養育費はいつどうやって決める?いつから受け取れる?再婚した場合に養育費はどうなる?養育費の悩みを解消したい人へ

●養育費とはどんなお金か?

●養育費の取り決めはいつ行うのか

●養育費は要らないと言ったが後から請求できないか?

●養育費の金額はどのように決まるのか?

●養育費はいつからもらえるのか?いつまでもらえるのか?

●養育費の支払が滞ったら,相手の給料からもらえないか?

●離婚後に生活が苦しくなった場合,養育費はどうなるか?

●再婚した場合,もらっている養育費はどうなるか?

という悩みはありませんか?

このページでは,離婚の際の養育費問題でお困りの方に向けて,養育費の内容や手続養育費の支払時期や方法などを解説します。

養育費とは

養育費とは,子が成人するまでの生活費,教育費,医療費などを含む子の養育に必要な費用を指します。親は,自分の子の生活を保障するとともに,その成長を支える義務を負いますが,親が子を養育するこの義務は,夫婦が離婚しても親子が別居してもなくなるものではありません。
そのため,離婚する夫婦の間に未成年の子がいる場合,子を監護しない方の親は,子に対する義務を金銭の支払という方法で果たすことになりますが,これが養育費です。

養育費の具体的内容

1.生活費
子の食費、衣服費、住居費、日常生活に必要な費用

2.教育費
学校の授業料、教材費、制服代、部活動費、塾や習い事の費用

3.医療費
医療保険の自己負担分、予防接種費用、病気やけがの治療費

4.その他の費用
交通費、レジャー費、習い事や特別な活動の費用など

養育費を決める時期

養育費の決定は離婚の条件でないため,養育費を決めずに離婚することも可能です。しかしながら,後の紛争を防ぐためにも,子の生活を守るためにも,養育費は離婚や親権の解決と並行して決定すべきでしょう。

なお,養育費の請求権は,一般的な債権と同じく「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」で時効により消滅します。債権者である方の親が権利行使できると知らなかった,ということは考えにくいため,基本的には毎月の支払日から5年が経過するごとに,順次消滅時効にかかると理解するのが適切でしょう。

また,調停や審判,裁判上の和解や判決で確定した養育費の請求権は,消滅時効の期間が5年でなく10年となります。ただし,判決などによって時効期間が延長する債権は,その時点で確定するもののみなので,将来の支払い分には影響しません。判決などの時点で既に弁済期が来ている養育費は10年に,それ以降の養育費は原則通り5年の時効になります。

ポイント
養育費を決めずに離婚することもできるが,通常は離婚と並行して決定すべき
養育費請求権は5年で時効消滅。判決などで確定した場合には10年に伸長

養育費の請求権放棄

両親の離婚協議にあたって,離婚後の親権者が養育費の請求権を放棄した場合,養育費は請求されないのか,という問題の生じることがあります。
一例としては,離婚を急ぎたいがために,話し合いを早期に終了させる目的で「養育費は要らない」とした場合などが挙げられるでしょう。

この点,養育費の請求権は,子が親に対して持つ「扶養請求権」の一つですが,扶養請求権は放棄をすることが法律上認められていません。そのため,両親の間で養育費を放棄する合意をしたとしても,その合意は無効であると考えることが一般的です。

もっとも,夫婦間で養育費の請求権を放棄する合意があった場合,その合意に至る事情については十分に確認の必要があります。具体的には,合意が全体として子の利益であれば,必ずしもすべて無効とする必要がない場合も考えられるところです。

ポイント
親が養育費請求権を勝手に放棄することはできない
両親間で養育費放棄の合意をしても原則として無効
もっとも,合意に至る事情や内容を十分に確認することになる

養育費の金額算定方法

養育費の金額は,両親が合意して決定できるのであれば,その金額に従う形での解決が可能です。もっとも,養育費の金額について一切の目安なく決定することは容易でありません。

