交通事故が起きたら何をする必要がある?何を確認すべき?弁護士に依頼するべき場合は?損をしないための全情報

●交通事故の被害に遭ったが,まずどうすればいいか?

●病院にはいつ行くのがいいか?

●相手とはどんな連絡を取るべきか?

●警察への届け出はどうするべきか?

●交通事故の示談はいつするのか?

●弁護士に相談すべきタイミングはいつか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,交通事故の被害に遭った直後の対応でお困りの方に向けて,交通事故の被害者がするべき対応弁護士への相談時期などを解説します。

警察への連絡

まず事故現場で行うことは,警察(及び救急)への連絡です。事故によっては警察への連絡が自分の義務であるケースも考えられます。
もっとも,受傷の内容や程度によっては,自分で行うことが難しい場合もあり得ます。そのときには,事故の相手や周囲の目撃者など,連絡が可能な人に対応してもらうのが適切です。

連絡の際は,110番通報の上,警察に事故の旨を伝えるとともに,概ね以下の情報を簡潔に伝えましょう。

①事故の場所事故が発生した正確な場所(住所や目印など)
②事故の状況事故の規模や被害の程度(車両の損傷、負傷者の有無など)
③関係者の情報事故に関与した車両や運転者、目撃者の情報
④自身の情報通報者の氏名と連絡先

相手の情報を確認する

当事者双方が会話の可能な状態であれば,相手の氏名や連絡先等の情報を確認するようにしましょう。被害事故の場合,相手の自動車保険会社に対応してもらう必要がありますが,その前提として相手本人に保険会社への連絡等を行ってもらわなければならないため,相手と連絡が取れる状態にあることは非常に重要です。

相手の自動車保険の有無を確認する

相手がいわゆる任意保険に入っているかどうかは,今後の金銭的な補償をどのように受けることができるか,という意味で極めて重要な確認事項になります。

相手が任意保険に入っていれば,基本的にはその保険会社の対応を受けることで足りる一方,任意保険がなければ,相手本人に支払能力がない限り相手からの金銭賠償が期待できません。そのため,もし相手が任意保険に入っていない場合は,自身の保険を含め,より慎重な確認が必要となりやすいところです。

また,相手が任意保険に入っている場合は,その場で任意保険会社への事故報告も行ってもらうのがより円滑でしょう

医療機関への通院時期

医療機関への通院時期は,交通事故の後早ければ早いほど有益であると言えるでしょう。その主な理由としては,以下の各点が挙げられます。

①慰謝料額への影響
交通事故の慰謝料(精神的苦痛に対する賠償)は,通院期間や実通院日数を基準に計算しますが,慰謝料計算における通院期間の始期は,最初の通院日とされるのが一般的です。そのため,最初の通院日が早ければ早いほど,それだけ慰謝料計算に用いられる通院期間が長くなります。
また,事故から長期間経過した後に始めて通院した場合,受傷の程度が限定的であると評価され,通院期間を短く打ち切られるケースがあります。そうなると,通院期間を基準に計算する慰謝料額も必然的に小さくなるため,慰謝料額への悪影響が生じます。

②事故と受傷との因果関係
事故から日数が経過した後に始めて通院すると,診断された受傷内容と交通事故との因果関係が問題視されるケースがあります。事故直後だと,事故以外に受傷の原因は考えにくいですが,事故から期間が経つと,事故以外に様々な要因の入り込む余地が生まれるためです。事故とは別の機会に怪我をした可能性が日を追うごとに高くなっていくわけですね。

事故と受傷との間に因果関係がない,との結論になると,事故相手(及び保険会社)からの賠償額はゼロになります。事故によって受傷はなかったとの理解になるためです。これは極めて大きな不利益であり,このような事態は可能な限り防ぐのが賢明でしょう。

なお,一般的には,事故から2週間以上経過して初回の通院がなされた場合,その診断内容は事故との因果関係がないと理解されやすい傾向にあります。その期間内に通院すべきなのはもちろんですが,その期間内であれば安心というわけではないため,やはりできるだけ速やかに通院すべきです。

