交通事故の慰謝料とは?具体的な計算方法は?弁護士はなぜ増額させられる?弁護士に慰謝料交渉を依頼すべき場合も解説

●交通事故の慰謝料とは何のお金か?

●交通事故の慰謝料にはどんなものがあるか?

●慰謝料の相場を知りたい

●慰謝料の計算方法を知りたい

●弁護士に依頼すると慰謝料が増額するのはなぜか?

●交通事故の慰謝料交渉は弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の慰謝料に関してお困りの方に向けて,交通事故の慰謝料相場や計算方法弁護士に依頼すべきかどうかなどを解説します。

慰謝料とは

慰謝料は,精神的苦痛を金銭換算したものを言います。慰謝料自体は,交通事故に限ったものではなく,加害者が被害者に精神的苦痛を与えた出来事の全てに発生し得るものです。例えば,離婚の際に発生する慰謝料は,離婚の原因を作った人が配偶者に与えた精神的苦痛を金銭換算したもの,ということができます。
交通事故の場合は,事故による受傷の苦痛,入通院の負担を強いられる苦痛などが,慰謝料の対象となるところです。

交通事故における慰謝料は,精神的苦痛を金銭換算する方法として客観的な基準を設けています。具体的には,①入通院期間や実通院日数②後遺障害等級に応じた計算となります。

ポイント
慰謝料=精神的苦痛に対する賠償

交通事故における慰謝料の種類

交通事故における慰謝料には,以下の2種類があります。

①傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故によって受傷したことや入通院を強いられたことへの精神的苦痛を金銭換算したものを,「傷害慰謝料(又は入通院慰謝料)」といいます。
傷害慰謝料は,入通院を要した期間や実通院日数を基準に計算します。入院や通院の期間が長いほど,慰謝料額は大きくなりますが,実通院日数があまりに少ない場合には,それを踏まえて慰謝料額を小さくすることがあります。

②後遺障害慰謝料
交通事故の受傷について治療を尽くしたものの,将来に渡って後遺障害が残存してしまった場合,その精神的苦痛を金銭換算したものが「後遺障害慰謝料」です。
後遺障害慰謝料は,1級から14級までの後遺障害等級を基準に計算します。同じ等級の中でも,腕,足,頭など,複数の部位に関する複数の後遺障害が定められていますが,等級が同じであればその内容が異なっていても後遺障害慰謝料は同額です。

慰謝料の計算方法

①計算方法の種類

慰謝料の計算方法には,「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」の3通りがあります。これらの基本的な違いは,以下の通りです。

自賠責基準自賠責保険から支払われる慰謝料額を定める基準
任意保険基準任意保険会社内部における慰謝料の計算基準
裁判基準裁判所が慰謝料額を計算するときの基準

一般的には,自賠責基準が最も小さく,裁判基準が最も大きい傾向にあります。
もっとも,自賠責保険は被害者の過失が7割未満であれば金額に反映させないというルールがあるため,過失の程度によっては自賠責基準が他の基準より金額が大きくなる場合もあり得ます。

ポイント
交通事故の慰謝料は傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類
慰謝料の計算方法は自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の3種類

②傷害慰謝料

自賠責基準の計算方法

①対象日数「総治療期間」と「実通院日数×2」のいずれか小さい日数
②日額1日6,100円
③計算方法①対象日数×②日額=自賠責基準の金額

(例1)
総治療期間(通院期間)120日 実通院日数30日の場合

①対象日数:「総治療期間」120日>「実通院日数×2」60日のため小さい方の60日
②日額:1日6,100円
③計算方法:60×6,100=366,000円

(例2)
総治療期間(通院期間)60日 実通院日数40日の場合

①対象日数:「総治療期間」60日<「実通院日数×2」80日のため小さい方の60日
②日額:1日6,100円
③計算方法:60×6,100=366,000円

(例3)
総治療期間(通院期間)180日 実通院日数100日の場合


①対象日数:「総治療期間」180日<「実通院日数×2」200日のため小さい方の180日
②日額:1日6,100円
③計算方法:180×6,100=1,098,000円

もっとも,現実に自賠責保険からこの金額が支払われることは考えにくいでしょう。それは,自賠責保険には上限額があるためです。

自賠責保険金は,治療費や通院交通費など,傷害部分の合計金額に120万円の上限があります。単純計算で120万円を超える場合,120万円までしか支払われないことになります。
実通院日数が100日というケースだと,治療費や交通費の合計額が10万円程度ということは考えにくいため,上限の120万円を超過する可能性が高く見込まれます。仮に慰謝料以外の合計が50万円発生していれば,慰謝料は最大でも70万円の支払になります。

