●被害者参加制度とは何か?
●被害者参加ができる事件は?できる人は?
●被害者参加は何ができるのか?
●被害者参加しても刑罰は変わらないのか?
●被害者参加者の負担を軽減する制度はあるか?
というお悩みはありませんか?
このページでは,犯罪被害の被害者参加制度を知りたい方に向けて,被害者参加制度の内容や特徴,刑罰の影響などについて解説します。
目次
被害者参加制度とは
被害者参加制度とは,犯罪の被害者やその遺族が刑事裁判に参加し,自らの意見を表明し,裁判の過程に関与することができる制度です。これは,被害者の権利や感情を尊重し,司法制度における被害者の位置づけを強化するための措置として設けられているものです。
被害者は,通常の刑事訴訟においては,その進行を傍聴席で見守るほかなく,被害者側が意見を述べたり裁判手続に関与したりする余地はありませんでした。その結果,刑事訴訟の判決に被害者側の心情が十分に反映されない場合があるとの懸念が指摘されていました。
そのような問題意識から,2008年に新しく開始された被害者配慮のための制度が,この被害者参加制度です。
被害者参加制度の内容 ①対象事件
被害者参加制度の対象となる事件は,被害者に相当な損害が発生している一定の重大事件に限定されています。具体的には以下の通りです。
被害者参加制度の対象事件
①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
(例)殺人罪,傷害罪,傷害致死罪,強盗致死傷罪,不同意性交等致死傷罪など
②一定の重大な性犯罪
=不同意わいせつ罪,不同意性交罪,監護者わいせつ罪,監護者性交等罪
③業務上過失致死傷罪
④逮捕罪・監禁罪
⑤略取・誘拐・人身売買の罪
=未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等の罪
⑥犯罪行為に②~⑤の犯罪行為を含む罪
(例)強盗不同意性交等罪など
⑦上記①~⑥の未遂罪(未遂罪の処罰規定があるもののみ)
⑧自動車事故に関する罪(※)
=過失運転致傷罪,過失運転致死罪,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(これらを無免許運転で行った場合を含む)
※危険運転致死傷は,危険運転が故意の犯罪行為であるため,①により被害者参加制度の対象となる
被害者参加制度の内容 ②参加できる人
被害者参加ができる人は,被害者やその遺族と,依頼を受けた弁護士といった範囲に限定されます。具体的な内容は以下の通りです。
被害者参加ができる人(被害者参加人)
①被害者
②(被害者死亡又は心身に重大な故障がある場合)配偶者,直系親族,兄弟姉妹
③被害者の法定代理人(親権者・成年後見人等)
④上記①~③の人から委託を受けた弁護士
被害者参加制度の内容 ③参加する方法
被害者参加制度を利用を希望する場合,被害者参加人は検察官を通じてその意思を表明することになります。具体的な流れは以下の通りです。
①参加申出 検察官に対して被害者参加をしたい旨申し出る
②裁判所への通知 検察官が裁判所に申出のあった事実を通知する
③被告人側の意見 裁判所が被告人及び弁護人の意見を確認する
④裁判所の決定 被害者参加を認めるかどうか裁判所が決定する
現実的には,検察官から被害者側に必要な説明がなされ,検察の方から意向を確認される場合が大多数でしょう。被害者側が自分たちから積極的に参加の意思を表明しなければ機会を逃す,ということは考えにくいところです。
裁判所の判断基準
・犯罪の性質
・被告人との関係
・その他の事情
→上記を考慮して相当と認めるときは,参加を認める
もっとも,対象事件の被害者参加人に当たる人物であれば,通常は参加が認められます。
被害者参加制度の内容 ④参加時にできること
被害者参加人が刑事訴訟の際にできることは,以下の通りです。
被害者参加のときにできること
①裁判に出席する(刑事訴訟法316条の34)
②検察官の権限の行使に関して意見を述べる(刑事訴訟法316条の35)
③証人尋問を行う(刑事訴訟法316条の36)
④被告人質問を行う(刑事訴訟法316条の37)
⑤事実又は法律の適用について意見を陳述する(刑事訴訟法316条の38)
①裁判に出席する
傍聴席でなく,法廷の中に入り,裁判に出席することができます。
検察官の隣や後ろに席を設け,着席する方法を取るのが通常です。
②検察官の権限の行使に関して意見を述べる
検察官による証拠の提出や,裁判の結果に対する意見(論告・求刑)に関して,意見を述べることが可能です。