③怪我や苦痛の軽減
通院の本来の目的ではありますが,事故直後が最も苦痛の大きい時期であるため,苦痛を和らげるためにも早期の通院が重要になります。
万一,通院が遅れたことによって症状が重くなったという場合には,その重くなった部分は自己負担となる可能性もあります。早期に通院して苦痛の軽減を図ることにデメリットはないでしょう。

ポイント
通院時期は事故後早ければ早いほど望ましい
→慰謝料額が大きくなる
→因果関係の争いを防げる
→苦痛が軽減する

警察への届出を人身事故にすべき場合

警察への事故の届出には,「物件事故」と「人身事故」の二つがあります。
この点,交通事故で受傷したケースの全てについて人身事故の届けが必要というわけではなく,怪我があった場合にも物件事故での届出が可能です。現実に,怪我がありながら物件事故の届出とし,怪我の損害も含めて解決していることは非常に多く見られます。

では,どのような場合に人身事故とすべきか,という点に疑問が生じますが,基本的には以下のような考え方が有力でしょう。

①加害者の刑事処罰を希望する場合

人身事故の届出を行う基本的な意味は,加害者に対する刑事手続を希望する,というものです。加害者の刑事処罰を希望する場合には,人身事故とするのが適切です。

刑罰との関係では,純粋な物損事故が起きたとしても犯罪ではなく,交通事故の結果被害者が受傷した場合に初めて「過失運転致傷」という犯罪に該当することとなります。そのため,人身事故の届出によって,「本件は過失運転致傷が成立する事故です」という申し出がなされた場合に限り,事故加害者に対する刑事手続が進行することになります。

なお,交通事故では,双方に一定程度の過失がある,というケースが少なくありません。その場合,人身事故の届出をして刑事手続を希望すると,刑事処罰を科すかの検討は双方について生じることになり得ます。
現実に処罰を受けるという意味ではありませんが,自分の過失がゼロでない場合は,自分の過失も刑事手続の対象になり得ることを踏まえておくのがよいかもしれません。

②過失割合に争いがある場合

過失割合に争いがあるケースでは,事故の発生状況を捜査してもらうため,人身事故の届出が適切になりやすいです。

人身事故の届出を行うと,事故に関する警察の捜査が行われますが,その代表的なものが「実況見分」です。実況見分は,事故現場の道路状況や事故の発生状況を,立会人の説明を踏まえて書面化したものです。
過失割合に争いがある場合には,自分の主張する事故状況を書面に残すため,人身事故の届出を行った上で実況見分を行ってもらうのが有力でしょう。もちろん,実況見分を行ったから直ちに主張した通りの過失割合が実現する,というわけではありませんが,紛争の蒸し返しは一定程度防ぐことができるでしょう。

③慰謝料増額の効果があるか

よくある疑問に,「将来の慰謝料増額のために人身事故の届出を行うべきか」というものがありますが,結論的には慰謝料額と事故の届出の間に直接の関係はありません。少なくとも,事故の届出が人身事故だから増額する,物件事故だから減額する,という取り扱いは存在しないと理解してよいでしょう。

現実的な問題としては,怪我をしたものの物件事故で届け出る場合,怪我がそれほど大きくないことが通常であるため,結果的に通院も長期に渡らず,慰謝料等の損害額も大きくはならないことは多い傾向にあるでしょう。もっとも,金額が大きくならないのは物件事故の届出を行ったからではなく,そもそもの事故の規模や受傷の程度に原因があるため,同じ事故で人身事故の届出をすれば違った,というわけではありません。

ポイント 人身事故の意味
加害者の刑事処罰を求める手続
実況見分を行った記録が残る
慰謝料額と直接の関係はない

自身の加入保険を確認する

交通事故が発生した場合,自分の加入保険の内容も適切に確認しておくことが有益です。自分に過失がある場合はもちろん,ない場合であっても,利用できるサービスを逃さないよう必要な確認を行うことをお勧めします。主な確認項目としては,以下のものが挙げられます。