上記はあくまで単純計算の結果であり,実際に支払われる金額は他の損害額によるということに注意しましょう。

任意保険基準の計算方法

任意保険基準は,入通院期間を基準に,保険会社の内部で採用されている計算方法を用いて計算されます。
任意保険基準の代表的な金額は,以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

任意保険基準の慰謝料(一例)

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合

通院期間120日=4月のため,478,000円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合

通院期間60日=2月のため,252,000円

ただし,自賠責基準366,000円がこれより大きいため,自賠責保険から満額の慰謝料が支払われる限り,実際の支払額は366,000円となります

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合


通院期間180日=6月のため,642,000円

自賠責保険金が642,000円を上回る場合,実際の支払額は自賠責保険金額となります。慰謝料以外の金額の合計が(120万円-642,000円=)558,000円より小さい場合,自賠責慰謝料が642,000円より大きくなるため,実際の支払額は自賠責保険金額となります。

裁判基準の計算方法

裁判基準では,任意保険基準と同様,入通院期間を基準に計算しますが,その金額は任意保険基準より大きくなるのが通常です。
また,裁判基準の場合,他覚症状のないむち打ち(=軽傷)の場合(別表Ⅱ)とそうでない(=重傷)場合(別表Ⅰ)の二種類があり,重傷に用いられる別表Ⅰの方が金額が大きく定められています。

具体的な金額は以下の通りです。なお,1月=30日とみなして計算します。

裁判基準の慰謝料 別表Ⅰ(重傷)

裁判基準の慰謝料 別表Ⅱ(軽傷)

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合

通院期間120日=4月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)90万円
裁判基準(別表Ⅱ)67万円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合

通院期間60日=2月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)52万円
裁判基準(別表Ⅱ)36万円

ただし,別表Ⅱよりも自賠責基準366,000円が大きいため,自賠責保険から満額の慰謝料が支払われる限り,別表Ⅱの場合の実際の支払額は366,000円となります

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合


通院期間180日=6月のため,以下の通り
裁判基準(別表Ⅰ)116万円
裁判基準(別表Ⅱ)89万円

(注)
1月に満たない期間がある場合,30日=1月を前提に日割り計算をします。
例えば,むち打ちで通院期間36日である場合,1月+(1月と2月の間が)6日となり,慰謝料金額は以下の通り計算できます。
19万円+(36万円-19万円)÷30×6=224,000円

まとめ

(例1)
総治療期間120日 実通院日数30日の場合
自賠責基準    366,000円
任意保険基準   478,000円
裁判基準(別表Ⅰ)90万円
裁判基準(別表Ⅱ)67万円

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合
自賠責基準    366,000円
任意保険基準   252,000円(実際の支払額は366,000円)
裁判基準(別表Ⅰ)52万円
裁判基準(別表Ⅱ)36万円(実際の支払額は366,000円)

(例3)
総治療期間180日 実通院日数100日の場合
自賠責基準    1,098,000円※
任意保険基準   642,000円
裁判基準(別表Ⅰ)116万円
裁判基準(別表Ⅱ)89万円

※総額の上限120万円を超えるのが通常であるため,実際の支払額はより小さくなる

ポイント
・自賠責は「総治療期間」又は「実通院日数×2」×6,100円
・自賠責保険の上限額120万円に注意
・任意保険基準は,入通院期間を基準に保険会社内部の計算方法にて計算する。自賠責保険金額を下回る場合は自賠責保険金額を採用する。
・裁判基準は,同じく入通院期間を基準に計算するが,最も金額の大きな計算方法であるのが通常。

③後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は,後遺障害等級によって決まります。

後遺障害等級は,自賠責保険の手続によって認定されますが,ある等級が認定された場合,まず自賠責保険から自動的に定額の慰謝料が支払われます。自賠責保険の金額では足りない部分がある場合,差額は加害者(又は保険会社)からの支払いとなります。

後遺障害慰謝料の金額も,裁判基準が最も大きいのが通常です。等級ごとの比較は以下の通りです。

後遺障害等級【自賠責基準】【裁判基準】
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

弁護士依頼で慰謝料が増額する理由

保険会社は,弁護士がいない場合,被害者の方には自賠責基準を念頭に置いた賠償額の提示を行うのが一般的です。自賠責基準の金額は自賠責保険から支払われるため,その金額のみで解決できれば自社の負担がなくなるからです。被害者の方が自賠責基準で合意してくれることに期待して,低い水準の提示を行っているというわけですね。

