告訴の意味や方法,告訴と被害届・告発との違い,告訴を選択すべき場合や弁護士依頼すべき場合など,弁護士が徹底解説

●告訴とは何か?被害届とは違うのか?

●告訴と告発は何が違うか?

●告訴を選択するべき場合は?

●告訴を受理してもらえないことがある?

●告訴するとどうなるのか?

●告訴を取り下げることはできるか?

●告訴するときには弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害を受けた場合の告訴についてお困りの方へ,告訴の意味や内容告訴を試みる場合の方法や注意点などを解説します。

告訴とは

告訴とは,以下のように定義されています。

告訴とは
被害者その他一定の者が,捜査機関に対して,犯罪事実を申告し犯人の訴追を求める意思表示

①告訴できる人(主体)
主な告訴権者は,以下の通りです。

主な告訴権者
・被害者
・被害者の法定代理人(親権者・後見人)
・被害者死亡の場合はその親族(配偶者・直系親族・兄弟姉妹)

②告訴の内容

・犯罪事実を申告すること
・犯人の訴追を求めること

告訴と被害届の違い

告訴と被害届は,いずれも捜査機関に犯罪事実を申告する手続ですが,以下のような違いが挙げられます。

①申告する内容

被害届は,捜査機関に犯罪の事実を申告するものですが,それ以上に何かを求める意思表明が含まれた手続ではありません。文字通り,被害を届けるのみの手続となります。

一方,告訴の場合,犯罪事実を申告するとともに犯人の訴追(処罰)を求める意思表示が含まれます。犯人の処罰を求めない告訴はあり得ず,告訴がある以上は被害者が処罰を希望していると理解されます。

②捜査義務の有無

捜査機関が告訴を受理した場合,捜査を開始しなければなりません。警察等に捜査を尽くす義務が発生するとされている点で,告訴により捜査義務が生じると言われます。

一方,被害届にはそのような定めがなく,被害届を受理した後に捜査を行うかどうかは捜査機関の判断となります。少なくとも法的には,被害届の受理後に捜査を開始しなかったとしても問題ないということになります。

③処分結果の通知義務の有無

告訴された事件について,検察官が起訴又は不起訴の処分をした場合,検察官から告訴人にその処分結果が通知されます。検察官がこの通知をしなければならないという点で,告訴には処分結果の通知義務があると言われます。
また,告訴人がその理由の通知を求めた場合には,理由を告げる義務も発生します

一方,被害届については,処分結果の通知に関する定めはありません。現実的には何らかの形で通知する方が通常ではありますが,通知がなかった場合でも法的な問題はないことになります。

④親告罪における処分

親告罪とは,起訴をするために告訴を要する事件をいいます。
代表例は器物損壊罪や名誉棄損罪ですが,被害者が起訴を望まない限り起訴する必要のない事件や,被害者の意向に反して起訴した場合に被害者のプライバシーなどを侵害する可能性がある事件では,告訴がなければ起訴ができないとのルールが定められています。

告訴がなければ親告罪の起訴はできませんが,被害届がなくても親告罪の起訴は可能です。

⑤期間制限

告訴については,期間制限の生じることがあります。
具体的には,親告罪(告訴がなければ起訴できない事件)の場合,原則として「犯人を知った日から六箇月」以内に告訴を行う必要があります
なお,非親告罪については,告訴期間の制限はありません。

一方,被害届には提出期限の定めはありません。被害届というもの自体が法律に定められた書面ではないため,その提出期限も特に決まっていない,ということになります。

ポイント 被害届と告訴の違い
内容:告訴には犯人の訴追を求める意思表示が含まれる
捜査義務:告訴にのみ捜査義務がある
通知義務:告訴にのみ起訴不起訴の通知義務がある
親告罪:起訴するためには告訴が必要。被害届は不要
期間制限:親告罪の告訴に期限がある。被害届にはない