①対人対物賠償保険(過失がある場合)

相手の人的・物的損害に対する支払を行うための保険です。
自身に過失がある場合には,その過失分の支払を行う可能性があるため,保険を利用するのとしないのとどちらが有益かも含め,ご加入保険との十分なご相談が適切です。

②人身傷害保険・車両保険

自分の人身損害をカバーしてくれるのが人身傷害保険,自分の物的損害をカバーしてくれるのが車両保険です。
被害事故でも,相手の任意保険がないなど,相手からの賠償があまり期待できない場合には,これらの保険の利用が有益なケースが考えられます。
また,車両保険の契約内容によっては,被害事故でも利用する方が受け取れる金額が大きくなる場合もあるため,具体的なところは事故に応じてご加入保険にご確認されるのが適切でしょう。

③無保険車傷害保険

相手に任意保険がない事故で,死亡又は後遺障害を伴う重大な怪我を負ったとき,ご加入保険が相手の代わりになって支払いを行ってくれるという保険の特約です。

相手からの賠償が期待できない場合に自分の人身損害を補償してくれる保険には人身傷害保険がありますが,人身傷害保険との違いは補償される金額や計算方法にあります
人身傷害保険は,その支払金額が全て約款で定められているため,保険会社が事前で定めた通りの金額以外に支払われる余地がありません。一方,無保険車傷害保険は,基本的に加害者が支払うべき金額と同等の補償がなされることになります。通常,人身傷害保険の金額は,加害者が賠償すべき金額(=無保険車傷害保険の金額)より小さいため,無保険車傷害保険が利用できる場合は,そちらの方がより多くの補償が受けられることになります。

④搭乗者傷害保険

事故車両の運転者や同乗者に対して,主に一時金を支払う内容の保険です。
金額は保険契約時に設定することになり,契約車両に搭乗していれば比較的緩やかな条件で支払われます。
もっとも,搭乗者傷害保険だけで損害をカバーするという性質のものではなく,お見舞金に近い位置付けの補償と考えるのが適切でしょう。

⑤弁護士費用特約

交通事故被害者が加害者側に金銭を請求する際,弁護士に依頼する手段が有力ですが,その弁護士費用を支払うという保険の特約です。支払われる弁護士費用の水準は,あらかじめ保険の約款で定められています。
弁護士への依頼が極めて容易になりやすいため,事故被害の場合には十分な確認をお勧めします。

ポイント 自分の保険の役割
相手への支払:対人対物賠償
自分への補償:人身傷害保険・車両保険・無保険車傷害保険
一時金・お見舞金:搭乗者傷害保険
金銭請求時の弁護士費用:弁護士費用特約

事故態様の証拠を確保すべき場合と内容

交通事故の態様,つまりどんな事故だったのか,という点は,過失割合に影響を与える要素になります。そのため,過失割合に争いがある場合には,事故態様を明らかにするためその証拠を確保するのが望ましいでしょう。

事故態様は,主に以下のような事情を基準に判断します。

【事故態様を区別する主な要素】

①乗り物の別歩行者,自転車,四輪車,単車など
②事故現場の状況直進道路上・十字路・丁字路,駐車場内,横断歩道上など
③双方の進行方向直進,右左折など
④道路の優先関係一方に一時停止規制がある,一方が優先道路である,道路幅が大きく異なる等

そのため,これらの要素が分かるように証拠化するのが適切でしょう。

そして,事故態様の証拠として最も有力な証拠になりやすいのは,ドライブレコーダーなどの客観的な映像・画像です。自動車乗車時には,極力ドライブレコーダーを取り付けるのが有益でしょう。
ドライブレコーダー以外には,付近の防犯映像や目撃者のお話などが考えられます。ただ,これらは必ずしも存在するわけではなく,当事者が頼りにできる証拠とはなりづらいところがあります。