しかし,弁護士が入ると保険会社の対応は大きく変化します。弁護士が入った段階で自賠責基準での解決は困難であることが明らかになるため,保険会社は裁判基準を念頭においた金額計算に方針を変更するのです。保険会社が弁護士の有無で慰謝料の計算基準を変える運用をしていることから,弁護士が入って慰謝料を請求すると増額する,という寸法です。

一般的に,弁護士が保険会社と交渉を行う場合に目標とする慰謝料の水準は,裁判で認められ得る最大額(=裁判基準)の80~90%ほどとされることが多く見られます。裁判基準満額の金額は,あくまで裁判により裁判所が認めることのできる最大額であるため,裁判での立証を経ない交渉段階では満額で解決する可能性は低いところです。

ポイント 保険会社の対応
弁護士依頼前:自賠責基準を念頭に計算
弁護士依頼後;裁判基準を念頭に計算

自賠責基準と裁判基準の差額が,弁護士依頼により慰謝料が増額する理由

慰謝料交渉を弁護士に依頼すべき場合

慰謝料の交渉を弁護士に依頼すべきであるのは,弁護士への依頼によって最終的な獲得金額が大きくなる場合です。

弁護士に依頼すると,以下のようなプラスとマイナスがあります。

【プラス】
弁護士が交渉をしたことによる慰謝料の増額分

【マイナス】
弁護士に支払う費用(いわゆる弁護士費用)

そのため,プラスの方がマイナスより大きければ,弁護士に依頼すべき場合と言えるでしょう。

具体的には以下のようなケースが挙げられます。

①長期の治療を要した場合

裁判基準の慰謝料は,治療期間が長いほど大きな金額になります。そして,自賠責基準と裁判基準の差額も大きくなりやすい傾向にあります。
そのため,長期の治療を要した場合は,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいと言えるでしょう。

②受傷の程度が大きい場合

裁判基準の慰謝料には,骨折など他覚所見がある場合と,むち打ちなど他覚所見のない(=自覚症状のみである)場合の二種類があります。そして,他覚所見がある場合の方が,重傷と理解されるため,慰謝料も大きい金額になります。
そのため,他覚所見のあるような受傷の大きい事故である場合,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいでしょう。

なお,治療期間が短く他覚所見のない受傷の場合,自賠責基準より裁判基準の方が大きくなるか不明確なこともあります。上記の例でも,以下のようなケースがありました。

(例2)
総治療期間60日 実通院日数40日の場合
自賠責基準    366,000円
任意保険基準   252,000円(実際の支払額は366,000円)
裁判基準(別表Ⅰ)52万円
裁判基準(別表Ⅱ)36万円(実際の支払額は366,000円)

裁判基準(別表Ⅱ)つまり他覚所見のない受傷の場合は,自賠責基準よりも慰謝料が若干小さくなっています。具体的な内容は,弁護士へのご相談をお勧めいたします。

③過失がない場合

自賠責基準の慰謝料は,7割以上の過失がない限り減額されない運用となっています。一方,裁判基準の慰謝料は1割の過失でも過失相殺を行う運用です。そのため,過失があるケースだと,過失分の減少がない自賠責基準と過失で減少がある裁判基準の差額は小さくなります。
逆に,過失がない事故の場合,自賠責基準と裁判基準の差額が小さくなる要因がないため,弁護士依頼によるプラスの部分が大きくなり,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいと言えるでしょう。

④弁護士費用特約が利用可能である場合

弁護士費用特約は,交通事故被害者が加害者への損害賠償を請求する際,弁護士委任に必要な弁護士費用を賄ってくれる保険のサービスです。弁護士費用特約が利用できる場合,弁護士費用の負担によるマイナスが小さくなるため,弁護士に依頼すべき場合に当たりやすいでしょう。

交通事故の慰謝料に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故の慰謝料は,弁護士への依頼で最も大きく変わりやすいものと言えます。
逆に,弁護士に交渉を依頼しなかった場合,本来受領できるはずの慰謝料が受け取れず,一度合意してしまえば適正な慰謝料を受け取る機会を失ってしまいます。
交通事故の慰謝料については,金額の妥当性を弁護士にご相談されることをお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
ご相談やお困りごとのある方は,お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

法律相談のご希望はお気軽にお問い合わせください
※お電話はタップで発信できます。メールは問い合わせフォームにアクセスできます。