告訴と告発の違い

告発とは,以下のように定義されています。

告発とは
告訴権者や犯人でない第三者が,捜査機関に対して犯罪の事実を申告し,犯人の訴追を求める意思表示

企業による犯罪について,その従業員が公益保護のために行う場合などが代表例です。

告訴と告発には,以下のような共通点と相違点があります。

【共通点】

犯罪事実の申告と犯人の訴追を求める意思表示であること
②捜査機関に捜査義務が発生すること
③起訴不起訴処分の通知義務が発生すること

【相違点】

①行う主体
告訴:被害者や法定代理人,遺族
告発:被害者及び犯人を除く第三者

②親告罪の取り扱い
告訴:なければ起訴不可
告発:なくても起訴可

告訴を選択すべき場合

被害者が捜査機関に犯罪事実を申告する場合,被害届を提出するか告訴を行うか,という選択肢が生じますが,告訴を選択すべき場合としては以下のケースが挙げられます。

①捜査機関に放置されている場合

被害届を提出しても捜査義務は発生しないため,捜査機関に十分な捜査がなされないまま,放置されたような状態が継続する可能性もあります。捜査機関側にも多忙などの事情があり,事件の優先順位を設ける必要がありますが,内部的に優先順位が低くされた結果,被害者目線では事件が放置されているように映ることが多数見られます。

このような場合には,捜査の優先順位を改めてもらい,多忙な捜査機関に放置されないようにするため,捜査義務のある告訴を選択することが有力な選択肢になるでしょう。

②処罰を求める意思をより強く表明したい場合

事件の最終的な処分には,被害者の処罰感情(加害者の処罰を希望するかどうかの気持ち)が強く反映される傾向にあります。被害者が加害者を処罰しないよう希望すれば,加害者は処罰されない可能性が非常に高くなり,逆に処罰を希望する場合には加害者が処罰される可能性が高くなります。

そのため,被害者の立場としては,処罰感情をより明確にするため,加害者の処罰を求める意思を強く表明することが有力な手段となり得ます
告訴は,被害届と異なり犯人の訴追を求める意思表示を内容とするものであり,一般的に被害届よりも強い処罰感情の表明と理解されるものです。より強く処罰感情を示したい場合には,告訴を選択することが有益でしょうお。

③親告罪の場合

親告罪では,告訴をしなければ加害者が起訴される可能性がありません。そのため,被害届では不十分であり,告訴を選択する必要があります。
もっとも,親告罪であれば,捜査機関から告訴に関する案内がなされるのが通常です。捜査機関の案内に沿って対応すれば,問題の生じることは考えにくいところです。

④弁護士に依頼する場合

告訴を選択する場合の問題としては,その手続の煩雑さ,面倒さが挙げられます。被害届と異なり,より積極的に動く必要のある手続のため,比較的負担の大きな手続となることから,これを避けるために被害届を選択する場合があり得るでしょう。
また,警察の立場では,いずれの方法でも捜査を行うつもりである場合,被害届を選択してくれた方が法的な義務や負担がなく動きやすいため,警察は被害者に対して被害届を選択するよう促すことが多いと思われます。

もっとも,弁護士に対応を依頼する場合には,負担のある手続や警察とのやり取りを弁護士に任せられるため,心配なく告訴を選択することができます。捜査機関の対応を求めるという意味では,告訴が被害届に劣る要素はないので,負担なく告訴が選択できるのであればその方が適切でしょう。

ポイント 告訴を選択するメリット
捜査の放置を防げる
処罰感情をより明確に表明できる
親告罪を起訴してもらえる
弁護士に依頼すれば負担がなくなる

告訴を受理してもらえない場合

告訴は,被害届と比べて受理のハードルが高い傾向にあり,特に弁護士に依頼せず自分で行う場合には,受理を拒まれる場合が少なくありません。
告訴の受理が拒まれるケースとしては,以下のものが考えられます。

①犯罪が成立しない場合

明らかに犯罪が成立しない内容であると,告訴が受理されないことが見込まれます

もっとも,内容が軽微である,証拠がないなど,「処罰に至らない可能性ある」というのみでは,告訴を不受理とするのは問題があるでしょう。処罰されるかどうかは,告訴を受理する段階で判断する事柄ではなく,捜査を尽くした結果,検察庁や裁判所で判断されるべきものであるためです。

②金銭問題(民事事件)の交渉道具とする場合

形式は犯罪捜査を求めているように見えても,実際は当事者の金銭問題の交渉道具にするための告訴である場合には,告訴が受理されないことがあり得ます
警察は個人間の紛争には介入しないという,「民事不介入」の原則がその根拠になるところです。

