●自分が子どもの父親ではないと思うが,どうすべきか?
●嫡出否認とは?親子関係不存在確認とは?
●嫡出否認はどのような場合に必要か?
●親子関係不存在確認はどのような場合に必要か?
●申立ては誰が行うのか?
●申立てはいつまでに行う必要があるか?
●自分が父親でなかった場合,子の母親に何か請求できるか?
という悩みはありませんか?
このページでは,嫡出否認や親子関係不存在確認についてお困りの方に向けて,嫡出否認や親子関係不存在確認の制度や申立てが必要なケース,手続などを解説します。
目次
嫡出否認とは
嫡出否認とは,法的に嫡出子(婚姻中の夫婦間に出生した子)と推定される子が実際には夫の子ではない場合に,その嫡出子としての地位を否定する制度をいいます。
現在の法律上,自分の嫡出子とされる子の条件は,以下の通りです。
嫡出推定される場合
1.婚姻中に出生した子
2.離婚後300日以内に出生した子
ただ,妻が婚姻中や離婚後300日以内に出生したとしても,それがすべて自身の子であるとは限りません。生物学的な父親は母親の夫でなく他の男性である,という可能性も否定はできないでしょう。
そこで,嫡出子でありながら現実の父親が母親の夫と異なるという場合に,子の嫡出子としての地位を否定するのが嫡出否認です。
親子関係不存在確認とは
親子関係不存在確認とは,嫡出子とは推定されない立場の子と父親との間に親子関係が存在しないことを争うための制度をいいます。
嫡出子と推定される場合には嫡出否認の手段を取ることができますが,そうでない場合にはこの親子関係不存在の確認を訴え(裁判手続)で求めることにより,法律上の親子関係を争うことが可能です。
ポイント
嫡出子と推定される子との父子関係を争う手続が嫡出否認
嫡出子と推定される子以外との父子関係を争う手続が親子関係不存在確認
嫡出否認の注意点
①申立ての権利がある人
嫡出否認について申立ての権利がある人は,以下の通りです。
1.父
2.子
3.母
4.前夫
②申立ての相手方
誰が相手方になるかは,誰が申し立てるかによって以下のように変わります。
申し立てる人 | 相手方になる人 |
父 | 子又は親権を行う母 |
子 | 父 |
母 | 父 |
前夫 | 父及び子又は親権を行う母 |
③期間制限
それぞれの権利者について,期間制限が以下のとおり定められています。
申し立てる人 | 期間制限 |
父 | 父が子の出生を知った時から3年以内 |
子 | その出生の時から3年以内 |
母 | 子の出生の時から3年以内 |
前夫 | 前夫が子の出生を知った時から3年以内 |
④調停前置
嫡出否認について,調停前置主義の対象であるため,嫡出否認の訴えを提起する前に嫡出否認調停を申し立てることが必要です。
親子関係に関する問題については,できる限り話し合いで柔軟に解決する方が望ましいとの観点から,まず調停を実施し,調停では解決できない場合に限り訴訟での解決が可能である,という制度になっているのです。
親子関係不存在確認の注意点
①父子関係を争う子の範囲
親子関係不存在確認の訴えは,「推定の及ばない嫡出子」及び「非嫡出子」と父との親子関係を争う手続です。
【推定の及ばない嫡出子】
推定の及ばない嫡出子とは,婚姻中に出生した子(嫡出子)でありながら,母親の夫と血縁関係にある可能性が現実的に存在しない(推定を及ぼすことができない)子を言います。
例えば,以下のような例が挙げられます。
推定の及ばない嫡出子の例
1.夫の長期海外出張,受刑,別居
2.夫に生殖機能がない
3.夫婦間の性交渉が全くない
4.子の血液型が夫婦間ではあり得ない
推定の及ばない嫡出子も嫡出子ではあるため,出生届が出されれば,母親と婚姻関係のある夫との間の嫡出子となります。しかしながら,この結論は明らかに不合理であるため,父子関係を争う手段を認める必要があります。
推定の及ばない嫡出子について父子関係を争う手続は,嫡出否認の訴えでなく親子関係不存在確認の訴えによることが可能です。嫡出否認の訴えは,提訴期間や申立権者の範囲等の面で制限があるため,そのような制限のない親子関係不存在確認の訴えの方が,申し立てる人にとっては有利であると言えます。
【非嫡出子】
非嫡出子とは,嫡出子でない子,つまり婚姻関係にない男女間に生まれた子を言います。非嫡出子は嫡出否認の対象でないため,父子関係の争いは親子関係不存在確認の方法により行われることになります。
②申立てができる人
親子関係の不存在を確認する利益がある人は,申立てが可能です。子,母,戸籍上の父のほか,その親子関係について利害関係を持つ人が含まれます。
③期間制限
法律上の期間制限はありません。
④調停前置
親子関係不存在確認も,嫡出否認と同じく調停前置主義の対象となるため,親子関係不存在確認の訴えを提起する前に親子関係不存在確認調停を申し立てることが必要です。
調停において客観的な血縁関係の有無が明らかになれば,公開の訴訟まで行わずとも非公開の場で家族関係を解決できる可能性も十分にあるため,まずは調停を行い,調停で解決しなかった場合にのみ訴訟を行うことができるとされています。
ポイント 嫡出否認と親子関係不存在確認の違い
項目 | 嫡出否認の訴え | 親子関係不存在確認の訴え |
提訴権者 | 子,母,父,前夫 | 子,母,父,利害関係ある第三者 |
提訴期限 | 子の出生(又は出生を知って)から3年以内 | なし |
父子関係 | 推定される嫡出子 | 推定の及ばない嫡出子,非嫡出子 |
「推定されない嫡出子」の取り扱い
従来の民法では,婚姻の成立から200日以内に生まれた子は,「推定されない嫡出子」されていました。推定されない嫡出子とは,婚姻関係にある男女間に生まれた子(嫡出子)であるものの,嫡出推定がされない子を指します。
2024年改正前の民法では,婚姻の成立から200日以内の子は,その婚姻した夫の子とは推定されませんでした。そのため,夫と妻が婚姻した状況下で出生したにもかかわらず,嫡出推定はされない,という事態が生じていたのです。
しかし,2024年の民法改正により,婚姻中に生まれた子は,200日以内であってもその婚姻した夫の子であると推定されるようになったため,推定される嫡出子となりました。
この「推定されない嫡出子」であった子については,民法改正前は親子関係不存在確認の対象でしたが,改正後は嫡出否認の対象になります。
親子関係がないと分かった場合の母親の責任
嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えなどを通じて,戸籍上の父親とされる人物と子との間に血縁関係のないことが分かった場合,それは母親の不貞行為を意味することが通常です。そのため,父親は母親に対して不貞行為に基づく慰謝料の請求ができる可能性が高いでしょう。
もっとも,夫婦関係の継続を予定している場合,夫から妻に慰謝料を請求しても家庭内で金銭が循環するだけであって,実益がない可能性には留意が必要になります。この点,不貞相手への請求ができれば実益が増しやすいですが,不貞相手が特定できるとは限らないため,慰謝料請求を行うべきかどうかは,その後の家族関係も踏まえて慎重に検討するのが望ましいと考えられます。
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
男性の場合,自身と子に親子関係がない可能性があるケースでは嫡出否認や親子関係不存在確認といった手続を行う必要があり得ます。
これらの手続を怠った場合,取り返しのつかない不利益が生じるため,子との親子関係に疑問が生じた場合は,慎重にこれらの手段を検討することをお勧めします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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