申出書は,役所にあらかじめ提出することで,その後に離婚届が提出されても受理しないよう取り扱ってもらうことができる書面です。離婚するかどうかが争いになっている場合は,相手の一方的な離婚届を阻止するためにも離婚届の不受理申出書を確実に提出しましょう。
なお,不受理の申し出は,基本的に本人が役所に出向き,対面での書面提出や身分確認が必要になります。具体的な手続は,居住地の役所に確認するようにしましょう。
離婚届の不受理申出書 書式
ポイント
離婚届は,夫婦の離婚意思を確認することなく受理される
離婚届の不受理申出書を出せば,配偶者が勝手に離婚届を出しても受理されなくなる
離婚請求に備えるため行っておくべきこと
相手からの離婚請求が予想される場合,相手に金銭を請求する準備を行っておくことが有益になりやすいでしょう。離婚に際しては,別居中の婚姻費用や離婚後の養育費など,継続的な支払が生じやすいですが,相手と対立する立場にある以上,相手が必要な金銭を円滑に支払ってくれることはあまり期待できません。そのため,後に金銭を請求した場合に,確実に回収できるよう備えておくことはとても重要です。
具体的には,配偶者の勤務先や,給与の振込先口座を把握しておくことが望ましいでしょう。
離婚に伴う金銭的な請求は,配偶者の収入をあてにして行うことが非常に多く見られます。収入は継続的に生じるものであり,収入からであれば確実な回収が期待できるためです。
しかも,給与の差し押さえは一般的に4分の1を限度にしか認められませんが,婚姻費用や養育費の未払いによる給与の差し押さえは給与の2分の1まで行うことができ,給与を引き当てにするメリットが大きくなっています。
近い将来に配偶者から離婚を切り出される可能性を想定する場合には,配偶者の勤務先や給与口座を把握することで,円滑に相手から金銭を回収する準備をすることが有益でしょう。
ポイント
離婚請求への備えとして,相手から金銭を回収できるよう準備することが重要
配偶者の給与を差し押さえられるようにしておく
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
相手が離婚を請求してきた場合には,まず離婚を受け入れたいか受け入れたくないか,受け入れたくない場合には離婚を断れるケースなのか,という点を検討する必要あるでしょう。
また,条件によっては離婚を受け入れる,という判断もあり,お話は想像以上に複雑になり得ますので,弁護士へのご相談やご依頼は積極的に考えるべき状況と言えます。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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