③証人尋問を行う
証人尋問の際,一定の条件の上で,自ら尋問を行うことが可能です。
具体的な条件は以下の通りです。
証人尋問の条件
1.情状に関する事項であること(情状証人のみ)
2.裁判所が許可すること
証人尋問を希望する場合は,検察官の尋問後,尋問事項を明らかにして検察官に申出を行います。
この申出は,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。
④被告人質問を行う
被告人質問の際,一定の条件の上で,自ら被告人に質問することが可能です。
具体的な条件は以下の通りです。
被告人質問の条件
1.被害者参加人が最後に意見を述べるために必要であること
2.裁判所が許可すること
なお,証人尋問と異なり,尋問事項は情状に関する事項に制限されません。
被告人質問を希望する場合は,あらかじめ,質問事項を明らかにして検察官に申出を行わなければなりません。証人尋問と異なり,検察官の尋問後に申し出ることはできません。
申出があった場合,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。
⑤事実又は法律の適用について意見を陳述する
検察官や弁護人は,証拠の取調べが終了した後,事実や法律の適用について意見を述べます。検察官の意見は論告,弁護人の意見を弁論と呼びます。
被害者参加人も,裁判所の許可を得て,事実や法律の適用について意見を述べることが可能です。
被害者参加人の意見は,意見の要旨を明らかにして検察官に申し出ます。申出があった場合,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。
被害者参加をする意味はあるのか
被害者参加を行ったとしても,参加した事実や内容が判決に反映されなければ,あまり実益がないようにも思われます。
この点,実際に被害者参加がなされ,意見陳述等を行った事件の判決では,その量刑判断に関する理由として被害者参加の内容が具体的に指摘される傾向にあります。
例えば,被害者遺族が辛い心情を述べたことや,強い処罰感情を有していることを指摘した上で,被告人の量刑を軽くすべきでない方向で斟酌している例は多数見られるところです。
加害者に対する十分な刑事処罰を求める場合は,被害者参加制度の活用は非常に有力な手段であると言えるでしょう。
参加する被害者への配慮
被害者参加を希望する被害者にとって,その心理的負担は重大な場合が少なくありません。そのため,被害者参加人を保護する目的で以下のような配慮の制度が設けられています。
①法廷における配慮
【付添人制度】
被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合,不安や緊張を緩和するのに適当な人物を被害者参加人に付き添わせることが可能です。
【遮蔽措置】
1.被害者参加人の心理的圧迫を防ぐ必要がある場合,被害者参加人と被告人との間についたてを設け,遮蔽する措置をとることが可能です。
2.被害者参加人の心身の状態や名誉に対する影響等を考慮すべき場合には,被害者参加人と傍聴人の間についたてを設け,遮蔽する措置を取る事が可能です。
【代理人弁護士】
被害者参加人は弁護士を代理人とすることが可能です。代理人となった弁護士は,被害者参加人の代わりに裁判に参加するため,心理的負担を受ける必要がなくなります。
②その他の配慮
【被害者支援員】
検察庁には,犯罪被害者の支援に携わる被害者支援員が配置されており,被害者側の負担を軽減させるための配慮がなされています。
【被害者ホットライン】
被害者による検察庁への問い合わせを容易にするため,被害者専用の問い合わせ方法として被害者ホットラインが設置されています。
犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ
被害者参加制度は,刑事裁判に被害者側の気持ちを反映させることのできる特徴的な制度であり,被害者が受けたダメージへの配慮から生まれた被害者の権利とも言えるものです。
加害者への刑罰の決定に関与したい,という場合には,被害者参加制度の利用を積極的に検討することが有力でしょう。
また,弁護士を通じて行うことも可能です。弁護士に依頼することで負担を軽減しながら被害者参加する手段もご検討をお勧めします。
さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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