事故直後に示談を持ち掛けられた場合の対応

交通事故の被害に遭った際,事故直後に加害者から示談を持ちかけられることがあり得ます。一定額の金銭を支払うことで関係を終了させる,という内容であることが一般的です。
これに応じることで,早期に一定の金銭が獲得でき,面倒なやり取りも必要なく関係が終了するため,有益なお話とも思えます。

しかしながら,弁護士の立場からは,このような解決方法はお勧めされません。主な理由は以下の通りです。

①金額が適正か判断できない
交通事故の損害額は,必要な通院が終了しなければ計算できません。そのため,事故直後に取り決めた金額が,実際の損害をカバーできるものか判断することは困難です。

②法的に解決できたか判断できない
当事者間での合意は,法的に漏れのない解決ができているか非常に怪しい傾向にあります。解決内容に不利益な内容の漏れがあれば,その場で解決したつもりであっても,後から紛争を蒸し返される可能性が否定できません。

③事故直後に一時金で終わらせようとする行動自体が適切でない
→交通事故の場合,被害者側はその後も身体的苦痛などを被り続けるため,その場で全てが解決できる性質のものではありません。それにもかかわらず,直後に一時金の取り決めのみで解決を図るというのは,加害者側の一方的な希望でしかなく,被害者側の事情を考慮しない点でそもそも不適切であると言えるでしょう。

ポイント
示談は治療終了後に行うのが適切

弁護士に依頼すべき場合

弁護士に依頼する利益が特に大きい場合としては,以下のようなケースが挙げられます。

①弁護士費用特約の利用ができる場合

弁護士への依頼は,弁護士費用との兼ね合いを考慮する必要がありますが,弁護士費用特約が利用できる場合であれば,基本的に弁護士費用の負担なく弁護士に依頼できるため,弁護士の活動による増額をそのまま自身の利益とすることが可能です。
弁護士費用特約がまさにその役割を発揮するタイミングでもあるので,極力速やかに弁護士への依頼を検討するようにしましょう。

なお,弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合は,その弁護士が弁護士費用特約以上の金額を請求しないか,という点は十分な確認をお勧めします。弁護士費用の設定は弁護士次第ですので,必ずしも弁護士費用特約が支払えば自己負担がゼロとは限りません。

②受傷の程度が大きい場合

交通事故における弁護士への依頼は,費用倒れの可能性を考慮して行う必要があります。発生する費用が得られる利益を下回ることを費用倒れと言いますが,弁護士費用の方が弁護士の活動で得られたプラスより大きくなってしまうと,弁護士に依頼する実益はなくなってしまいます。

この点,受傷の程度が大きい場合,最終的な損害賠償額も大きくなりやすいため,費用倒れの可能性が非常に低くなります。特に,後遺障害等級が認定されるほどの規模になれば,費用倒れは懸念されづらくなるでしょう。
また,損害の規模が大きくなるほど,弁護士に依頼した場合の増額幅も大きくなりやすいため,弁護士依頼のメリットがより大きくなる傾向にあります。

③明らかに自分の過失がない場合

追突被害,相手のセンターオーバー,歩行者で横断歩道上の事故であったなど,明らかに自身の過失がない事故の場合も,費用倒れになる可能性が低い傾向にあります。
ただし,弁護士費用特約利用時を除いて,依頼者の利益は「弁護士の活動で増額した金額」-「弁護士費用」の差額になるため,どれだけの増額が見込まれるかにもよる面があります。金額的規模が小さな事故だと,費用倒れの可能性は必ずしも否定できないため,具体的には交通事故に強い弁護士へのご相談をお勧めします。

交通事故に強い弁護士をお探しの方へ

交通事故は突然発生するため,事前に備えや対処をしておくことが非常に困難です。
また,事故の被害に遭った後は,身体的・精神的な苦痛が伴うため,ご自身で十分な対応を行うことも難しいケースが少なくありません。
交通事故の被害に遭った場合には,交通事故に強い弁護士へのご相談が非常に有益でしょう。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,1000件を超える数々の交通事故解決に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内いたします。
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