離婚後は氏と戸籍に要注意!離婚後に希望の氏を名乗る方法,離婚後に子どもと同じ戸籍に入る方法を完全網羅

●離婚後,自分の氏はどうなるのか?

●離婚後の氏を選択したい場合はどうすべきか?

●離婚後,自分の戸籍はどうなるのか?

●離婚後の氏や戸籍について,どんな手続きが必要か?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚後の氏や戸籍についてお困りの方に向けて,離婚後の氏の選択方法離婚後の戸籍に関して必要な手続などを解説します。

離婚後の氏①婚姻前後で氏が変わらなかった場合

婚姻前後で氏が変わらなかった(結婚前の氏を名乗り続けていた)場合,離婚をしてもそのままの氏を名乗り続けることになるため,氏に関する手続は特に発生しません。

離婚後の氏②婚姻で氏が変わった場合の原則

婚姻により氏が変わり,婚姻中は配偶者の姓を名乗っていた場合,離婚をすると旧姓に戻るのが原則です。離婚により旧姓に戻ることを「復氏」と言います。

ただし,婚姻とともに配偶者の両親と養子縁組を結んでいた場合は,養子縁組も解消しなければ復氏が生じません。養子縁組に伴う氏の変更が維持されているためです。そのため,養子縁組を解消する「離縁」の手続をあわせて行うことで,旧姓に戻ります。

離婚後の氏③婚姻で氏が変わり,離婚後も名乗る

【離婚後3か月以内】

婚姻で氏が変わり,離婚後も婚姻中の氏を名乗り続けたい場合には,「婚氏続称」の届を行うことで,離婚後も婚姻中の氏を名乗ることが可能です。この届は,「離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)」と呼ばれます。

手続としては,離婚の際に称していた氏を称する届を夫婦の本籍地や届出人の居住する自治体の役所に提出することが必要となります。離婚届と同時に提出できるため,離婚に際してあらかじめ検討しておくのが有益でしょう。

なお,この手続を行う場合は,自身を筆頭者とする戸籍を新たに作る必要があります。婚姻中の氏を名乗る自分の戸籍は,新規のものだからですね。

【離婚後3か月経過後】

離婚後3か月が経過すると,「婚氏続称」の届を行うことはできなくなります。その場合,婚姻中の氏を名乗りたいと考えるときには,家庭裁判所へ「氏の変更許可」を申し立てることが必要です。

もっとも,氏の変更許可は,これを定める戸籍法上,「やむを得ない事由」が必要となります。単に変更をしたいというのみでは許可されないことに注意が必要です。一般的には,社会生活に難が生じていたり,いじめや差別の原因になっていたりする場合に初めて許可される性質のものとなっています。

なお,離婚に伴う場合は,他のケースよりも変更許可されやすい傾向にはあります。離婚に際して姓が変わりやすいところ,実際に姓を選択してみないと実生活上の問題点は把握しづらく,婚氏続称が認められる短い期間制限内に判断させるのは酷である場合も多いためです。
ただ,家庭裁判所への申立てを要するため労力が大きく,許可までの時間もかかりやすいものである上,そもそも裁判所の許可が得られない可能性もあるため,積極的に用いる手段ではないでしょう。

ポイント
離婚後3か月以内には婚氏続称の届により婚姻中の氏を名乗ることが可能
離婚後3か月経過後は家庭裁判所に氏の変更許可を申し立てることが必要
氏の変更許可は不確実であるため,期間内に婚氏続称の届を行いたい

離婚後の戸籍①自分が筆頭者だった場合

婚姻中に自分が筆頭者である戸籍に入っていた場合,離婚後もその戸籍にとどまり続けることになります。そのため,戸籍についても特に必要な手続はありません。

配偶者の方は,離婚によってその戸籍から離れることになるので,戸籍の移動が生じた旨が記載されます。配偶者は,当該戸籍との関係では「除籍」という扱いになります。

離婚後の戸籍②配偶者が筆頭者だった場合の原則

配偶者が筆頭者である戸籍に入っていた場合,離婚によってその筆頭者の戸籍から除籍されることになります。そして,除籍後には婚姻前の戸籍に戻るのが原則です。これを「復籍」といいます。

もし,婚姻中に父母が別の戸籍へ転籍していた場合,父母が転籍した先の戸籍に入ることとなります。

離婚後の戸籍③配偶者が筆頭者だったが復籍しない

離婚後には,復籍するのでなく,新しい戸籍を作ってその戸籍に入ることも可能です。離婚届を提出する際に,復籍するのか新たな戸籍を作るのかを選択することになります。
また,婚姻前の戸籍が除籍されており,復籍ができない場合にも,新しい戸籍に入ることになります。

新たな戸籍を作る場合は,「新戸籍編製の申し出」を行う必要があります。この申し出に際して,新しい本籍地を特定し,その本籍地で新戸籍を編製してもらうことになります。

復籍せず新しい戸籍に入るケース
1.婚姻前の戸籍が除籍されていた場合
2.新戸籍編製の申し出をする場合
3.婚氏続称の届を提出した場合

新戸籍を作った後で復籍することはできないことに注意

ポイント
自分が筆頭者の場合,戸籍に変化なし
配偶者が筆頭者だった場合,婚姻前の戸籍に戻る(復籍する)のが原則
復籍を希望しない場合,新戸籍編製の申し出をすれば新しい戸籍に入る

子どもの戸籍

子どもの戸籍も,氏と同じく当然には変更されません。何も手続をしなければ,子の戸籍は婚姻中の戸籍にとどまり続けることとなります。

そのため,筆頭者でない方の親が親権者となる場合,何もしなければ親子が同じ戸籍に入ることはできませんが,子どもと親の氏が異なるままだと,子どもは親の戸籍に入ることができません。この場合,子どもの氏を親と同じ氏に変更する手続が必要となります。

具体的には,子の氏を変更するため,氏の変更許可を申し立てることが必要です。氏の変更許可により,子の氏を親と同じものに変更してもらえれば,子どもを親の戸籍に入籍させることが可能になります。

ただし,子が入る戸籍は,親が筆頭者であるものでなければなりません。そのため,親が復籍をしてその親(子から見て祖父母)の戸籍に戻っている場合,その戸籍へ更に子が入ることはできません。
これは,戸籍法上,戸籍が「夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに」編製するものであるためです。戸籍は夫婦と子ごとのもの,つまり親子2代に限ったものでなければならないため,孫を含めた3世代の戸籍を編製することはできないのです。

ポイント
筆頭者が親権者の場合,親子ともに婚姻中の戸籍にとどまり続ける
親と子の氏が異なると,親子が同じ戸籍に入ることができない
親と子を同じ戸籍に入れるには,子の氏の変更許可が必要
子は,その親が復籍した戸籍には入ることができない。親を筆頭者とする戸籍が必要

離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ

離婚後の氏や戸籍は,直ちに金銭的な影響を及ぼす問題ではありませんが,自分や子の身分に影響する非常に重要な事項です。
離婚に際しては,氏や戸籍をどうするのが望ましいか,十分に検討されるのが適切でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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