そこで,家庭裁判所裁判官を研究員とする司法研究を通じて「養育費算定表」が作成・公表されています。養育費の計算は厳密に行うと非常に複雑で時間がかかるため,離婚協議などの際に簡単な目安とできるよう,裁判所が公開しているものです。
調停などの裁判実務でも,養育費算定表に沿った養育費の計算が一般的です。

養育費算定表リンク
(表1~表9)

(参考)表1

この算定表の見方は,以下の通りです。

1.横軸が権利者(請求する方)の年収額
2.縦軸が義務者(支払う方)の年収額
3.横軸と縦軸の交わる点に該当する金額が養育費(月額)

(例)

権利者が年収300万円の給与所得者,義務者が年収700万円の給与所得者
14歳以下の子が1名のみの場合

表1を用いると,縦軸と横軸の交わる点は6~8万円のため,適切な養育費の目安は6~8万円となります。

なお,養育費算定表はあくまで一般的な目安であるため,現実の養育費がこれを上回る場合もあり得ます。
一例としては,子の学費が一般的なもの以上に発生する場合が挙げられます。私立学校に通学させたい,習い事や塾を充実させたい,という方針だと,比例して必要な養育費は大きくなるため,養育費算定表にはとどまらない金額になることも考えられます。このような場合は,当事者間で方針を共有し,合意する限り,全く問題ないでしょう。
ただ,育児方針に相違があるなど,両親の主張が異なる場合には,養育費算定表を超える金額を請求したい方がその根拠を説得的に主張することが必要になると思われます。

養育費の支払を受けられる期間

養育費の支払を受けることのできる期間の始期と終期は,以下の理解が一般的です。

始期
請求をした時
終期
子が18歳になった時

①養育費支払の始期

養育費は遡って請求することができないため,支払を受けられる期間の始期は,請求をした時となります。
現実的には,離婚の際にあわせて養育費の取り決めをするのが適切でしょう。離婚と同時に養育費の取り決めをしていれば,それから請求までの空白期間が生じないため,養育費の請求に漏れがなくなります。

一方,離婚後に養育費を請求する場合は,請求を行ったことの根拠が残る方法を取ることが適切でしょう。当事者間で行う場合には,「内容証明郵便」及び「配達証明郵便」の利用が有力です。内容証明郵便とは,郵便局が郵便の存在及び内容を証明してくれる郵便,配達証明郵便とは,郵便局が配達された事実を証明してくれる郵便をいい,これらを用いることで請求した事実の根拠を獲得することが可能です。
また,調停を申し立てる場合は,極力早期に行うのが適切でしょう。調停の手段で請求した場合には,支払を求められる期間の始期が調停を申し立てた時期ということになるためです。

②養育費支払の終期

養育費の支払の終期は,基本的に子が成人するまでとなります。2022年4月より,子は18歳で成人することが定められているため,原則としては18歳に至るまでということになるでしょう。

もっとも,必ず18歳までに限定されるわけではありません。具体的には,以下のような取り決めも考えられます。

養育費終期の例

1.大学進学を予定している(又は在学中)場合
大学卒業までの間

2.「成人」の年齢を両当事者が20歳と考えている場合
子が20歳に至るまでの間

養育費の支払が滞った場合

調停や審判,裁判といった方法で,裁判所を通じて養育費の支払いを定めた場合,その支払いが滞った場合には,裁判所を介してその支払を促したり強制したりする手段を講じるのが有力です。具体的には,以下のような方法が考えられます。

【履行勧告】

家庭裁判所の手続で決まった金銭の支払義務が守られない場合,家庭裁判所がその義務を履行するよう勧告することができます。これを「履行勧告」と言います。
履行勧告は,手続としては勧告(勧めること)にとどまるため,強制力はありません。履行勧告が無視されたとしても,養育費の支払を強制することはできない,ということになります。

履行勧告は,「より大きな不利益が生じる前に払ってください」というメッセージと理解するのが適切でしょう。

【履行命令】

家庭裁判所の手続で決まった金銭の支払が滞った場合,権利者が家庭裁判所へ申し立てることにより,家庭裁判所から義務者へ「履行命令」を行うことが可能です。履行命令は,裁判所が一定の期間を定めて義務者に履行を命令するもので,命令に反した場合には「10万円以下の過料」という行政罰の対象となる恐れがあります