もっとも,金銭問題の交渉道具としての告訴かどうかは,第三者から容易に判断できるものではないため,このような理由での告訴の不受理は不適切である場合も少なくないでしょう。
例えば,金額以外の示談条件は合意したが加害者が金額面で歩み寄ってくれない,という経緯での告訴など,交渉道具であることが明らかな場合には,告訴を受理しない対応も不合理とは言い難いところです。もっとも,そのような事情がないにもかかわらず「個人の争いだから民事不介入」とするのは不当である可能性が高いでしょう。

なお,被害者が加害者に金銭を請求したいと考えていたとしても,それによって告訴が受理されなくなるわけではありません。捜査や処罰を求める意思と,金銭賠償を求める意思は十分に両立し得るためです。

③当事者間で示談見込みの場合

犯罪事実の存在する可能性のあるものの,当事者間で示談が見込まれる状況にある場合,加害者の訴追を求める意思があるか不明確であるとの理由で告訴の受理を控えられることがあり得ます。

この場合,実際に示談が見込まれる状況なのか,示談でなく捜査や処罰を求めたいのか,という点を事前に明確にすることが望ましいでしょう。また,示談という言葉は一人歩きしやすいため,あまり安易に「示談予定」「示談中」などという言葉を捜査機関に告げない方が望ましいでしょう。

④犯罪事実の特定が困難な場合

犯人や犯罪の内容が特定できず,犯罪事実の特定に至らない場合です。犯罪であるかどうかわからない内容については,告訴の受理が困難であると判断されることがあり得ます。

このような問題は,事件が法的に整理できていないことに原因のある場合が多く,被害者本人が行う場合に特有のものです。つまり,被害者は事件内容をありったけ伝えたものの,捜査機関との間で話が整理できず,どの部分がどんな犯罪に当たるのか分からない,という場合に生じやすいところです。

事件の内容や経緯が複雑で,簡潔な説明が困難な場合には,事件を法的に整理して伝えることが適切です。具体的な対応は弁護士に依頼するのが円滑でしょう。

ポイント 告訴不受理の主なケース
犯罪に当たらない
金銭交渉の道具に過ぎない
既に示談が見込まれている
犯罪に当たる事実が特定できない

告訴を取り下げられるか

一度行った告訴は,告訴の取消という手続で取り下げることが可能です。

告訴を取り消した場合,告訴がなかったのと同じ状況になるため,親告罪では起訴される可能性がなくなり,非親告罪でも犯人の処罰を求める意思がなかったという扱いになります

この点,告訴の取消について注意すべき点としては,以下の事項が挙げられます。

①取消の時期

告訴の取消は公訴提起(起訴)前に限られます。告訴の取消は,処罰を求める意思が後から消滅した,ということをその後の手続に反映するための処理ですが,起訴されてしまうと,告訴の取消を反映して不起訴にすることができなくなるためです。

②取消の回数

刑事訴訟法上,告訴の取消がされた場合,同一の事件でさらに告訴することができません。そのため,告訴の取消は,再度の告訴ができないことを前提に判断するのが適切です。

なお,再度の告訴ができないという刑事訴訟法の定めは,親告罪に対するものと理解されています。そのため,非親告罪であれば再度の告訴も不可能ではないと考えられます。もっとも,現実的には困難であることがほとんどなので,やはり再度の告訴はできないとの前提で検討すべきでしょう。

告訴は弁護士に依頼すべきか

告訴は,捜査機関に法律上の義務を負わせる手続でもあるため,被害者の方自身が容易に行えるものではありません。警察から求められて行う場合は別ですが,自ら積極的に告訴を試みる場合,必要な説明やできる限りの証拠の提出は,被害者側の負担と判断で行う必要があり,適切な対応には専門的な判断が必要になるでしょう。

また,告訴は行うことがゴールでなく,行ってからがむしろスタートであるとも言えます。告訴はあくまで犯罪被害からの救済を受けるための最初の動きであって,最終的に希望の結果に至るためには,その後も継続的な対応を要します加害者の刑事処罰や加害者からの金銭賠償など,個別の対応も含めて弁護士への依頼が適切でしょう

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

告訴は,被害届と並んで犯罪被害者が警察の捜査を求めるときに取り得る手段ですが,捜査機関に法的な義務が生じる手続のため,警察側も安易には受け付けられないという事情があります。
そのため,告訴を行う場合には,警察をしっかり味方に付けられるよう,適切な方法・内容で行うべきであり,必要に応じて弁護士と一緒に行うことをお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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