●離婚時に確認が必要な医療保険とは?
●離婚したら保険証が使えなくなるのか?
●離婚時に医療保険について何もしないとどうなるのか?
●医療保険に関する手続の方法は?
という悩みはありませんか?
このページでは,離婚時の医療保険の問題についてお困りの方に向けて,医療保険の種類や内容,離婚時に注意すべき医療保険の手続などを解説します。
目次
医療保険とは
医療保険とは,病気やけがをした際にかかる医療費を補助するための保険制度をいいます。日本では,公的医療保険制度が充実しており,すべての国民がこの医療保険に加入することになっています(国民皆保険制度)。
医療保険が存在することによって,国民が過大な負担なく医療を受けることができるようになるため,公的医療保険を適切に利用できる状態であることは極めて重要と言えます。
医療保険の種類
離婚の際に問題となる医療保険は,基本的に公的医療保険を指します。公的医療保険は,医療機関で診察を受ける際に用いる保険証という形で利用することが通常です。
公的医療保険を利用することで,医療費を一定の割合で保障してもらうことが可能です。
公的医療保険には,以下のような種類があります。
公的医療保険の種類
1.国民健康保険
2-1.社会保険(健康保険組合)
2-2.社会保険(協会けんぽ)
3.共済組合
1.国民健康保険
国民健康保険は,社会保険に加入しない人を対象とした公的医療保険です。代表例としては,自営業者や無職の人などが挙げられます。
国民健康保険の主な特徴は以下の通りです。
運営主体 | 市町村・国民健康保険組合 |
保険証 | 市町村の発行する国民健康保険証 |
保険料の負担 | 全額自己負担 |
加入手続 | 市町村役場で行う |
基本的に市町村が運営しており,加入者は住民票のある居住地で加入することになります。
2-1.社会保険(健康保険組合)
社会保険は,会社員などの給与所得者が加入する公的医療保険です。この社会保険は,運営主体によって二つの種類が挙げられます。
そのうち,大きな企業の場合には独自に運営を行っている場合があります。このような企業では,「健康保険組合」を設立し,その健康保険組合にて社会保険を運営しています。
2-2.社会保険(協会けんぽ)
中小企業など,健康保険組合のない企業に勤める場合は,「全国健康保険協会」が運営する「協会けんぽ」に加入する形で社会保険に加入します。各企業の健康保険組合と,全国健康保険協会の協会けんぽをあわせて,社会保険と呼ばれることが一般的です。
なお,社会保険の主な特徴は以下の通りです。
運営主体 | 健康保険組合又は協会けんぽ |
保険証 | 健康保険組合や協会けんぽが発行する保険証 |
保険料の負担 | 事業主と被保険者が折半 |
加入手続 | 企業や職場が手続を行う |
3.共済組合
公務員や学校の教職員などが加入する公的医療保険です。
共済という名の通り,公務員や教職員の相互扶助を目的とするもので,医療保険のほか年金基金なども運営されています。
加入する共済組合は,その立場によって,国家公務員共済組合,各種地方公務員共済組合,私立学校教職員共済組合などがあります。
医療保険の手続を怠った場合のデメリット
離婚した場合,医療保険上の立場に変更が生じるため,医療保険を継続利用するために必要な手続を取る必要が生じます。手続を放置してしまうと,保険未加入の期間が生じてしまうため,以下のようなデメリットが生じ得ます。
医療保険の手続を怠るデメリット
1.治療費の全額負担が必要になる
2.未加入期間分の保険料を遡って請求される
3.行政罰の対象となる場合がある
なお,全額負担が発生しても,後から加入手続をすれば保険負担分を受け取ることはできます。また,未加入期間分の保険料が請求されるのは,最大2年間のみです。
もっとも,これらの不利益を受けるメリットはないため,医療保険の手続は怠らず確実に行いたいところです。
手続① 国民健康保険→国民健康保険
代表例としては,自営業の夫を世帯主とする国民健康保険に入っていた専業主婦の妻が,離婚後すぐには就職しない,という場合が挙げられます。
この場合,役所で運営している国民健康保険について必要な変更を行うため,役場への手続が発生します。
居住する自治体が変わる場合には,転出元の役所と転出先の役所で,それぞれ以下の手続が必要となります。
居住自治体が変わる場合
1.転出元で「国民健康保険の資格喪失手続(脱退手続)」を行う
2.転出先で「国民健康保険の加入手続」を行う
一方,転居をしないなど,居住する自治体が変わらない場合は,その自治体の中で「世帯主の変更手続」を行う必要があります。夫が世帯主であったところから,自分を世帯主とする立場に変更することとなります。
ポイント
自治体が変わる場合は転出元での資格喪失と転出先での加入
自治体が変わらない場合は世帯主の変更
手続② 社会保険→国民健康保険
代表例は,会社員である夫の被扶養家族として,夫と同じ社会保険に加入していた妻が,離婚後にはすぐに就職しない,という場合が挙げられます。
この場合,社会保険の立場が失われたことを居住する自治体に示し,自治体の健康保険組合に加入することが必要です。具体的な流れは以下の通りです。
社会保険から国民健康保険に変わる場合の手続
1.加入保険又は企業担当者から社会保険の「資格喪失証明書」を取得する
2.自治体の役場へ,自身を世帯主とする健康保険加入手続を取る
国民健康保険の加入には,資格喪失証明書を提出することが必要になります。
手続③ 国民健康保険→社会保険
代表例としては,自営業の夫を世帯主とする国民健康保険に入っていた専業主婦の妻が,離婚後すぐに就職して給与所得者として働きだす,という場合が挙げられます。
離婚後に新しく社会保険に加入する場合は,基本的に勤務先を通じた手続となります。そのため,勤務先との間で求められた手続を行えば足りるでしょう。
社会保険への加入ができた後には,居住する自治体の役場で国民健康保険の脱退手続を行います。
手続④ 社会保険→別の社会保険
代表例としては,会社員である夫の被扶養家族として,夫と同じ社会保険に加入していた妻が,離婚後に就職して別の企業の社会保険に加入する,という場合が挙げられます。
この場合も,やはり就職する勤務先を通じての手続になるところです。
勤務先での手続には,配偶者の勤務先の扶養から外れることが必要であるため,配偶者の勤務先で手続をしてもらい,社会保険の「資格喪失証明書」を取得しましょう。「資格喪失証明書」を勤務先に提出することで,勤務先の新たな社会保険に加入する手続をしてもらうことができます。
離婚・男女問題に強い弁護士をお探しの方へ
全員が医療保険に加入する日本では,医療保険について適切な手続が必要です。そして,離婚時には医療保険上の立場が変わる人が多く,新たな手続が必要になりやすいでしょう。
離婚の検討をする場合は,あわせて医療保険についての検討もするようにしましょう。必要に応じて離婚事件に精通した弁護士へのご相談が有力です。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,離婚・男女問題に精通した弁護士が迅速対応し,円滑な解決を実現するお力添えが可能です。是非お気軽にご相談ください。
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