もっとも,履行命令もまた,支払そのものを強制する効力まではありません。ペナルティを伴う命令によって,支払をより強く促す手続,という理解が適切でしょう。

【強制執行】

確定判決又はこれと同一の効力を持つ手続で決定した養育費の支払が滞った場合,強制執行によって養育費を回収することが可能です。

強制執行による回収は,多くの場合預金か給与を差し押さえて行うことになりますが,給与債権については,一般的な強制執行よりもより多くの差押えが認められています。
具体的な内容は以下の通りです。

給与債権の差押え範囲

原則給与の4分の1まで
養育費の場合給与の2分の1まで

養育費は,子の生活を守るための大切な費用であるため,子を守る重要性を踏まえ,給与の2分の1までの金額を差し押さえることができるとされています。
ただし,履行勧告や履行命令に比して手続負担が重いため,最終手段とする場合が多く見られるところです。

ポイント

履行勧告家庭裁判所から促してもらえるが,強制力なし
履行命令家庭裁判所に命令してもらえる。過料のペナルティはあるが強制力なし
強制執行財産を差し押さえて強制的に回収できる。給与は2分の1まで可能

養育費が増減する場合

養育費は,金額を定めた時点における事情を考慮して決定されるものであるため,後になって事情変更が生じた場合,増額又は減額が認められる場合も考えられます。
増減を求める場合は,裁判所に調停を申立てた上で,条件の変更をしなければ当事者間の公平を失することなどを十分に主張することが適切です。

養育費が増減する事情としては,以下のようなものが挙げられます。

養育費の増減事由

1.義務者の収入変化
義務者の収入が大幅に増加した場合、養育費の増額が認められることがあります。逆に、収入が減少した場合、減額が認められる可能性があります。

2.権利者の収入変化
権利者の収入が減少し、経済的に困窮している場合、養育費の増額を求めることができます。逆に、権利者の収入が増加した場合、減額が認められることがあります。

3.子の養育費用の増加
子が成長するに従い、教育費や医療費などの必要な費用が増加した場合、養育費の増額が認められることがあります。

4.特別な事情
子の病気や障害など、特別な事情が発生した場合、養育費の増額が必要になることがあります。

再婚と養育費の関係

養育費を受け取る側が再婚し,新たに家計を支える人が現れた場合,子の養育を取り巻く状況は大きく変わります。また,養育費を支払う側に養育すべきほかの子ができた場合,養育費の支出に関する状況も大きく変わるでしょう。
そこで,再婚と養育費の関係について検討する必要があるケースは少なくありません。

①権利者の再婚

権利者が再婚し,再婚相手が子と養子縁組をした場合,その子の養育は,権利者と再婚相手の二人で行うべきことになります。そのため,義務者が養育費を支払い続ける必要はないとの判断になりやすいでしょう。

もっとも,再婚相手が子と養子縁組をしていない場合,再婚相手に子を養育する義務(扶養義務)は生じないため,養育費に変動の生じないことが通常でしょう。

②義務者の再婚

義務者が再婚して新たに子どもができたり,義務者が再婚相手の子と養子縁組をしたりした場合,義務者にとって養育すべき子の数が増えることになります。
そうすると,義務者の負担できる養育費は小さくならざるを得ず,養育費を減額し得る事由に当たると言えるでしょう。

離婚の養育費に強い弁護士をお探しの方へ

養育費は,離婚後でも子どもを十分に養育するために大切の費用です。
離婚は,子どもにも大きな影響を及ぼす出来事であるため,子どものために養育費の十分な検討を行うことは,親にとって不可欠と言えます。
とはいえ,具体的な金額や内容を当事者間で決めるのは容易ではありません。養育費に強い弁護士へのご相談,ご依頼をお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。

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